第1回 シリンダーヘッド周辺
久々に過去のいかなるモデルとも関連性を持たない、まったくのニューモデルの登場である。1000cc スーパースポーツという各社のフラッグシップがしのぎを削るカテゴリーゆえに、今まで BMW に興味が無かった層の注目度も非常に高い。今回はそのメカニズムを中心に、世界一細かく S1000RR を解説していこう。
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サイドカムチェーン式並列水冷4気筒エンジン。ボア×ストローク = 80 × 49.7mm という極端なビッグボア超ショートストロークエンジンである。エンジンに関しては、超ショートストローク以外は極めてオーソドックスで、奇をてらったようなところはほとんどない。凝り性の BMW にしては珍しいことだ。エンジン左側には、クランク角度センサーなどの電装部品が配置される。オルターネーター (発電機) はエンジン側面ではなく、クランクケース上部に置かれる。クランクケースには、ピストンの裏側にオイルを吹き付け冷却する、ピストンクーラーを装備。
カムチェーンはエンジン右側を通る。前傾角度はKシリーズのように極端には寝ていない。低重心よりも、エンジンの前後長を短くできるメリットを選んだともいえる。エンジンのカバー類やオイルパンはすべてマグネシウム製。締め付けボルトはアルミ製 (再使用不可) である。締め付けは 3Nm + 90 度。湿式多板式クラッチは右側にレイアウトされる。動作はケーブル駆動である。
マグネシウム製のヘッドカバーを外してみよう。Kシリーズのような変則レイアウトではなく、カムチェーンはカムシャフト両方に掛かる。カムの動きは小さなロッカーアームを介してチタン製のバルブ (EX:27.2mm、IN:33.5mm) を駆動する仕組み。これはKシリーズと同じ。バルブクリアランスはインテーク 0.14 ~ 0.20mm、エキゾースト0.20 ~ 0.25mm。半球形のシムを入れ替えて調整する。
シリンダーヘッドガスケットはメタルガスケットを採用。締め付けトルクは 20Nm + 90 度 + 90 度。シリンダーの間隔 (ボアピッチ) は極端に狭いが、最近の水冷エンジンは皆同じようなものだ。
レッドゾーンは 14,000rpm から始まる。最高エンジン回転数 (レブリミット) は日本もヨーロッパ仕様も同じ 14,200 rpm。エンジンやトランスミッションは、日本もヨーロッパ仕様もまったく同じである。日本仕様の場合、最大出力 156 馬力を発生する回転が 10,000rpm (ヨーロッパ仕様は 193 馬力 13,000rpm ) である。これは、日本の騒音規制をパスさせる (測定回転数を 6500 から 5000rpm に下げるため) で、コントロールユニットで制御される。後述するスリックモードに設定すれば、193 馬力となる。
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