バイクの桃源郷、マン島:第1回 レースウィークに出会った人々
- 掲載日/2011年07月01日【トピックス】
- 取材・写真・文/山下剛
松下ヨシナリ選手にサインをねだっていた少年たち。たぶんマン島住民だと思うんだけど、このちょっとワルそうな表情がいいよね。将来バイクに乗りそうなカオしてる。
豊かな自然と人、そしてモーターサイクル
すべてが調和している天国のような島
マン島TTレースウィーク中は、実にたくさんのバイク乗りがやってきます。その数は3万人、バイクの台数は1万台ともいわれます。人口が8万人といわれる島にそれだけの数のバイク乗りがやってくるわけですから、まさしく島中バイクだらけになります。そんな島にバイク乗りがやってくれば、おのずと頬が緩み、四六時中笑顔になりっぱなしになるのは当たり前のこと。だから、みーんな素敵な笑顔をカメラに向けてくれます。
今回はそんな笑顔を中心に、レースレポート記事ではあまり表舞台に出てこないネタをお届けします。
フォトTOPICS(写真点数/81枚)
01こちらはマン島に通うこと20ウン年のフォトグラファー・磯部孝夫さん。ファンからサインをねだられ、照れながらも応じてるところです。磯部さんの写真は、雑誌『MOTO NAVI』にて見られますよ。ぜひ!
02BMW S1000RRでレース参戦していた『Ice Valley BMW Motorad』チームの女の子たち。笑顔のなかでもやっぱり女の子の笑顔はイイもんですね!
03のカップルとはバラフブリッジにある公衆便所で知り合いました。右の女性が男性用に入ろうとしていたので「そっちじゃないよ」と声をかけたのですが、じつは足を怪我している男性のためにドアを開けているところだったのです。どうやら昨秋に交通事故に見舞われて負傷したとのことで、現在は治療中なのだとか。この写真は後日グランドスタンドで再会したときに撮ったものです。
04「DO NOT DISTURB」、昼寝してるからジャマするな、てことですね。この日はシニアTT決勝が行われる予定だったのですが、マウンテンコースの天候不順により3度もスタートが遅れたため、オフィシャルスタッフがこうして昼寝してたとか!? もっともこの写真は、それを再現するためにエントラントのチームスタッフが演じてくれたんですけどね。
05少年たちに囲まれてサインに応じる松下ヨシナリ選手。これはシニアTT決勝ゴール直後。つまり、過酷なレースの頂点となるレースを完走したヒーローを取り囲んでるの図、なわけです。それまでも多くのファンからサインをねだられるマッちゃんでしたが、この日ばかりはその数が劇的に急増してました。
06イカすサムアップを見せてるのは、サイドカーTTに長年参戦しつづけている猛者、Roy Hanks/Dave Wellsチーム。こういうオッサンに憧れる中年一年生は多いのです。
07中央のオッサンは車検担当なのですが、こんな豪快な笑顔を何度も見せてくれる陽気なオッサンです。後日、また車検風景を撮影していたら「それ貸してみろ」とカメラを取り上げ、私をパチリと撮ってくれました。取材してると自分が写ることってないから、それはそれは貴重なショットとなったのでした。
08毎年マン島TTにやってくる有名人は、ドイツのGSX-R1100乗り。20年以上は着てるであろうレザースーツには、TTのワッペンが所狭しと貼られていて、彼のTT観戦歴の長さを物語ってます。スジガネ入ったTTオタクですね。
09PENZ13.COMのパドックにやってきた女性も、やはりドイツから走ってきたというGSX-R1000乗り。イギリスやドイツではスズキの人気は高く、とくにGSX-Rは日本よりも多く見かけます。
10アイスクリームをなめていたオフィシャルスタッフのお姉さんたち。あ、もうなくなっちゃいますね、アイス。おかわり持ってきましょうか?
