VIRGIN BMW | #02 鈴鹿8耐ウラ話(その1) S1000RR 全日本選手権参戦記

#02 鈴鹿8耐ウラ話(その1)

  • 掲載日/2012年08月28日【S1000RR 全日本選手権参戦記】
  • 取材協力/G-TRIBE  文・写真/淺倉 恵介
S1000RRレースの画像

S1000RRでレース活動を行っている戸田 隆選手が、日本最大のバイクの祭典「鈴鹿8時間耐久ロードレース」にも参戦。今回は、戸田さん自身が語る、S1000RR を駆っての8耐インサイドリポートをお届けします。

S1000RR で2年ぶりの8耐を
戸田さんはどう戦ったのか?

2012年7月29日、鈴鹿サーキットで開催された “8耐” こと鈴鹿8時間耐久ロードレース。本コラムは S1000RR でレース活動を行っているレーシングライダー、戸田 隆選手の活躍を追っているわけですが、戸田さんはバージン BMW 読者の皆さんにはお馴染み 『Team Tras』 の一員として8耐に参戦しました。もちろん参戦マシンは S1000RR です。『Team Tras』 が18位完走というリザルトを残したのは既報の通りですが、今回は8耐について戸田さんに語ってもらいました。

8耐お疲れさまでした。豊富な8耐経験を持つ戸田さんですが、今年の8耐はいかがでしたか?

「毎度毎度、暑いね(笑)。S1000RR での8耐は2年ぶりだけど、やっぱり暑かった。新型 S1000RR でも8耐は暑かった。」

まあ8耐はそういうレースですし…。それはともかく、どんな心構えをもってレースに挑んだのでしょう?

「自分は第3ライダーとしての参加だったからね。今回の8耐は第1ライダーの高田選手のサポートをしっかりやると決めてたんだ。マシンのセッティングも高田選手に任せていたし、自分はきっちり走行をこなして、マシンを次のライダーに渡すことを第一に考えていたよ。そういう意味では、自分の仕事はこなせたんじゃないかと思ってます。」

レース展開はどうだったのでしょう? これといったトラブルもなく予定通りに走って…というように見えましたが、実際に走っていたライダーとしての感想を聞かせてください。『Team Tras』 は8回ピットインで9スティントという作戦をとっていましたよね。1:高田選手→2:戸田選手→3:松下選手→4:高田選手→5:戸田選手→6:松下選手→7:高田選手→8:戸田選手→9:高田選手というローテションでした。

「ちょっと作戦で読み違えた部分があったんだよね。『Team Tras』は基本的に1スティント24周で作戦を立てていたんだけど、最初のスティントだけは17周にしたの。周回数を減らして早めにライダー交代することで、他のチームとピットインのタイミングをズラして、ピット作業時の混雑を避けようという目論みだったんだけど、これが見込み違いで…。」

と、言いますと?

「スタートライダーの高田選手から交代して、自分が “さあ、行くぞ!” と出て行ったんだけど、コース上はもうすぐピットインするというバイクばかりなワケ。彼らは1時間近く走ってタイヤが限界にきていて、タイムが遅いんだ。自分はフレッシュタイヤを履いているからペースを上げたいんだけど、遅いバイクに引っかかる場面が多くてね。そうこうしている内にタイヤがタレてきちゃって、思うように順位を上げることができなかったんだ。ここは悔しかったなあ。レース開始1時間くらいだと、まだ走っているバイクもバラけていなくてね。そのあたりをもう少し考えていればよかった。自分の2回目の走行の時は、集団もほどよくバラけて走りやすかったね。タイムも安定して気持ちよく回れたスティントだね。」

大きなクラッシュでペースカーが入った場面もありましたよね。

「その時は松下選手が走行中だったんだけど、予定周回数を減らしてライダー交代したんだ。ペースカーが入っている間は追い抜き禁止だし、前後との車間が詰まるからね。ピットイン中にコースに出るのを止められる場合があるから、タイミング的には賭けなんだけどね。その後は予定通りに周回をこなした感じかな。自分は3スティントを担当したけど、さすがに最後のスティントは疲れていたね。トラブルもなく進んだレースだったけど、もう少し上に行きたかった。行けたんじゃないかと思うけど、レースに “たら、れば” はないしね。203周、18位という結果が、今年のチームの実力だったということだと思う。」

今年の8耐では3チームが S1000RR で出場していましたが、他のチームについては?

