R100RS(1976-)
- 掲載日/2010年01月28日【BMWバイク中古車ガイド】
R100RSの歴史など
BMW Motorard の代名詞的存在
後継機の登場で人気は高騰
数あるBMWモーターサイクルの中でも R100RS の名前を知らない方は少ないと思います。今回は R100RS の中でも2本サス時代の少し古いモデルのご紹介となります。
R100RS は、1976年にスポークホイール仕様で197万にて発売されたそうです。その頃はまだ私は学生をしていたので詳しいことはわかりません。福田モータースヘ入社した時は K100 シリーズが世に出る少し前で、赤坂のショールームには 210万円のスモークグレーの R100RS が展示されていました。ご紹介するのはその頃以降のモデルとなりますことをご了承ください。
1983年当時はサイドバッグが装備された状態で 210万円、スモークグレー、パールホワイト、アラスカブルーの3色が販売されていました。1984年の生産終了からパールホワイト、スモークグレー、アラスカブルーの順でメーカーと弊社の在庫が無くなっていったのを記憶しています。
当時の新車梱包時には、車輌一面に腐食を抑える油が塗られており、パールホワイトの車両はその油の影響で、所々黄色いシミ出ていることがあり、部品を交換したり再塗装したりで結構たいへんでした。そして、当時のローンは今とは比較にならないほど高金利でしたが、在庫が減るにしたがいそのローンを使って注文の数が増えていったのが思い出されます。
1985年頃には在庫が無くなり、モノサス仕様の R100RS が発売されるまでは新車・中古車共に R100RS を探されている方が多く、モノサス発売後も数年間は2本サス希望者のお名前が途切れなかったほどです。年数が経てば経つほど状態の良い車輌が減ってゆくのはどうすることも出来ませんが、修理・整備して気持ち良く走られるようにしたこのモデルは、必ずお客様が付いてくれる、販売店にとってもありがたい車輌のひとつでもあります。
R100RSの特徴
独自性に溢れたスタイリングと機能
個性が魅力のモーターサイクル
R100RS 最大の特徴はそのスタイル、特にカウリングの形状にあることは言うまでもないことです。R100RS が発売された当時は、そもそも“フルカウル”というものが無く、そんな中登場した R100RS は奇異な目で見られ、かなり“不評”だったそうです。
当時のカタログには風洞実験中の写真が載っていて、そうまでして完成させたカウルにメーカーはとても自信を持っていたのでしょう。RS にまたがるとライダーはほぼそのカウルの中に納まってしまい、前面から見るとヘルメットの上部だけが出ているという姿勢になります。頭から足先まで完全に隠れてしまうので、風や雨に対しても完璧な対策となっています。しかし、その完璧なカウルは暑い夏には最大の脅威になることは誰の目にも明らかです。
ガソリンタンクは24L容量の鉄製で、ガソリンコックは左右に付いています。タンクの中は錆び止めのため茶色の保護膜があり、初めて見た方はすでに錆びていると錯覚してしまうほどです。
エンジンは OHV 水平対向二気筒の 1000cc で70馬力です。1987年からの同型エンジンと比較すると馬力で10馬力ほど勝っていますが、低回転でのトルク感は1987年以降の方が優れているようです。
横に張り出したシリンダヘッドからの機械音は比較的耳に付くのですが、それよりも排気音、特にアクセルを戻した時の少しかすれたような音は独特で、とてもいい音色です。
ブレーキは全てディスク・ブレーキと思われがちですが、生産初期のモデルはスポーク・ホイールに前がディスク、後ろがドラム・ブレーキだったそうです。私は見たことがありません。当時のメーカーの発表を見ると、キャスト・ホイールは1977年から、リア・ディスク・ブレーキは1978年、メッキ処理が施されたシリンダーが1981年から、とあります。
キャスト・ホイールは、今でこそチューブレス・タイヤの使用が当たり前ですが、RSのキャスト・ホイールはチューブの使用が前提となります。たまにチューブレスで使用されている方もいるようですが、安全性に重大な影響があるので、止めたほうが良いです。
リア・スイングアームはシャフト・ドライブの癖である“トルク・リアクション”が遠慮なく出る一般的なタイプです。加速するときは車体が上がり、エンジン・ブレーキをかけると下がるという、シャフト・ドライブ車特有の挙動です。兵になると旋回中に、アクセルを開けることによってバンク角を稼ぐという技術も使いこなすそうです。スポーツ車と言っても前後サスペンションは快適性を考慮したもので比較的“柔らかく”設定されているため、そのような乗り方ができるのだろうと思います。
コックピット
BMW 特有の低重心
ライダーのために
当時のカタログを見てみよう!
