G450X(2008)
- 掲載日/2012年05月07日【BMWバイク中古車ガイド】
G450Xの歴史など
エンデューロカテゴリの最右翼
競技用だけに台数は少ない
G450X は、エンデューロモデルのカテゴリーで生産・通常販売されていた BMW モーターサイクルではありますが、全ての面において他の BMW モーターサイクルとは異なるモデルでした。ほとんど競技用モデルとしてのいでたちでしたが、生産時から保安部品が装備されており、平成11年度規制の排気ガス検査にも合格しているため、日本では公道走行車として登録が可能でした(車輌取扱説明書には未舗装路のみで舗装路での使用は不可と記載されています)。
日本では発売当初にある程度の数を輸入しており、それらは車検取得用の書類が備わっておりましたが、後から追加生産・輸入された車輌には登録用の書類を交付しない「競技用車輌」として販売していたとも聞きます。販売されたほとんどの車輌は初期に配車されたもので、後から生産・輸入されたものは受注生産の形態を採用したため一部の店舗でごく少量の販売だったようです。
G450X が登場した背景には、R1200GS の記録的な販売が続き、2006年後半に HP2 エンデューロの登場、2007年前半に G650X チャレンジの登場、2007年半ばに BMW がハスクバーナを買収などの色々な要因があるのも見逃せません。
G450X は2008年9月に世界同時発売されたモデルで、日本での販売価格は発売当初から最終まで税込み114万円でした。日本での新車販売台数は不明ですが数が少ないのは想像できます。ですから G450X の中古車が店頭にならぶことは「ほとんど無い」と言ってぐらいです。
G450Xの特徴
競技用車輌としての思い切った造り込み
純粋に楽しみたいならクローズドコースへ
冒頭でもご説明したように、G450X はオフロード走行用の競技用車輌に最低限の保安部品と機能を装備した特殊なモデルのため、BMW モーターサイクルの多くが得意とする長時間・長距離での使用ではなく、モトクロスコースのような、特殊な場所で「駆けぬけるよころび」を得るためのモデルです。そのため公道走行車としては特異な面が多々あります。
エンジンは DOHC 水冷単気筒 450cc ショートストロークの台湾KYMCO社で生産されています。いかにもフライホイールが軽いという印象で、アクセルを開けると瞬時に回転が増すエンジン特性です。なお、エンジン出力はカプラーの抜き差しを替えるだけで約 40ps と約 50ps の2通りに設定できます。ただし、8,000rpm 以上(5速では120km/h)で連続走行した場合は設計の許容範囲を超えてしまうため、エンジンがブローする可能性もあります。その時の走行状態はコントロールユニットが記憶しているという仕組みまで備わっています。
点検整備は競技車らしく、時間毎での作業が推奨されています。そのためメーターには走行時間計が組み込まれています。燃料タンク容量は8リットルでシート下に設置され、予備表示される量は0.75リットルと極わずかです。オフロードコースでは十分な量ですが、公道だとかなり厳しいかもしれません。エンジンオイルは全容量で1.15リットルだけで、交換サイクルは本来の使用状況を考慮して1時間走行毎が推奨されています。サイドスタンドは軽量なアルミ製です。車輌重量分だけの強度しか与えられていないため乗車したまま使ったり、自動的跳ね上げで使い続けるといずれ折れてしまうほどです。
電装品はわずか 180W の発電機と 12V7Ah の MF バッテリーで軽量化され、配線は Can-Bus を使わずに従来の方法を採用しています。ヘッドライトは上下とも 35W バルブを使用し、テールランプには LED が装備され、重量と電気の消費量を減らしています。なお、メーターは回転計こそ付いていませんが、トリップメーター2つ、オドメーター、速度計、平均速度2つ、ストップウォッチ2つ、走行時間計、時計、ラップタイマー、最高速度表示警告と多機能なタイプが装着されています。
フレームでの特徴は、スイングアームピポットとスプロケットを同軸にすることにより、エンジン位置をより後方にセットでき、またリアホイルがどの位置にあってもドライブチェーンの張りが一定に保たれるというメリットを確保しています。
サスペンションは Marzocchi 製 45mm 径でストローク 300mm の調整式倒立フロントフォークとリアホイルトラベル 320mm を確保する Öhlins 製ストラットを装備しています。タイヤは前後共に公道走行も可能なオフロードタイヤが装着されていました。あまりにもオフロード指向が強いタイヤのため、舗装路ではグリップに注意する必要がありました。
さらに特筆すべき点は、ハンドルロックは付いていますが、イグニッションキーはありません。エンジンがかからないようにするためにはキルスイッチを OFF にするだけです。
とても小型のメーター
公道使用も考慮
必要最小限
当時のカタログを見てみよう!
オフロードをダイナミックに駆け抜けるイメージ
当然ながら公道走行シーンは一切無し
中古車選びの注意点
注意点というより心構えの問題
レーサーを公道でも使いたいなら…
この車輌を検討する際は、車輌の状態を気にすることは当然ながら、それよりも前に「公道も走行できる競技車輌」を選んでよいのかを十分気に掛ける必要があります。1~3速まではアッと言う間にエンジンがリミットまで回り切ってしまい、前後 300mm 以上もストロークがあるサスペンションは、一般舗装路では無用の長物になってしまうことがあります。
基本が競技車輌ですから、耐久性は数十時間保てば十分で、その度に整備をおこなうことができるかどうかも重要なカギとなります。イグニッションスイッチ(キー)は装備されておりませんし、フロントブレーキディスクの厚さは3mmしかないので、絶えず摩耗とクラックに気をつける必要があります。エンジン始動はセルモーターなので7Ahの小さなバッテリーの状態にも気を配ることが大切です。なお、サイドスタンドは想定外の使用で曲がり易く、折れ易くもあるので注意が必要です。
- ● 可能な限りどのような使い方をされていたのかの説明を受けられる車輌が安心です。
- ● G450X も認定中古車対象車輌のため、できるだけその保証付車輌を選ぶと良いでしょう。
- ● メーターは多機能タイプなので、全ての表示が適切なのかを確認する。
- ● メーター内の電池が消耗すると各表示が安定しません。おかしな表示の時は交換が必要です。
- ● ブレーキディスクの厚さは新品時でフロント3mm、リア4mmなので、特にフロントの摩耗状態を確認する。
- ● バッテリーは7Ahまたは5Ahの小容量タイプが基本なので、状態の良し悪しに気をつける。
- ● 舗装された公道での快適な車輌とは大きく異なるので、それなりの心構えが重要です。
1960年生まれ、91年式R100GSパリダカール所有。1983年に福田モーター商会に入社して以来、BMWに携わり続けている。毎年100台以上のBMWの下取り査定や中古車販売に携わっていて経験豊富。
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