11グランドスタンドにあるエントラント専用駐車場の監視をしていたオフィシャルのオッサン。すごーくマジメに仕事してる姿が印象的でした。毎朝カオを合わせるので、たまにいないとちょっと心配になったりして。
12マッちゃんにサインをねだった少年。シャツの胸の真ん中に日本語の文字が見えるかな? 写真撮らせてといったら、ちょっぴり照れてました。かわいいね。
13チーム『Kaka Racing』のビル・カリスター選手のマシン(YZF-R6)を撮っていたら、まるで「俺のバイクだぜ」と言わんばかりに近づいてきた少年。ちょっと照れたのか、フリだけして逃げようとしたところを「待ちたまえ、君がいたほうがいい」と呼び戻してパチリ。だけどやっぱり照れくさかったようで、視線が泳いでます。ニクイよ、コノヤロー。
14おなじみ松下ヨシナリ選手とポーズを決めてるのは、PENZ13.comのオーナーでありライダーのリコ・ペンツコファー選手(中央)と、三宅島に来てくれたこともある“生きる伝説”と囁かれるTTマイスター、イアン・ロッカー選手(右)。イアンさんがPENZ13.comのピットを訪問してくれ、二人を激励していました。さすがレジェンド、やることに余裕がありすぎる。
15こちらはサイドカーの表彰式でのトニー・エルマー選手とダレン・マーシャル選手。サイドカーはこの二人のように男女でコンビを組んでいるチームが珍しくないようで、他にも男女コンビのチームがいました。レザースーツを脱いだ姿だけ見ると、あんな過酷なレースを完走してしまうコンビに見えないところが、またスゴイ…。
16レースウィーク中、マン島のマウンテンコースは一方通行となります。これは以前まで『マッドサンデー』としてレース開催のない日曜日だけ行われていましたが、事故が多いことから近年はレースウィーク中は常に一方通行となってます。背後のパイロンはそれを示すため、マウンテンコースの入口と出口に設置されてるもの。これは出口で撮ったスナップで、つまり一緒にマウンテンコースを走ってきた仲というわけ。ゴキゲンのサムアップ、いただきました!
17グランドスタンドで出会った老夫婦。日本のバイク乗りの平均年齢が上がってると言われますが、それはこちらでも同じ。バイクを楽しんでる人たちの年齢層は高いです。でもそれでいいじゃないですか。長く楽しめる趣味なんだから、ね。
18グランドスタンド裏の売店にはフィッシュアンドチップスやハンバーガーを売ってますが、こちらはドーナツ屋さん。いつも行列ができていて、このスナップもその隙をついてパチリ! でもお姉さんに困惑気味の表情されるのはいつものことです…。
19レースウィーク中、このカップルには三度以上会いました。狭い島といっても、観戦ポイントはたくさんあるから、そう滅多に再会するなんてことないはずなんですけど、やたら気が合うんですね。この後、最後のイベントであり島の南部で行われる『POST TT』の会場でも再会したのです。
20ジャンプポイントとして観戦客の数も多いバラフブリッジ。その橋のすぐ隣にある家で、屋根に上がって観戦していた人たち。きっとこの家に住んでるのでしょうね。いいなあ特等席。
21こちらもバラフブリッジの観戦スポット。ジャンプを間近で見られるだけあって、とてもたくさんの人達が集まってきます。彼らとはけっこう距離が離れてるところから撮ってるんですが、こちらが撮ってるのをめざとく見つけてポーズしてくれるんですよ。
22えーと、これはどこだったっけな…ちょっと失念しちゃいました、スミマセン。こうしてギネスやエールを飲みながら観戦する人たちもけっこういます。楽しいだろうなあ、うん。あ、思い出した。ここはスタート間もないコーナー、クォーターブリッジの観戦ポイントです。
23ユニオン・ミルズを過ぎてグレンバインかクロスビーのあたりの観戦ポイント。ホント、カメラ向けるとみんな気づいてポーズとってくれるんです。
24さて、こちらはマン島TT夜の部。海沿いのプロムナードには移動遊園地や臨時のパブがあったりして、昼間のコーフンをさらに盛り上げたり鎮めたりと、みんな様々にマン島を楽しみます。この少年たちはおそらく地元の高校生? こちらのカメラに気づくと「俺たちを撮れ!」と迫ってきて、その後抱きつかれたりキスされたりといろいろ大変でした。いやー、盛り上がってますな!