革新的なエアロダイナミクス設計による
モーターサイクル史上初のフルカウル装備
中古車選びの注意点
部品供給は現在でもほとんど問題なし
消耗パーツは全交換がマスト
探せば比較的手に入れ易い車輌でが、経過年数は20年以上なのでとにかく“基本”がしっかりしているものを見つける必要があります。細部の状態は二の次という感じです。フレームは、フロント・フォークがフレームに接合する“フレームヘッド”と呼ばれる部分の、左右補強プレートに歪みが無いこと。前部が損傷した事故車などは、フレーム修正をしても補強プレートの歪みまでは修正出来るものではありません。フレームもまだ部品で取り寄せることが可能ですが、全バラにしないと交換出来ないのでたいへんです。中にはフレーム番号の打刻がRSと打たれていてもカウルが無かったり、RT打刻のフレームなのにRSのカウルが付いていることも考えられます。フレーム打刻は年式によって7桁の数字だけという車輌もあります。
外装品の塗装済み部品以外の部品は、まだほとんどが入手可能です。これだけを考えても BMW というメーカーは“偉い”と思います。全ての部品が自社生産でないにもかかわらず、ほとんどが揃ってしまうということは BMW だけの努力だけでなく、その部品の供給元もすごい仕事をしているのだと感心するばかりです。「古いものは良い」という単純なものではなく、造ったものに対する BMW の意気込みや自信が、部品供給の一面からもうかがい知ることができます。新しいものは全ての面で古いものを上回ると思いますが、それでも古いものを切り捨てず、愚直なまでに支援の姿勢を崩さない BMW のもの造りと製品への取り組みは痛快そのものです(少しゴマをすり過ぎました)。
- ● 車輌後部から見て、カウルと車体中心線のずれを確認し、カウル・ステーの状態を判断します。
- ● オイル漏れはガスケットの問題だけでなく、部品自体の歪みが原因になっていることもあります。
- ● 配線関係はすでに使用限界を超えて硬化しているはずです。余裕のあるときに配線関係を交換してください。
- ● ブレーキ・ディスクは前後とも磨耗し易く、特に後ろは文字通り“波紋”のように波打っているものがほとんどです。
- ● 速度計、回転計は経年変化により指示が狂っていることがよくあるので、修正が必要になることがあります。
- ● タンク内の錆びはキャップからは見にくいので、キャブレター・フロート・ボウルを外して確認してください。
- ● タンク内の錆びは、多少であれば、水気を入れないことで拡散を予防出来るのでそのままか、フィルターを付けて対応します。
- ● バッテリーはいつも元気なものを載せ、一ヶ月乗らなければ必ず一日充電するのがオーナーの勤めになります。
- ● タイヤ・チューブは安価なので、タイヤ交換と共に交換して空気抜けに対応してください。
- ● プラグキャップ近くの鋭角に曲がっているプラグ・コードがヒビ割れているものは、即刻交換が必要です。
- ● シート・ベースは鉄製部品なので、腐食がひどい場合は早めに錆び止めと塗装をおこなってください。
- ● サイレンサーは二箇所ある溶接部分の内部から錆びます。不自然に膨れている場合は腐食が始まっています。
- ● 事故車でなくてもハンドル振れや高速走行時のヨーイングは必ず発生します。バッグ装着時はなおさらです。
- ● センタースタンド使用時に、重い・軽いがあります。重過ぎる時はスタンドを曲げ直して軽くすることもあるそうです。サイドスタンドは根元の“コの字”部分が徐々に開いて車体の傾きが大きくなり、最後は折れて終わります。
1960年生まれ、91年式R100GSパリダカール所有。1983年に福田モーター商会に入社して以来、BMWに携わり続けている。毎年100台以上のBMWの下取り査定や中古車販売に携わっていて経験豊富。
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