水煙を上げて疾走する戸田選手とS1000RR。とてもレースを行うコンディションではなかったレース1。リアタイヤが巻き上げる水しぶきが過酷な状況を物語っています。
いよいよ最終戦を迎えた MFJ 全日本ロードレース選手権
全クラスでチャンピオンが確定し BMW 勢もポイントをゲット
1年を通じハイレベルな戦いが繰り広げられてきた MFJ 全日本ロードレース選手権 が、鈴鹿サーキットで開催された 『MFJ グランプリ』 をもって本年度のシリーズが閉幕しました。このレースに、BMW 勢は前戦 『岡山サーキット Rd.』 同様、戸田 隆選手と高田速人選手の2人が S1000RR を駆り参戦。 MFJ グランプリ は、シリーズ開催中のレースで、今までポイントを獲得した選手しか参戦を許されない特別なレースであり、更に2台の S1000RR がエントリーする JSB クラスは、今大会に限り2ヒート制がとられています。
決勝レースが開催された10月28日は、前日までの好天とは打って変わって悪天候。あまりの雨の強さに一部のレースがキャンセルされるほどでしたが、2台の S1000RR がエントリーする JSB クラスは2ヒート共に開催。激しい風雨が吹き付ける厳しいコンディションの中、2台の S1000RR は力走。戸田選手はレース1、2を完走し、見事にポイントを獲得。有終の美を飾りました。高田選手はレース1の最終ラップで転倒してしまい、レース2は出場をキャンセルしました。レース1の走りが素晴らしかっただけに残念です。
戸田選手は年間ランキング 18 位を獲得、高田選手は 40 位というポジションでシリーズを終えました。戸田選手は後半戦からの参戦、高田選手は2戦のみのエントリーでしたから、見事な成績と言えるでしょう。来年もまた、レースで活躍する BMW 勢の姿に期待したいものです。
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01スタート直後の密集状態では、前走者の水煙でほとんど視界が失われているような状態。それでも、少しでも前へと激しいバトルが繰り広げられているのは、さすが国内バイクレースの最高峰です。
02雨のレースを得意とする高田選手は、まさに水を得た魚のような走りを見せました。スターティンググリッドは25番と良いポジションとは言えませんが、1周目を終えた時には19位までジャンプアップ。その後もどんどん順位を上げていきました。
03戸田選手はレインタイヤが路面に合わず、なかなかペースを上げることができません。なんとか転倒せずにレースを終えたという状態だったそうで、16位でゴールしました。
04絶好調の高田選手はレース終盤には14位に浮上、さらなるポジションアップが期待されていましたが、レース終了を目前に130Rで転倒。幸い、高田選手に大きな怪我はありませんでしたが、マシンの破損で惜しくもリタイア。レース2も出走が叶いませんでした。
05豪雨のレース1を制したのはディフェンディングチャンピオン、ホンダの秋吉耕佑選手。怪我で前半戦を棒に振った秋吉選手は、今年初めての優勝でした。
06レース2を前にグリッドへつく戸田選手。レース1に比べれば雨脚は弱まってはいましたが、依然としてレインコンディションのレースとなりました。
07レース1と同様、見事なスタートダッシュを決めたのは秋吉選手。レース序盤から後続をどんどん引き離していきます。
08レース1とは違うリアタイヤをチョイスした戸田選手ですが、これが見事に当り、レース2では快走を見せます。レインタイヤは事前にコースとのマッチングを確認することが難しいため、雨天時のタイヤチョイスは非常に難易度の高い選択となるのです。
09戸田選手のレース2のリザルトは、レース1と同じ16位。結果を見れば同じ順位ですが、我慢のレースを強いられたレース1とは異なり、積極的に攻め込む姿がみられました。戸田選手は来シーズンもS1000RRでMFJ全日本ロードレース選手権に参戦を予定。更なる活躍を期待しましょう。
10レース1に引き続き、レース2でも優勝を果たした秋吉選手。ドライの速さは当然一流ですが、レインでの強さには圧倒的なものがある選手です。
