R100RS(1987-)
- 掲載日/2009年08月26日【BMWバイク中古車ガイド】
R100RSの歴史など
生産台数控えめのモノサス仕様
その高い人気は日本限定?
今回ご紹介するモデルは、BMWと言えばこのモデルを想像するぐらい、BMWモーターサイクルの代名詞にもなっていたR100RSです。このモデルにはツインサスの前期とモノサスの後期に分かれますが、後期モデルに絞ってご説明いたします。
モノサス仕様のR80発売より遅れることまる2年の1987年、パールホワイトとレッド/ブラックの2色にて発売となりました。当時の新車価格は149万円、その後3%消費税の導入に合わせて138万円、そして145万円、150万円、特別色のスモークグレーは3万円高、最終仕様のツートーンは152万円、その他クラシカルブラックの限定車も販売されていました。
モデル末期の1991年には小豆色や緑色等の奇抜なカラーリングも、わずかですが販売されています。90年代になると、車輌のパフォーマンスという点では日本車に遠く及ばないモデルになっていましたが「一度はR100RS」というお客様に支えられ、1987年からほぼ最終販売の1995年頃までコンスタントに販売されていました。今でもR100RSのご要望は多く「一度はR100RS」の根強いファン層に支えられています。販売店側にしても必ず販売できるモデルなので、コストをかけてしっかり整備してある車輌を多く見かけます。ちなみに、モノサス仕様のR80RTとR100RTは39,000台強生産。対してモノサス仕様のR100RSはわずか6,081台というメーカー公表の数字があります。諸外国ではBMWといえばR100RTであってR100RSではないのです。
R100RSの特徴
巨大なフェアリングに包まれる快適性
シンプルで味のあるつくりが魅力
モノサス仕様のR100RSの基本構成は、同年代のR65・R80・R100RTとほぼ同じです。フレーム、前後サスペンション、前後ホイール、燃料タンク、シート、灯火類、ペダルやレバー、オプション部品等は、色が違っていたとしても全く同一品か互換性のあるものです。ただし、ファイナルケース内のギア比がモデルにより異なり、それによって外観は同じでもスピードメーターはモデルごとに違っています。
R100RSの最大の特徴は、フェアリングの形状とその大きさにあります。ライディング・ポジションを正面から見ると、ヘルメットのシールドから上だけが露出しており、それ以外は全てフェアリングの中に納まってしまいます。新車販売当時のうたい文句は「高速連続走行時でも快適です。」でした。
エンジンは難しい機構が全く無いシンプルな構成で、基本的な知識があれば多くの点検整備がオーナーご自身で行えるほど。そのエンジンのパワーはわずか60馬力と低性能ですが、負圧式キャブレターとの相性が良く、歩くぐらいの速度から150km/hまでは普通に使用でき、その気になれば実測で170km/hちょっとまでは何とか出るはずです。
リアサスペンションはモノレバーという、シャフトドライブの癖がそのまま出る方式を採用していて、チェーンやベルトドライブには無い、独特な味わいが残っています。フェアリングの次に大きな特徴としては、25A開放型バッテリーの存在があります。軽自動車に使用されているものとほぼ同じ容量で、他のモーターサイクルにこれが使用されているのは、まず目にすることがありません。
一世を風靡したフェアリング
コックピットは別世界
機能性と快適性を両立
当時のカタログを見てみよう!
市販車で初めてエアロダイナミクスの概念を投入
後期型は環境性能も配慮して進化を遂げた
中古車選びの注意点
壊れやすい部分はココ!
修理・交換は意外と簡単
OHVシリーズの中で比較的壊れやすい部品に「ダイオードボード」という電装品があります(四角い部品)。エンジンのフロントカバーを外すと上部にある、タバコの箱よりも少し大きめの部品です。昔のトランジスタラジオのようなダイオードやコンデンサー、抵抗などで構成されているものですが、密閉されたエンジン内に装着されているので、時として壊れます。壊れるとバッテリーへの充電が止まり、バッテリーに蓄電されている分だけは走行可能で、蓄電分が無くなった時点でエンジンが止まります。それ故いつ壊れたか確認できない時もありますが、メーター内のチャージランプがいつもと違う光り方をしていたら要注意です。比較的簡単に交換ができる部品です。
ダイオードボードに次いで壊れる危険がある電装品には、セルモーター、イグニッションコイル、発電機があります。セルモーターは年式によりボッシュ製とバレオ製があり、バレオ製が時として壊れることがあります。それでもセルとしての性能はバレオ製の方が格段に上。もしセルモーターが壊れたら、新品へ交換する前に、修理した方が良いのか、交換した方が良いのか、修理店にご確認下さい。新品は同じ事が起こる可能性がありますが、修理したものはほとんど同じ故障は発生しません。それに新品よりも少しはお財布にも環境にも優しいはず。アイドリングや高回転時にエンジンフィールがばらつく時は、イグニッションコイル、充電が弱い、または発電していない時は最後に発電機を疑うと良いでしょう。
- ● 重要なフェアリングの状態は裏から見るとひび割れを発見しやすい。
- ● セルモーター使用時の異音は早めのオーバーホールが安上がり。
- ● 50~80km/hぐらいでのエンジンブレーキ使用時と140km/h以上ではハンドル振れが発生しやすい。
- ● リアホイール内蔵のブレーキドラムは意外と早く使用限界を超えますが、外見上判断出来ません。
- ● リアブレーキ用ロッドに使用されている蝶ネジの締め込み位置で、ある程度ブレーキドラムの磨耗を判断します。
- ● 燃料タンクは鉄製なので、コーティングがしっかりしているBMWと言えども錆びることがあります。
- ● 錆の発生はタンクキャップのねじ込み部分の状態である程度判断することが可能です。
- ● 錆やごみ等でキャブレターからガソリンが漏れることが多い時は、ガソリンフィルターをホースに付けます。
- ● フレームヘッドに付く平面の補強版のようなものに歪みがある場合は、フロント周りの事故があったと判断します。
- ● シートの上から見て、左右のステップとエンジンシリンダーが同一線上になくても事故車ではないのでご安心下さい。
- ● 新車時のクラッチレバーの引きは250ccのミッション車程度。使用距離と使い方で徐々に重くなってきます。
- ● 外装品で塗装された部品以外は今でもほぼ全て普通に入手可能。これこそがBMWのユーザーサービスです。
1960年生まれ、91年式R100GSパリダカール所有。1983年に福田モーター商会に入社して以来、BMWに携わり続けている。毎年100台以上のBMWの下取り査定や中古車販売に携わっていて経験豊富。
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