第3回 R1200RT エンジン
今回取り上げるのは、R1200RT と ST である。ここでは装備品が多い R1200RT をメインに、通称 PDI (Pre-Delivery-Inspection:納車前点検) 作業に加えて、新規採用されたメカやディテール、メインテナンス情報をできるだけ分かりやすく解説していく。オーナーおよびオーナー候補の方々も参考にされたい、ディーラーメカニックだけが知り得るニューモデルの細部を紹介していこう。
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GS と同じ 1169cc バランサー付空油冷ボクサーエンジン。エンジン型式は 122EF (GS は 122ED)。圧縮比・カムプロフィール・エンジンマネージメントプログラム・吸排気系の変更で若干高回転指向のチューニングとなり、10hp アップの 110hp / 115NM。ちなみに 1150RT は 1129cc 122EC で 95hp / 100NM である。
マグネシウム製のヘッドカバーを開ける。基本的に1100/1150系と同じレイアウト。クリアランスもインテーク0.15ミリ、エキゾースト0.30ミリ(共に冷間計測)と同じ。締め付けトルクはヘッドナット20MN+180度。カバーボルトは10NM。
バルブスプリングはテーパー状で、フリクションと慣性重量が軽減されている。エキゾーストバルブは中空。ソジウム封入で熱伝導と冷却性に優れる。
1100 / 1150 系との大きな変更点がクランクケースブリーザーである。左のカムシャフトカバーに太いブリーザーホースが接続され、エアボックスまで伸びている。
左カムシャフト後端にはファンがあり、エンジン内圧を強制排出する。クランクケース内にはリードバルブが新設され、内圧の変動が油面に影響しない設計となった。なぜこんな周到なことをするのか? ボクサーツインは左右のピストンが同時に左右に開き/戻るので、どんなエンジンより内圧の変動が大きいのだ。
オイルレベル点検窓。完全暖気 (オイルクーラーが熱い温度) でエンジン停止後5分以上のちに点検する。オイル全容量は少し増えて 3.95 リットル。上限と下限の差は 0.5 リットル。推奨グレードは 20W50 の鉱物油。1000キロごとのレベル点検と 3000キロごとの交換が理想。
RTにはクランクケース右にオイルレベルセンサーが新設された。レベルが少なくなると、ディスプレイに警告が出る。エンジン回転中でも測定できるのは便利であるが、停止状態のレベルグラスで確認するのが基本であるのは言うまでもない。
オイル量異常なしの画面。他の機能は外気温・路面凍結警告・平均燃費・平均速度・残燃料走行可能距離を選択表示できる。燃料計・油温計・時計・ギアポジション・トリップ・オドメーター・オーディオや ESA・シートヒーターの動作状態も表示可能。
オイル補給用のフィラープラグは指では回しにくいうえに、GS と違ってカウルが近く、手が入りにくい。車載工具の専用レンチを使って回せるようになっている。
ドレンボルトは対角 8mm のヘキサゴンでガスケットと共に位置も従来と変わらず。締め付けトルクは新品ガスケット使用で 32NM。エンジン下部の冷却フィンは深くなっている。
新旧オイルフィルターの比較。取り付け位置は従来と同じ。直径・ネジ径も同じだが、小型軽量化された。アンダーカウルが廃止され、整備性も向上した。締め付けトルクは0リングにオイルを塗って 11NM。
フィルター頭部形状が異なるのでフィルターカップレンチも変更された。新旧それぞれの専用品である。
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