18歳と20歳、2人の若手ライダーの起用で8耐に挑むTeam Tras Part.2 ライダー山元聖
- 掲載日/2017年07月26日【トピックス】
- Photo / VIRGIN BMW Text / Takeshi Yamashita
2017年の鈴鹿8耐に挑むTeam Tras。8耐はスプリントとは違って8時間の長丁場を走り切るレースであり、ライダーにはスピード以上に「経験」も求められる舞台だ。そんな世界屈指の過酷なレースに18歳と20歳という若いライダーを起用したTeam Tras。果たしてその狙いとは?
若手ライダー起用で8耐に挑むTeam Tras
「児玉選手のタイムを抜くことが目標です」 20歳の山元聖は、鈴鹿8耐での目標を力強くそう話す。J-GP3で全日本デビューして5年目。昨年からST600でフル参戦してきた。 「テレビでMotoGPを見たときに衝撃を受けて、やってみたいと思ったんです」 モータースポーツに理解のある両親は、彼をMFJロードレースアカデミーに参加させた。13歳の山元にとってそれがバイク初体験だったが、まわりはポケバイ出身者の経験者ばかりで戸惑ったという。その頃から憧れ、ずっと追いかけているマーベリック・ビニャーレス選手が目標だ。 「J-GP3ではセブンシー(P.MU 7C HARC)で走ってました。シーズン中はマシンのセットアップはすでにできていて、あとはライダーの実力がタイムにそのまま反映される状態でした。このバイクならここまでのタイムを出せるという目標が見えていたのでやりやすかったし、それがおもしろかったですね。達成できたときには自信が生まれました」
着実にステップアップを重ねてきた山元だが、鈴鹿8耐はさらに飛躍するための大きなチャンスだ。しかし目標に掲げている児玉勇太のタイムは決して簡単なハードルではない。
「SUGO6耐などで1,000ccを走らせたことはありますし、先日はテストでS1000RRも走らせました。怪我で乗れていなかったため、久々のロードレーサー、しかも1,000ccだから目が追いつくか不安でしたが、トラコンのおかげで立ち上がりからスロットルを早く開けられましたし、1ラップ目から好印象でした」
新田によれば、山元がツインリンクもてぎで走らせたS1000RRは昨シーズンの全日本を走っていた車両で、もてぎ用のセッティングになっていなかったという。それでも好感触といえる山元を「順応性がいいのは若さだね」と言って新田は微笑む。 「2015年に加賀山さん(TEAM KAGAYAMA)のところでスタッフとして鈴鹿8耐に参加させてもらったときの印象は“暑い”、“つらい”でした(笑)。正直なところ、それまでは鈴鹿8耐のことを意識したことがなかったのですが、やはり実際にレースを経験すると、スプリントにはないおもしろさも発見できましたし、次の8耐は絶対にライダーとして参加するぞ、と思いました」
それからわずか2年で、山元は鈴鹿8耐出場のチャンスを掴んだ。若手を探す新田との縁があったからだが、それも彼が持つ強さなのだろう。 「今年は怪我のためにまだ1戦も走れてない状況なのに、僕の名前を挙げていただいて、チームに入れてもらえたことには感謝でいっぱいです」 そんな山元に鈴鹿8耐での目標を訊いた。 「まずは完走してポイント圏内のリザルトを残したいです。それと、まわりの人たちをギャフンと言わせたいです(笑)」 山元聖というライダーの走りと名前を、他のライダーやチームクルー、スタンドの観客、テレビ観戦やネットでライブタイミングを視聴している多くのファンの記憶に焼きつけること。それが山元の目標だ。 「MotoGPは憧れですし、走りたい」 さらなる目標を世界の頂点におく山元にとって、今回の8耐も通過点のひとつにすぎない。もちろんそれは新田の意図するところでもある。
近年の鈴鹿8耐はかつてのスターライダーを招くことで注目を集め、観客を動員してきた。モータースポーツを盛り上げるための方策として、ブーム再燃を狙うやり方もいいだろう。しかしバイク人口の中心が50代といわれる昨今、そこだけを考えていたのでは将来性に欠けることも事実である。新田が言うように、若い世代にモータースポーツのおもしろさや熱気を伝えること。そして私たちモータースポーツファンがそれを見守り、育てていくという気概を持って観戦していくことも大切だ。Team Tras135HPの鈴鹿8耐に注目し、応援すること。それは次世代を育て、モータースポーツの未来を作っていくことと同義といって過言ではない。 考えてみれば、S1000RRというバイクはBMWにとって非常に若いバイクである。またそのコンセプトのひとつは次世代へとモータースポーツ文化を継承するべく、これまでとは異なる世代のバイクファンへBMWの魅力を伝えることだ。「若い世代にバトンを渡すべく、Team Trasを若返らせる」という新田の決断はS1000RRのコンセプトそのものでもある。
この記事を読んでくれている人のなかにも若い世代のバイクファン、BMWファンが多くいることと思う。必ずしも鈴鹿サーキットまで行ってスタンドで観戦しなくてもいい。ツイッターやインスタグラム、フェイスブックなどのSNSやネットのライブタイミングでもいい。鈴鹿8耐のレース実況をチェックして、Team Trasに注目して応援してもらいたい。ハッシュタグなどを活用すれば、チームやライダーに応援が届くはずだ。 7月30日19時30分。鈴鹿8耐のチェッカーが振られたそのとき、私たちの口から「ギャフン」が漏れることを私たちも大いに期待している。
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