「BMW が3台も揃って嬉しかったよね。自分達が R1100S で8耐に出ていた頃は “なんで BMW がいるんだ?” って目で見られていくらいだし。しかも他の2チームとも10位内に入ってる。フランスチームは残り1時間まで、表彰台確実ってポジションにいたし、やっぱり耐久のプロだけあって速いよね。ライダーもバイクも速い。酒井大作選手のチームも速かった。2チームともスゴいよ。トップ10に入っているマシンをメーカー別に見ると、これってホンダに続いて2位なんだよね。これなら “どうだ! BMW は速いんだぞ!” って言えるよね(笑)バージン BMW 読者の皆さんも、周りの人に自慢していいですよ(笑)」

2012年の8耐は、BMW の速さが証明できたレースだったと言えるようです。戸田さんの8耐裏話は次回に続きます。

S1000RRレースの画像
スタートライダーを務めたのは高田速人選手。スタート時に、一瞬エンジン始動が遅れたために、順位を落としてしまったという。その後、懸命な追い上げを見せて順位を回復。戸田さんへバトンを渡した。
S1000RRレースの画像
ライダー交代時に会話を交わす、高田選手と戸田さん。マシンのコンディションや路面状況、他のマシンの様子など、レースに必要な情報を次に走るライダーに伝えるのだ。2人ともベテランライダーだから、最小限の会話でコミュニケーションが成立する。
S1000RRレースの画像
走行のインターバルでチームのトレーナーからボディケアを受ける戸田さん。これが効果絶大だったとのこと。「以前の8耐でもトレーナーさんがついてくれたことがあったけど、その時は “マッサージじゃ疲労回復しないな” って思ってた。でも、今回チームに帯同してくれた北原先生のマッサージは本当に疲れが吹き飛んだ。腕の良いトレーナーさんだと、こんなに効果があると知ったのは驚きだったな。」と、北原先生を戸田さんは激賞。
S1000RRレースの画像
最後の走行を終えたばかりの戸田さん、額を滝のような汗が覆う。もちろん体中汗まみれ、真夏に1時間近くをレーシングスピードで走る、8耐というレースが如何に過酷かを物語っている。
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フランスからやってきた 『BMW MOTORRAD FRANC 99』 は序盤からトップに肉薄し、レースを通して好ポジションをキープ。終盤には2位を走行し、表彰台は確実と思われたが、残りあと1時間というところでマシントラブルが発生。惜しくも9位となった。
S1000RRレースの画像
8耐ウイナーであり、世界耐久チャンピオン獲得経験もある酒井大作選手が、自ら8耐チームを立ち上げたことで大きな話題となった 『Team Motorrad 39』。世界耐久選手権で S1000RR を駆る寺本孝司選手、矢木清貴選手とチームを組み、見事8位のリザルトを残した。
国際ライダー
戸田 隆
バイクのサスペンションとシャシーの専門ショップ 『Gトライブ』 代表。セッティング能力とマシンの分析能力には定評があり、ジャーナリストとしても活躍中。BMW でのレース経験は豊富で、鈴鹿8耐では R1100S や K1200R で、もて耐では K1200R や HP2 Sport で参戦(HP2 Sport では優勝も果たしている)。2010年からは国内レースの最高峰 『MFJ全日本ロードレース選手権』 の最速クラス 『JSB1000』 に S1000RR を駆って参戦中。 戸田さんのブログ も要チェック。
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