25プロムナードには多くのホテルがあり、観戦客がたくさん宿泊しています。だから夜のプロムナードはさながら展示会のようにバイクが並びますし、こんなふうに夕涼みしながらビールを飲みつつ、バイク談義を楽しむ姿が見られるわけです。
26こちらはプロムナードからちょっと奥に入ったところにあるホテルのテラス。夜がキモチイイし、それに屋内は禁煙だからこうして外で飲んでいるんでしょうね。
27プロムナードに作られたパブにも、実にたくさんの人々がやってきます。どのくらいかというと、ちょっと試しに中に入ろうと思ってもちょっとやそっとじゃ入れないくらいギッシリ!
28夜のプロムナードはこんなふうにライトアップされて、ちょっと幻想的な風景を作り出しています。
29その幻想は移動遊園地が作り出す、まさしくファンタジー。移動といっても花やしきよりも規模も設備もデカく、常設じゃないかと思えるほど。これは『CRAZY CIRCUS』と題された小屋。お化け屋敷や氷の迷路なんてのもありました。
30かと思えば射的や輪投げや釣りゲームなんかもあったりして、夏祭りの夜店みたいな雰囲気もあったりします。
31しかし圧巻なのは絶叫系マシンが充実していること。メリーゴーランドもあったけど、こういう高速回転や高所落下系のマシンがけっこうあって、みんなキャーキャー騒ぎながら楽しんでました。
32さて、夜が明ければまたTTです。これはライダーたちのラップタイムを掲示するボード。これは昔ながらの方式が今でも採られていて、計測したタイムを手書きしたボードをカブスカウトの子どもが掲示します。といってもマシンにはトランスポンダーを装備しているからタイムは正確ですよ。
33この役目は彼らにとっても名誉なことなんだって。この仕事に就くと、彼らはTTレースで重要な役目を果たしたことを示すバッジをもらうことができます。そのバッジはネッカチーフ(ボーイスカウトたちが首にまくタイ)に縫いつけられてます(この写真ではそれを確認できませんが)。
34こちらは磯部カメラマンと松下ヨシナリ選手。磯部さんは30年近くTTレースを撮り続けているから、その走りを見ればどのくらい乗れているかがわかっちゃう。磯部さんは感性がスルドイ人なんだけど、長嶋茂雄のような語り口で感じたことをズバッと的確に指摘するのです。たま~に恐ろしい人だったりもするんですよ。
35望遠レンズで遠くから狙っていたのだけど、この子、しっかりと撮られることを意識して表情つくってますね、末恐ろしい子ですね、きっといい女になるに違いありません。
36マン島に限らずイギリスではレギンスを着ている女の人が多いけど(日本のように腰をスカートなどで隠すこともなく)、これはさすがにここでしかお目にかかれませんでした! まあ、当たり前か。
37手前で微笑んでいる奥様(だと思う)によれば、となりにいるオッサンは20年ほど前までカメラマンをしていて、TTレースも撮っていたそうです。撮らなくなってもこうしてまたやってくるほど、この島とTTには魅力があるんですね。
38これはメモリアルパレードラップのスタート場面。ライダーはイアン・ハッチンソン。2010年のマン島TTでサイドカー以外の5クラスを制覇したチャンプです。しかし昨年英国スーパーバイク選手権でクラッシュして重傷を負ってしまい、その怪我がまだ回復していないために今年の出場は見送りました。まだ左足には金属フレームが取り付けられた状態で歩くにも痛みが伴うそうですが、こうしてファンの前に姿を見せてくれました。昨年のTTではホンダを駆っていましたがその後ヤマハへ移籍したため、マシンとスーツがこんなことになってます。
39これはプラクティス前に行われたライダーズブリーフィングの様子。ライダーたちの前に立っているのは、松下ヨシナリ選手のマネージャーの淺田ふみよさん。東日本大震災の被災者のためのチャリティ募金活動『We are with you JAPAN』をしていて、ライダーたちにその趣旨を説明しているところです。この活動はマン島TTだけでなくその直前のボルドール24時間耐久レースでも行われ、世界中のライダーたちの間に認知されはじめています。
40ブリーフィングに参加したライダーはすべてチャリティ活動に賛同してくださり、こうして寄付をしてくれました。この募金活動で集められたお金は日本赤十字社を通じて被災地へと送られます。
41これは『We are with you JAPAN』のステッカーで、淺田さんのご友人がデザインされたそうです。寄付してくれた人すべてに差し上げたのですが、こうしてマシンに貼ってくれるライダーも多く、さらに認知度が上がりました。これは先に紹介した『Kaka Racing』のビル・カリスター選手のマシンに貼られたもの。
42そしてPENZ13.comのパドック前にはこうして募金箱が置かれました。募金箱の下には被災地の様子を知ってもらうための週刊誌が置かれています。TTライダーたちだけでなく、TTレースにやってきた多くの一般ライダーたちの善意をもらうことができたのです。
43さて、またまた場面はTTレースに戻ります。これはプラクティス(予選)のスタートシーン。決勝レースでは10秒ごとに1台ずつスタートしますが、プラクティスではこのように2台同時にスタートします。注目なのはやはりライダーと観客やプレスたちの距離の近さ!
