#06 オートポリス大会ウラ話
- 掲載日/2012年10月24日【S1000RR 全日本選手権参戦記】
- 取材協力/G-TRIBE 文・写真/淺倉 恵介
MFJ 全日本ロードレース選手権が九州に上陸。戦いの舞台は、名峰阿蘇に抱かれた風光明媚なサーキット、オートポリス。オートポリスは、九州出身の戸田さんにとってホーム戦。いつにも増して気合いが入った、S1000RR と戸田さんの奮闘ぶりをお届けします。
悔しさが後を引く結果となってしまったオートポリス
プロフェッサー戸田の意外な弱点発覚?
今回は9月8日(土)、9日(日)に開催された MFJ 全日本ロードレース選手権第7戦 『オートポリスRd.』 のお話しです。
戸田さんは長崎県出身。中学生の頃に神奈川県に引っ越してきて、以来関東で生活してはいますが、やはり心は九州男児。オートポリスでのレースは期するものがあったようです。その心中を伺ってみましょう。
「やっぱり九州はメシがウマい! バージン BMW 読者の皆さん、ツーリングの行き先には九州がお薦めです。馬刺サイコー!」
レースとは無関係な郷土愛に溢れたコメントでした。さて、本筋であるレースについてお話ししましょう。予選が終わった後にリアショックのスプリングを交換していましたね? アレには、どういった意味があったのでしょう?
「そもそもオートポリスのレースは、リンクをノーマルに戻したから、車体姿勢を決めるところからやり直す必要があったんだよね」
酒井大作選手から借りたリンク(本コラム 第4回 参照)をノーマルに戻したために車体のセッティングを全面的に変更しなければならなかった、と。
「そう。リンクはサスペンションの特性を決める重要な要素だからね。で、練習走行でいろいろなディメンションを試したら、なかなかいい感じのセットが見つけられたの。かなり旋回性を引き出せるようになった。けど、予選中に本気で走ったら、坂を上りながらのコーナリングでいまひとつ曲がらない。オートポリスのコース後半はほとんどが上りながらのコーナーが続くんだけど、そこでスロットル開け開けで曲がっていけなかったんだ」
ほうほう。そこでリアショックのスプリング交換という決断を下した、と。でもなぜ、スプリングを変える必要があったんでしょう?
「コーナーでスロットルを開けたいところって、コーナー脱出の時でしょ。加速体勢に入っているから、マシンの荷重は完全にリア側に乗っているわけ。しかも上り坂だから、余計リアに負担がかかっている。そこで、リアの踏ん張りが足りなかったんだよね。荷重がかかっている状態で不要にリアサスが動くのなら、それは十中八九スプリングレートが低い。なので、レートを上げたということです」
なるほど、納得です。サスセッティングの勉強になります。
「本当はスプリングを変えた後にテスト走行をしたかったんだけど、レースウィーク中は自由にコースを走れるわけじゃないからね。だから決勝日朝のフリー走行でチェックするつもりだったんだけど…。コース上がウェットパッチだらけで、ロクに走ることが出来なかったんだよねえ…。まあ、悪くはないだろうという感触くらいは得られたけれど」
予選のあった土曜日の夕方、オートポリスのある阿蘇地方は激しい雷雨に見舞われてしまいました。そのため、翌朝のフリー走行では雨水が乾ききらなかったのです。決勝レースの前に行われるフリー走行は、マシンとライダーのウォームアップだけでなくセッティングの最終確認にも使われます。そこで変更したセッティングをテストできなかった戸田さんは、ある意味一発勝負で決勝に挑んだわけです。
「まあ、時にはそういったギャンブルも必要だよね。レースはタイムスケジュールが決まっているから、自分の都合でコトは運ばない。その中で、如何に良い結果を出すかを考えるのも、レースの進め方の大事な部分なんだ。例えばなんだけど、グリッドにつくためのサイティングラップや、レーススタート前のフォーメーションラップってあるでしょ? あのわずかな周回だってセッティングを確認したり、タイヤを暖めるために急な過減速を繰り返したりと、最大限に活用しているんだ」
のほほんとしていると、レースで結果は出せないんですねぇ。で、迎えた決勝レース。スタートダッシュは決まってましたけど、1コーナーの進入で随分とイン側に押し込まれてしまったようですが?
「押し込まれたというか、アウト側が混み合っていたからイン側に逃げた感じかな? スタートは悪くなくて、前のマシンを2台抜いたんだけど、1コーナーの進入で更に後ろから勢い良く突っ込んできたマシン1台に抜かれたんで、結局1台分前に出ました」
その後は4、5台で10位争いのグループを作っていましたね。
「スリップストリームを使ったらラクに追走できたから、ガンガンやりあってる前のマシンのタイヤがタレるのを待ってたんだ。タイヤを温存して、後半に勝負をかけようって作戦だね。ダンゴのまま10周くらいは走ったのかな? ところがねぇ…これからイクぜ! ってところで、やらかしてしまった」
急に前に離されてしまった周回がありましたね
「第2ヘアピンの進入でシフトミスしちゃったんだよね。残り2周だったから、離された分を挽回するのが精一杯。結局そのままレースが終わってしまって14位。悔しいなぁ…」
前戦の菅生Rd.と同じ順位ですね。前に出損ねた原因がシフトミスというのも前戦と一緒じゃないですか! ベテランらしからぬ凡ミスでは? ひょっとしてシフト操作が苦手だとか?
「そんなワケあるかい! むしろシフトは得意な方だよ。タンデム走行したら、後ろに乗った人が “このバイクはオートマですか?” って言ったくらいだぞ! ちなみにその時乗っていたのはスクーターだ」
オートマじゃねえか!
「冗談だ。いや、冗談抜きで、それくらいシフト操作は得意なんだけどね」
じゃあ、そんな “シフトの達人” である戸田さんが、立て続けにシフトミスでレースを失ったのには理由がある、と?
「もちろんだ」
その理由とは!?
「次のレースで明かされるであろう」
イイところで終わる連載マンガ風の引きで、次戦 『岡山国際サーキットRd.』 へと続きます。次回は、シフトミスの謎を引きずったまま戸田さんの S1000RR レーサーの詳細を紹介します。
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