第2回 タイヤの種類
- 掲載日/2006年02月19日【タイヤ講座】
- 執筆/SPEED STAR代表 水口 和明 氏
F800GS
バイアスタイヤと
ラジアルタイヤの違いと特徴
前回、タイヤはどのような役割を果たすモノか、をご紹介いたしましたが、今回はタイヤの各部の果たす役割、タイヤの種類が変わるとオートバイにどのような変化をもたらすのか、にテーマを絞りご紹介したいと思います。では、詳細についてご説明する前にタイヤの種類やサイズ表記について、ご紹介いたします。少々難しいかもしれませんが、タイヤへの理解を深めるため、しばらくお付き合いください。
一般的に言われているラジアルタイヤ、バイアスタイヤとはタイヤの構造を指します。トレッドの下の部分、タイヤの骨格にあたる部分(カーカス)がナイロンベルト、ケブラーベルト、スティールベルト、このような材料を使って出来ています。この糸の巻き方の違いがバイアス、ラジアルの違いになります。
バイアスタイヤの特徴(斜めにコードが並んでいる)
バイアス構造のカーカスはタイヤ回転方向に対して30~40度位の角度をつけたコード層を互い違いに何枚も重ねてあります、これとは別にトレット部はブレーカーというものでカーカスを補強しています。
- ● 実用域での走行ではクッション性に優れている
- ● コストパフォーマンスに優れています
ラジアルタイヤの特徴(放射状にコードが並んでいる)
ラジアル構造のカーカスはコードが回転方向に対してほぼ90度の1プライ(カーカスを構成するコード層の数を言います1層であれば1プライ2層であれば2プライ)トレッド部は回転方向に近い角度にコードが並んだベルトというもので締め付けています。
- ● トレッドパターンの変形が少ないため、発熱が少なく耐摩耗性に優れている
- ● 構造がシンプルなためタイヤが軽く転がり、抵抗も少なくなります
- ● パターンの変形が少ないため、レイン走行時でも水はけがよい
- ● グリップが安定している
- ● バイアスに比べ値段が割高です
タイヤの役割は「荷重を支える」、「路面に力を伝えること」、「衝撃を吸収する」と前回のコラムでかきましたが、「荷重を支える」にしても「力を伝える」にしても、タイヤにある程度の「剛性」が必要となってきます。また「衝撃を吸収する」にはある程度の「柔軟性」が必要になります。バイアスとラジアルの違いはこの「剛性」と「柔軟性」を満たすための手法の違いになります。
「バイアス」はタイヤ全体が変形して衝撃を吸収しながらグリップしているのに対して、「ラジアル」はサイドウォールのみで衝撃を吸収しトレッド部分は変形せずに路面を追従していきます。つまり、バイアスタイヤよりラジアルタイヤの方がタイヤの各部の役割分担がはっきりしているのです。
タイヤにはもともとバイアスタイヤしかなく、2輪用のラジアルタイヤが作れるようになったのはここ20年ほどの出来事です。オートバイのエンジンパワー・フレーム剛性が上がり、オートバイで出せる最高速が上がってきたため、バイアスよりさらに高性能なラジアルタイヤが必要不可欠となってきたのです。重いオートバイや高速域を重要視する車輌にはラジアルタイヤの装着が一般的になっています。
メトリック表示の正しい見方
タイヤのサイズを知るためにはタイヤのサイドウォールに記載されている数字に注目します。現在流通しているタイヤのほとんどが、この表記を使用しています。
180/55ZR17 M/C(73W)
※180はタイヤ幅(mm)を表します。タイヤを輪切りにしたときの最も広い部分を図った数字です。この数字が同じであっても実際には+-5mmの誤差があることが有ります。
※次の55はタイヤの扁平率を意味します。タイヤの扁平率は、タイヤの幅に対するタイヤの高さの比率を%で示したものです。
※Zは許容最高速度を表す記号です。タイヤの性能により様々なアルファベットがあります(表1参照)
※Rはラジアルタイヤを意味します。
※17はタイヤの内径をインチ表示しております。17インチのホイールに適合するということになります。
※M/C はモーターサイクル用のタイヤという意味になります。
73Wでは数字の73はロードインデックス(荷重指数)を意味し(表2参照)、Wは許容最高速度を表しています(表1参照)。ロードインデックスとは規定の条件でこのタイヤが負担できる最大の荷重を表す記号になります。
インチ表示の正しい見方
下記のような表記がされているタイヤもあります。その読み方をご説明しましょう。
4.00H18 4PR
※4.00断面幅(インチ)コンマ以降の数字が10や60の場合は扁平率が80%を意味し、00の場合は扁平率が100%を意味しています。
※Hは許容最高速度を表す記号ですタイヤの性能により様々なアルファベットがあります(表1参照)
※18タイヤの内径をインチ表示しております。18インチのホイールに適合するということになります。4PRタイヤの強度(プライレーティング)を指しています。タイヤ内部にある骨組みとなっている「カーカス」と呼ばれるコード布の層をプライと呼びます。タイヤが製造され始めたばかりの頃にはコード布に 綿を使用していました。タイヤ強度を示すため、布の重ねた枚数をそのまま表示していました(4枚なら4プライ)。現在ではさまざまな丈夫な材料(ナイロン、スチール・・・)が使われるようになり、綿のコード同等な強度を示すという意味合いでプライレーティングという比較表示を用いています。
表1/速度記号(スピードシンボル)
規定の使用条件で、そのタイヤが走行できる最高速度を示す記号です。
アルファベット順に並んでいないところがあり気になるかもしれませんね。かつては、ここまで細かく区分けされた換算表が無く、「S→スピード」、「H→ハイスピード」、「V→ベリーハイスピード」で分かれている簡単なものだったため、前後している部分があるのです。
表2/荷重指数(ロードインデックス)
規定の使用条件で、そのタイヤに負荷できる最大荷重を示す記号です。
アルファベット表示の正しい見方
下記のような表記がされているタイヤもあります。その読み方をご説明しましょう。
MT 90 B 16 (SL)(WS)
※最初のMはモーターサイクルタイヤの事を意味します。
※次のTはタイヤの幅をさします。ここには複数のアルファベットがあります(表3参照)。
※90はタイヤの扁平率を意味しています。
タイヤの扁平率はタイヤ幅に対するタイヤの高さの比率を%で示したものになります。
※Bはベルテッドバイアス(バイアスに配置されたカーカスをベルトで締め付け補強したもの。
ラジアルとバイ*アスの中間的な性格。セミラジアル)
※16はタイヤの内径をインチ表示しております。16インチのホイールに適合するということになります。
※(SL)・・・スリムライン (ホワイトリボン)
タイヤのサイドの部分に1センチほどの細い白い線が描かれているもの。
※(WS)・・・ホワイトサイドウォール
タイヤのサイドの部分に白く5センチほどの厚みで描かれているもの。
表3/アルファベット表記のタイヤ幅変換表
※赤字部分がタイヤ幅を指す(単位mm)
代表 水口 和明 氏
東京都世田谷区に居を構えるオートバイタイヤ専門店を運営。国産車はもちろん、BMW やハーレーなどの輸入車のタイヤ交換まで取り扱うなど、その幅広い知識には定評がある。
- 【前の記事へ】
第1回 タイヤの基礎 - 【次の記事へ】
第3回 タイヤの特性
関連する記事
-
タイヤ講座
第3回 タイヤの特性
-
タイヤ講座
第1回 タイヤの基礎
-
インタビュー
小松原 恵子(F800ST)