44で、スタート直後の様子はこんな具合。フロントを浮かしながら猛烈に加速していく様を、手を伸ばしたらぶつかるんじゃないかと思えるほどの距離(いや実際にはぶつかりませんよ)で見ることができちゃう。
45それはこうして無事に完走して戻ってきたライダーを称える場面でも同じです。レースを終えてピットに帰ってきたライダーはみんなヒーローです。観客たちは偉業を成し遂げた勇者に対して、惜しみない拍手と歓声で迎えます。
46シニアTT決勝レースは、マン島TTレースの最高峰クラス。スーパーバイクとスーパーストッククラスで規定タイムを出さないと出場できないうえ、約60kmのコースを6周もするハードなレースです。だからこそ、完走した彼らはみんなヒーローなのです。カッコイイよ、マッちゃん!
47これは人気の観戦スポット『パーラメントスクエア』を駆け抜けるサイドカーとバイクの様子。プラクティスのため車間があまりなく、こんなふうにまとまってコーナーに突っ込んでくる姿には圧倒されまくります。こんな光景、ここでしか味わえません!
48これは人気の観戦スポット『パーラメントスクエア』を駆け抜けるサイドカーとバイクの様子。プラクティスのため車間があまりなく、こんなふうにまとまってコーナーに突っ込んでくる姿には圧倒されまくります。こんな光景、ここでしか味わえません!
49こちらはジャンピングスポットとして人気の『バラフブリッジ』の観戦エリア。コースのアウト側になることもあって、スポンジバリアやクラッシュパッドはちょっと離れたところに設置されてます。だからこんなふうにコースと観戦エリアの仕切りは鉄柵のみなのです。
50先に紹介したパーラメントスクエアで、コース閉鎖中の様子。マーシャルたちが交通標識を取り外して片づけてます。こんなふうに交通標識がかんたんに外せてしまうのもマン島ならでは!?
51クラッシュパッドを設置するコースマーシャルたち。こちらはユニオン・ミルズと呼ばれる場所で、ライダーたちは森の中のS字コーナーを抜けて教会や民家がある一帯へとやってきます。ちなみにクラッシュパッドの内側にさえいればカメラマンはここで撮影することができます。あ、そうそう。クラッシュパッドの中身を訊いたら「ストロー(麦わら)」だそうです。
52さて、ここからはバラフブリッジでのジャンプシーンを見てもらましょう。これは私が撮影した写真のなかで、もっとも高く飛んだもの。BMW S1000RRを駆る#33のポール・シュースミス選手には「高く飛んだで賞」を差し上げたい!
