第17回 フレーム
ついに BMW 初の体育会系ダートバイク、HP2 Enduro の登場です。R1200GS ベースというより、GS のエンジン等を使ったまったく別のバイクと表現すべきで、他のいかなる BMW バイクの系列にも属さない。オーナー以外では滅多に見られない細部をお見せしよう。
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鋼管スチールパイプフレーム。数種の異なる径の丸パイプによる前後分割構造。他の R シリーズのように、エンジン・ミッションは車体強度部材の一部ではない。
タンクはこの中にすっぽり収まっている。もちろん、保護を意図したものだろう。タンクを外すと、エンジン上部がすべて見える。ダート走行をするとエンジン上に泥や砂利がたまっていることが多いので、掃除しやすい。
フレームのベースデザインは、2000 年のパリダカで三位に入ったワークスレーサー (車体の制作は主に HPN 社)、R900RR である。前後方向の剛性が非常に高そうな構造で、以前メインテナンスした R100GS ベースの HPN ラリーも前後方向に補強がたくさん入っていた。
ステアリングヘッド周辺はトラス (三角形) にパイプが構成され、剛性を高めている。テレレバーサスのようにストレスが分散しないのでかなりガッチリした造りだ。スチールフレーム時代のビモータを連想させる。
フレームの溶接を見る。おそらく、溶接ロボットではなく職人の手によるもの。肉の盛り方はけっこう多め。芸術的とは言い難いが凄みを感じる部分。
シートレールのパイプ径は細く、何らかの補機類を取り付けるための穴やハンガー、ラグ、ステーは一切無い。パニアケースの設定や積載は考えていないことがわかる。
前後のフレームはボルト4本で固定されている。下部はクランクケースで共締め。フレームの塗装は綺麗なインディエゴブルーでパウダーコーティング塗装。ちゃんとクリアも吹かれている。
サイドスタンドはボルト2本でブラケットごと外すことができる。これもエンデューロバイクの定番装備。
フロントフェンダーのステーではなく、リカバリーバー (泥濘地や溝等にスタックしたバイクを引っ張るため) である。ヘッドライトの保護とメーター等のブラケットを兼ねている。
アルミ製パイプで、フェンダーを突き抜けて裏側からフレームに固定されている。
後ろのリカバリーバーはシート下のフレームパイプ。泥などが直接かからないよう工夫されている。
強度的に問題ない部分はタイラップで固定されている。脱着も早いし軽量だからこれで充分。
HP2 は原則的に一人乗りだが、タンデムステップがオプション設定されている。この HP2 はオーナーの希望で乗員定員二名登録した。
このステップキットが凝っている。アルミのクランプでフレームパイプを挟むのだが、そのままではいくら強く締め付けても荷重がかかると回転してしまうので、ムクの太いステンレス棒を渡して廻り止めとしてある。同時にタンデムで荷重が増えた分の、リアフレームの補強を兼ねているのだ。
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