【緊急試乗!】可変バルタイを搭載した新型R1250GSをオンロードで試す
- 掲載日/2018年10月20日【トピックス】
- Text / Tsutomu Matsui
Photo / BMW Motorrad
不思議でスムーズな
マッシブ・トルクの魅惑。
BMWモトラッドは2018年9月にR1250GSとR1250RTの二機種を発表した。ともに人気のGSとRT。今回、GSの試乗を含めたメディアローンチはポルトガルのファロ空港から車で30分ほどの距離にある海岸線沿いに建つパインクリフスリゾートをベースに行われた。
今回のモデルチェンジは、2020年に施行される新しい環境規制EURO5に準拠したパワーユニットの搭載と、外装意匠の変更、そして電子制御デバイスの追加装備などが主なメニューだ。ご覧のとおり、2013年にモデルチェンジ以降、高い人気を誇る水冷ユニット搭載のGSだが、さらに一歩前へ、という内容なのである。
R1250GSのラインは、ベイシック、カラーリングなどで特色を出したエクスクルーシブ、そしてスポーティーなHPという3モデルが用意されている。装備面やキャラクターからいけば、ラリーがHPに置き換わった、というイメージだ。
【R1250GS】
【R1250GS Exclusive(エクスクルーシブ)】
【R1250GS HP】
TFTカラーモニター、LEDヘッドライト、ヒルスタートコントロール(以下HSC)の標準装備化はもちろん、新型でライディングモードプロをオプションで選択すると、このHSCがアップグレードされ、HSC Proとなる。これは6軸センサーが上り、下りを問わず、坂で停止したことを感知すると、自動的にブレーキを保持し、停止状態を保ってくれるというもの。日本仕様の装備は未定だが、これまでの流れからすれば、多くのオプションや工場オプションを搭載したフル装備に近い状態となるので、このあたりも標準装備となるのではと思う。
そして一番の注目であるパワーユニットだが、前回報告したとおり、85ccの排気量アップと、可変バルブタイミング、BMW ShiftCam(以下シフトカム)を装備して、パワーで9%、トルクで14%と大きく性能アップを果たしている。走るのが楽しみだ。
まずはオンロードをベイシックバーションで試す。エンジンを始動した瞬間、静粛性を上げたパワーユニットからは、純度の高い排気音が耳に届いた。乾いたボクサーエンジンらしいその音は、1200よりも音が太く感じる。そして、エンジンの回転がとても滑らか。スタートさせようと思いクラッチレバーを繋ぐと、今までに感じた事のない太いトルク感でGSは動き出す。まるで誰かに押されているような感触なのだ。
2,000rpmを越える程度でシフトアップをしてもその力強さは変わらない。低い速度でエンジンがブルブルする場面があった1200とは異なり、アクセルに対してスムーズな反応をする。これは違う。凄い。滑らかで力がある。
開発者が語るように、1200とは別次元のエンジンに仕上げた、とはこういうことか。低速側、高速側のカムプロファイルを持ち、アクセルの開け方や5,000rpm以上で切り替わると言うことから、レインモードとダイナミックが切り替わるような想像をしていたが、レインモードのようにマッタリとした印象はみじんもない。滑らかで大きなトルクがバイクを軽々と押し出す気持ち良さ。排気量は1,250ccというより、1,400ccぐらいありそうな印象なのだ。
それだけトルクがあると、不意なアクセル操作でも反応し、車体にギクシャク感が出るかと思ったが、それは全くの杞憂。電子制御スロットル周りのレスポンスとマッピングが自然で、開けた分は滑らかな力強さを取り出せ、腕が路面のギャップで揺れたぐらいでイチイチ車体にスナッチが出るような荒いレスポンスもでない。とにかく走りやすいのだ。
低回転での気持ち良さは、そのままツーリングペースに速度を上げても同様だった。3,000rpmから4,000rpm、4,500rpmほどまでで、アクセルを開ける度に「オー!」という押し出す感じに声が漏れる。気持ち良いのだ。さすがにこの排気量があると充分な走りを堪能できる。その領域でも、レスポンスに不満はなく、トルクの波に乗って走り感じがとにかく楽しい。そう、アクセル開度が少なく、低速側のカム領域だけでも相当なパフォーマンスを持っているのだ。
そして、追い越し加速時に回してみたが、4,500rpmあたりからさらにトルクが上乗せされた印象で、5,000rpmを越えても基本的にフラットなトルクカーブを描きながら、トップエンドへと一気に上り詰めるパワーを持っている。その時、切り換えが行われているはずのカムだが、メカノイズもなく、パワーカーブも今まで体験したフラットツイン同様、スムーズでシームレスな繋がりのままエンジンは駆け上がる。ただ未体験なパワフルさにヘルメットのなかでますます顔が緩むのである。
今回の変更でフレームのジオメトリーやサスペンションの設定に変更無し、とのことなので、エンジン特性が変わったことで、今まで以上にコーナリング時の一体感が増し、交差点を走る速度からまるで車体がコンパクトになったかのような軽快さがも加わった。この変化は嬉しい。
ワインディングロードも走った。トルクフルなエンジン、ブリヂストン製のOEMタイヤ、A41がみせる車体とのマッチングもよく、旋回性、グリップ感とも信頼のおけるもの。とにかく、エンジンが醸し出す変化が気持ち良くて、試乗時間はあっという間に過ぎていった。
フロントのブレーキキャリパーに、新たにヘイズ(Hayes Brake)というアメリカブランドが採用されていた。形状は今まで以上にスクエアで、ルックスが良い。もちろん、制動力、タッチともいままでのブレンボ製と同様、もしくは初期タッチから磨き込まれている。性能的には全く同様だそうだが、信頼感があり中速まではトルクの太さ、高回転ではパンチのある加速を楽しみ尽くせるブレーキだった。
結論を言えば、このエンジン特性は、一人乗りでは自在で楽しく、二人乗りやパニアに荷物を詰めたとき、ジェントルかつ力強く走ってくれるのは間違いなさそうだ。GSワールドにまた新たな1ページが開いたのだ。
次回はオフロードでの試乗模様をお届けする。