53ライダーはマイケル・ダンロップ選手、着地の場面。前後サスペンションの沈みっぷりもスゴイですが、リアタイヤのツブレっぷりもスゴイです。スーパーバイク決勝では6位でしたが、スーパーストック決勝では見事優勝を果たしてます。ちなみに彼は伝説のライダー、ジョイ・ダンロップの甥っ子です。
54シニアTT決勝では3位でレースを終えたブルース・アンスティ選手がバラフブリッジで見せたフロント着地。これだけの落ち方してても転倒することなく走り去っていきました。見ているこっちのほうがヒヤヒヤしてるのかもしれませんね。
55ちなみにバラフブリッジを横から見るとこんな感じです。橋の直後は緩やかながら右、左と続くコーナーなのでそれなりに速度は落としてきますし、高さや距離が出ないように飛ぶライダーがほとんどです。でも中にはしっかりサス沈めてからジャンプするライダーもいたりして、着地直後に「ガツン!」と車体が地面に当たった音を響かせながら走っていくライダーもいます。やっぱりギャラリーが多いところは意識しているようですね。
56そんなバラフブリッジですが、橋の下はこんな小川が流れてます。水はとてもきれいで、マン島のあちこちにこんなクリークがあります。観戦ポイントに行くため、この小川には踏み石が置かれてました。
57ところ変わってこちらは『グースネック』と呼ばれるヘアピンコーナー。パーラメントスクエアを抜け、ラムジーヘアピンをクリアした先にある、マウンテンコースの入口ともいえる場所です。ここまで上がってくるとコースの向こうに海を見渡すことができます。
58グースネックの向こうに見える景色がこちらです。丘陵の上に立つ石の塔、その奥に見えるアイリッシュ海、美しい緑の岬がなんとも風光明媚です。
59ところでこの写真は決勝レースではなくプラクティスのもの。プラクティスは島の日常生活を極力邪魔しないように夕方(18時)から行われます。そのため、こんなきれいな夕景のなかをライダーたちは駆け抜けていくのです。
60しかしキレイとばかり言ってられません。湿度が低く空気の透明度が高いヨーロッパの西日はとてつもなく眩しいのです。私も経験しましたが、本当に何も見えなくなるほどに眩しい。島を周回するコースだから、西日に向かって走らざるを得ない場所はいくつもあり、しかも長い。コースを完全に覚えているライダーたちだからこそ、そんな夕方にもレーシングスピードで走れるわけですね。
61こちらはユニオン・ミルズ、やはりプラクティス時の様子です。前田淳選手はここでスローダウンしたところ後続車がそれを避けきれずにクラッシュ、後日他界しましたが、追突したライダーはやはり西日のために前田選手の発見が遅れたそうです。
62こちらはクレッグ・ニー・バー、午後9時。マーシャルが走ってきたということは、この日のプラクティスが終了したことを意味します。高緯度にあるマン島は、そんな時刻になってもまだ日は沈みきっておらず、こんな夕景が続くのです。
63さて、マーシャルといえばこんな場面も有名ですね。場所はやはりクレッグ・ニー・バーで、ここはマウンテンコースの終わりともいえ、この先コースはダグラスの町へと入っていきます。マーシャルはマン島のライダーでないとなれないそうですが、彼らの隊列の走りは本当に等間隔で揃っていて見事です。まるでCG加工したかのように見えるけど、本物ですよ。
64さて、何度か紹介しているクレッグ・ニー・バーは、全開で駆け下りてきての右コーナーです。その正面にバーがあり、エールやギネスを片手に観戦する人もいれば、コースマーシャルやカメラマンは向かってくるライダーの正面で待機したりカメラを構えたりしてます。そのため、ここのクラッシュパッドは二重になっていて、他の場所よりも厳重です。さすがに観戦客はここには入れず、バーの2階やスタンドでの観戦となります。
65レース開催前、まだ一般車両が通行できる時間帯にマウンテンコースを走ってみたときの写真です。以前は『マッドサンデー』と呼ばれ、レースのない日曜日のみ、マウンテンコースを一方通行として速度無制限区間となっていましたが、事故が多いことから平日も一方通行にしています。速度無制限は相変わらずで、いくら一方通行といっても追越車線となる右車線を200km/h超で追い越してくるバイクがいるから、常に右ミラーで後方確認してないと危ない。
