VIRGIN BMW | BMWモトラッドの自動でギアチェンジが可能な新機構 “ASA=オートメイテッド・シフト・アシスタント” トピックス

BMWモトラッドの自動でギアチェンジが可能な新機構 “ASA=オートメイテッド・シフト・アシスタント”

  • 掲載日/2024年07月16日【トピックス】
  • 取材協力・写真/BMW Motorrad 文/土山 亮
BMWモトラッドの自動でギアチェンジが可能な新機構“ASA=オートメイテッド・シフト・アシスタント” 画像

ライダーの疲労を軽減しつつ
よりライディングに集中できる環境を作り出す

2024年7月5日、BMW MotorradはR 1300 GS Adventureを発表した。これは2023年に発表したR 1250 GSシリーズの後継R 1300 GSをベースに大容量タンクや各種プロテクション装備を多数追加したアドベンチャーモデルだ。

新型GSの発表後、しばらくの時間をおいてAdventureが登場するのはこれまで通りの流れだ。しかし、今回はとある機構の搭載についてファンの間では注目が集まっていた。それが“Automated Shift Assistant(オートメイテッド・シフト・アシスタント)=ASA”である。

今回のR 1300 GS Adventureの発表から遡ること約2ヶ月前、2024年5月2日にBMW Motorradは新たな変速機構を発表していた。それがASAだったのだ。このASAは、クラッチレバーやシフトペダルの操作を必要とせずに、自動でシフトチェンジをおこなうというまったく新しい機構だ。走行モードはECUが適切なギア選択をおこなう「Dモード」とライダーがシフトペダルのみを使用して任意のギアを選択する「Mモード」の2種類だ。

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ミラーホルダーに設けられているのが「Dモード」と「Mモード」の切り替えスイッチだ。

電子式アクチュエーターがASAの要

ASAでは、2つの電子式アクチュエーターを使用してクラッチ操作と6速トランスミッションの変速をおこなう。BMW Motorradの既存変速システムとしてクラッチ操作をせずにシフトペダルだけで変速が可能なシフト・アシスタントProが多くのモデルで採用されているが、ASAはその進化版と言って良いだろう。

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R 1300 GS AdventureのASA搭載モデルでは、クラッチレバーが存在しない。

電子式アクチュエーターはクラッチユニットとトランスミッションにそれぞれひとつずつ接続されている。クラッチについては、アクチュエーターと油圧マスターシリンダーを組み合わせており、アクチュエーターは「クラッチを切る」「クラッチをつなぐ」という動力の伝達と断続を自動でおこなう。

また、トランスミッションのアクチュエーターはシフトペダルとシフトドラムに接続されており、ライダーが任意のギアをシフトペダルで選択した際にセンサーから信号がECUに送信され、ミッションのインプットシャフトの回転数やクラッチの位置決めをおこなうという。

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ASAのシステムレイアウト。見る限り、マスターシリンダーやヒートシンク付きの制御ユニット以外のほとんどのパーツはエンジン内部に収められているようだ。

上のイラストがASAのメカニズムだ。イラストの右下の円形の部品はボクサーエンジンの前方に位置するクラッチ。そしてイラストの左上、油圧マスターシリンダーの右隣に位置するピニオンギア付きの丸い部品がクラッチ用のアクチュエーターだ。その下部にはレリーズシリンダーと思しき部品があり、そこからは長いプッシュロッドが伸びてクラッチへと繋がっている。そしてイラスト中央の同型アクチュエイターがギアシフト・アクチュエーター。よく見るとイラスト中央上部のシフトペダルのリンケージにはセンサーのようなものが取り付けられていることがわかる。このギアシフト・アクチュエーターはギアを介してシフトドラムと繋がっている。

DモードとMモード

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TFTディスプレイの右端に「D1」の文字が見える。これがASAのDモードの表示だ。おそらくこの表示は車速や負荷に応じて「D2」「D3」……と変化するもののはず。

ASAのハイライトのひとつは、ライダーが変速動作を行わずに電子制御によって自動で変速するDモードだ。このDモードでは、車速やエンジン回転数、スロットルポジション、エンジンのライディングモード、バンク角等に応じて最適なギアを選択する。ECUはトランスミッション・コントロール・ユニット=TCUと連携しており、こうした幾多のパラメーターを利用しながら制御を行う。近年では、5軸または6軸のIMUを用いてABSやDTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)など各種電子制御を密接にリンクさせて車体の統合制御をおこなうが、ASAもまたそうした一連のシステムと同様に、常に車体の状態をセンシングしながら最適なギアを選択するアルゴリズムを用いているようだ。

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こちらはMモードで「1M」と表示。Dモードでは「D」の文字を大きく、数字を小さく表示するが、Mモードでは逆に数字の方を大きく表示。パッと見での視認性を重視したのだろう。

Mモードはライダーが任意のギアを選択するモードだ。ASA搭載車ではクラッチレバーは存在しないので、シフトチェンジはシフトペダルのみでおこなう。ただし、ライダーが望むギアへの変速時に、あらかじめ設定されている各ギアの最大回転数と最小回転数の範囲内であれば変速が実行される。もし走行中に選択したギアに設定されているエンジン回転数を下回った場合は、自動でシフトダウンをおこなって意図しないエンストを回避する制御をおこなうというから、低速走行時やオフロード走行時でも安心して使えそうだ。

ASAがもたらすもの

BMW Motorradによれば、ASAはよりリラックスしたライディングをもたらす機構だという。たしかにASAのシステムはシフトチェンジの自動化やクラッチ操作の排除によって、あらゆる走行シーンでライダーの疲労を軽減しつつ、ライディングにより集中できる環境を生み出すテクノロジーだ。

また、ASAでは変速ショックを最小限に抑え、タンデム時にパッセンジャーとライダーのヘルメットがぶつかるような状況を防いでいるという。そしてよりイージーライドが可能なASAの威力はオフロードでも発揮されるはずだ。今回R 1300 GS Adventureのオプション装備のひとつとしてASAが用意されたことはその何よりの証左だろう。

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これまでABSの実用化をはじめ、DTCやASC(オート・スタビリティ・コントロール)、シフト・アシスタントPro、アクティブ・クルーズ・コントロールなど様々な電子制御をいち早く市販車に盛り込んできたBMW Motorrad。それらのテクノロジーはすべて、高度なアルゴリズムによってライダーのライディングをサポートするものだ。人間の動作よりも素早く、確実に—。そして安全にもつながるテクノロジーの数々。ASAもまた、純粋なファンライドだけを追い求めた結果として生み出されたテクノロジーのひとつなのだろう。

その完成度がいかほどのものなのかは、R 1300 GS Adventureが世に出た段階ではっきりするはずだ。

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