11JSB1000クラスで年間チャンピオンを獲得したのはヤマハの中須賀克行選手です。シリーズ全8レースの内、4レースで優勝を果たし磐石の強さを見せつけました。
12ST600クラスの優勝者はヤマハの大崎誠之選手でした。同クラスの年間チャンピオンは、タイ人ライダーのデチャ・クライサート選手が獲得しました。
13J-GP2クラスは、現役高校生ライダーであるヤマハの野左根航汰選手が優勝。年間チャンピオンはカワサキの渡辺一樹選手が獲得しました。
14予選日はまでは好天が続いていただけに、決勝日の悪天候が残念なレースでした。予選中は、2台のS1000RRがランデブーする姿も目にすることができました。
15セッティングに苦しむ高田選手は、ノックアウト式の予選でQ2進出ならず。レース1、2ともに25番グリッドという、高田選手の本来の実力とはかけ離れたポジションからのスタートとなりました。
16調子を上げてきている戸田選手は、予選で好タイムを連発。自らのベストタイムである2分11秒105を記録し、レース1、2ともに17番グリッドを獲得しています。
17予選中、ピットに入りフロントサスペンションのセッティング変更を行う戸田選手。レースウィーク中は、このように少しでも速いタイムを目指した試行錯誤が繰り返されるのです。
18戸田選手が使用しているリアショックユニットはハイパープロ。ハイパープロの販売元であるアクティブのスタッフが、ピットを訪れセッティングについて意見を交わしています。
19メカに精通している高田選手は、ライディングスーツを脱ぐとメカニックに変身します。バイクを走らせていない時も、レース期間中は休む時間はありません。
20決勝レース前、言葉を交わす戸田選手と高田選手。8耐でもチームを組み、プライベートでも親交のある二人は、レース仲間であると同時に同じマシンを駆るライバルでもあります。
21戸田選手のピットに、バージンBMWではお馴染み『Tras』の新田さんと、モトラッド鈴鹿のマイスター岩間さんが表敬訪問。皆、共に8耐を戦った同志です。
22BMWでの8耐参戦には欠かせない人物、BMWジャパンの名物社員である武藤さんも鈴鹿サーキットを訪れ、日本最高峰のレースを戦うS1000RRの姿を見つめていました。
23レース1とレース2のインターバルに、戸田選手のS1000RRをメンテナンスするGトライブの会澤メカニック。1日に2レースを走るだけでもメカニックは大忙しなのですが、その上レインコンディションとなると、通常のメンテナンスの他に、マシンのあちこちに入り込んだ水分を除去する作業も加わります。
24決勝日、朝のフリー走行中ピットに戻ってきた高田選手。見ての通り、スリックタイヤを履いています。走行開始直前までは、かろうじてスリックタイヤでも走れそうな路面状況だったのですが、走行開始直後に雨脚が強まり、急遽予定外のピットインとなりました。ドライ路面では絶大なグリップを発揮するレーシングスリックタイヤですが、ウェット路面では全く性能を発揮出来ないものなのです。
25降りしきる雨の中、コースインする戸田選手。この直後、白線を超える時にリアタイヤがスリップ。発進したばかりでスロットルを大きく開けているわけでもありません。それほど、レインコンディションはタイヤのグリップ性能をスポイルするのです。
26恒例のピットウォークは雨天でも開催。さすがに晴天時よりは人の数が少なかったものの、多くのレースファンが参加していました。
27好天に恵まれた予選日には、タンデムでのサーキット走行体験が開催されました。ライダーを務めるのは、現役全日本エントラント須貝義行選手。トップライダーによる異次元の速さを体感出来る滅多にない機会。是非一度参加してみるべきイベントです。
28サポートレースとして、ホンダCBR250Rによるワンメイクレースも開催されました。このレースはアマチュアレースではありますが、性能差がほとんど無いワンメイクだけに、白熱したバトルが繰り広げられていました。
29全レース終了後にサーキットの体験走行イベントも開かれました。残念ながらレインコンディション、しかもレースのディレイの影響を受けて日没後の走行となりましたが、参加者は憧れの鈴鹿サーキットを楽しんだようです。