66これは事故防止を喚起するポスターです。パーラメントスクエアにあるフィッシュアンドチップス屋の店内で撮りましたが、マン島のあちこちに貼られてるものです。日本と違って直接的な表現に驚かされますが、事故防止という観点ではこのほうが効果的でしょうね。それでもやはり事故はなくならないのですが…。
67レース休日の日曜日、パーラメントスクエアには多くのライダーがやってきて、ビールを飲んだりバイク談義したりしてます。
68こうして路傍に座り込んで道行くバイクを眺めて黄昏てるライダーもいます。
69パーラメントスクエアは信号のある交差点なので、これだけの台数がやってくるとこんなふうに渋滞します。なかには渋滞にシビレを切らしてバーンナウトしはじめるライダーもいたりして…あまりヤリ過ぎるとよろしくないんじゃないのと思うのはやっぱり日本人ならではの感性なんでしょうかね? ちなみにこの通り沿いの家の庭で開かれてたパーティの席にいたオバチャンに「バイク好き?」と訊いたら「好きじゃないわよ」との返事でした。いろいろですね。
70さて、こちらはマン島TTレースウィーク最終日に、キャッスルタウンという町の公道を閉鎖する『ビロウン・サーキット』で開催されたレース『POST TT』です。1周約5マイルほどの小さなコースで、排気量も125~600ccまでのバイクで争うレースです。125ccレーサー(RSやTZ)と400cc(FZRやVFR、ZXRなど)が混走するなど草レースムードの高いレースですが、マン島TTレースよりも「バイクレースの原点」を感じられます。
71排気量が小さいから速度は低いものの、TTよりも距離感はさらに近い。
72決勝がはじまるまでのプラクティスでは、こんなふうに沿道の芝生に寝転がってる観戦客の多いこと、多いこと…。レースウィーク最終日にくわえて、規模の小ささからでしょうか、こうしたのんびりムードが漂ってます。
74コースの一部は墓地の間を通っていまして、そこは右、左と続くS字コーナーになっています。だからこそ観戦客も多くやってくるのですが、やはりここでも決勝レースがはじまるまではこうして寝転んで待ってます。
75この二人は墓石の間で完全に寝入ってました。まるで今から死んだ後の練習でもしてるみたいね。こういう光景も日本では考えられませんが、死や死者に対する観念が違うんでしょう。
76墓地はこうしてバイク駐車場にもなります。とはいえ、さすがに墓石に乗ったりすることはなく、あくまで墓地の空いたスペースを利用しているといった風情でした。
77さて、こちらはPOST TTレースのパドックの様子。イアン・ロッカーやマイケル・ダンロップといった一流ライダーも参戦していて、とくにイアンさんはこのレースにおいてはジョイ・ダンロップと並ぶ優勝回数を記録している、まさしく走る伝説ライダーでもあります。かといってパドックはとても質素なもので、彼にしてこのテントひとつだけ。そしてこんなふうに気さくにファンとの記念スナップに応じて笑顔を見せてくれます。
78マン島ではレースウィーク中、ホンダVFR400の姿をよく見かけました。しかもどれも程度がとてもよく、愛情を注いで乗り続けていることがよくわかるのです。やはりRC30の影響力が今なお続いているのでしょうか。
79こちらは墓地の塀の上で抱き合うカップル。おそらくイタリアから観戦にやってきたライダーだと思うのですが、なんだか映画のワンシーンみたいだと思いません? ちなみに彼らはとても親切で、私が2台のカメラを抱えて塀を超えるのに苦労していると「カメラ持っててやるよ」と声をかけてくれました。
80墓地のコースマーシャルスタッフ一同をつかまえて記念スナップを撮りました。リーダー的存在のマーシャルさんは家族を連れてきていて、生まれて間もない赤ちゃんまで来てまして、なんだかほんわかしたムードを醸しておりました。
81というわけで、最後はPOST TT 600ccクラスで優勝したマイケル・ダンロップ選手の走りのカットで締めましょう。墓地の間を抜けていくS字コーナーは、こんなふうに石垣に体を擦りつけんばかりにインをついて抜けていきます。中には石垣をかなり意識したライディングスタイルのライダーもいたりして、バイクレースの原点は「俺より速い? バカいうなよ、じゃあ走ってみようぜ」というただそれだけのものなんだなあと肌身で感じさせてくれました。ちなみにPOST TTはマン島在住ライダーも多く参戦していて、プログラムのエントリーリストにはライダーの住んでいる町の名も記されています。
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