R80(1985-)
- 掲載日/2009年01月31日【BMWバイク中古車ガイド】
R80の歴史など
時代の大きな変遷期に登場した
ツウ好みのベーシックモデル
今回ご紹介するのは、片持ち式スイングアーム(モノレバー)を備えたR80です。1984年に生産が開始されました。日本での発売は1985年春、新世代のK100が1983年に、K100RS 2バルブが1984年に生産開始となり、Rシリーズの終焉がまことしやかにささやかれていた時のことでした。
まだ消費税が無かった時代で、発売当初の価格は134万円。その後1987年には117万円、3%消費税施行の1989年4月からは104万円、1990年5月からは109万円となり、1995年に生産終了を迎えました。
このモノレバーR80とほぼ同時期に、まずお目にかかれないR80RT(ツアラータイプ)も発売されていました。R80の発売当時、BMWといえばRSで、そこへきてカウル無しの、今で言うネイキッドタイプはいまひとつの販売状況でした。それでも210万円のR100RSと比較すれば76万円もの開きがあり、巨大なカウルを善しとしない、当時のベテランライダーにとっては魅力あるモデルだったようです。ちなみにモノレバーのR100RSは1987年から149万円での発売です。
80は最終販売から10年以上経過しているモデルなので、今このモデルを手に入れようとすると、あれこれ選びながらの検討は難しい状況です。メーカー生産は11年で14000台弱。ただし店頭に並ぶ中古車の価格は、40万円台から60万円台がほとんどで、稀に極上の車両が出ると80万円ほどの値札が付くこともあるようです。
R80の特徴
必要十分なスペックを備えた
シンプルさが最大の魅力
R80の最大の特徴は、なんと言ってもシンプルの一語に尽きると思います。最小限の装備で、色々と装備されたモデルとは違った独特の個性があります。掲載の画像には純正オプションのコックピットカウル(R90S、R100S/CSと同形状)が装着されています。車体の基本構成は、皆さんよくご存知のR100RSと同じです。エンジンは50hpを6500rpmで発揮する水平対向2気筒。とても高性能エンジンとは言えませんが、実際は必要にして十分の性能で、渋滞のノロノロ走行から140km/hの高速走行、限界に挑戦すれば180km/hを少し切るくらいまでは頑張ってくれます。ツウの方からは「R100系エンジンよりも滑らかに回る」と評価されています。
細部を見ると、サスペンションはフロントが一般的なテレスコピック、リアがモノレバー&片持ち式スイングアームで、リアショックにプリロードの調整機構があるだけのシンプルな構成です。ガソリンタンクは容量22Lのスチール製で、ガソリンコックが左右にある、今となっては珍しくなった感のあるタイプです。バッテリーは軽自動車とほぼ同じ大きさの開放型25Aを使っています。前輪は90/90-18、後輪は120/90-18という細身のバイアス・チューブレスタイプを標準装備。メーターは速度計と回転計、そして5つの表示灯だけという構成です。日本仕様では低めで幅の狭いハンドルが標準ですが、RTタイプのハンドルが装着された別仕様もあります。また、フロントブレーキの基本構成は、90年モデルまでがWディスク仕様、91年モデルからは欧州仕様と同じ、大径のシングルディスクと大型キャリパーに仕様変更されています。パイプ式のエンジンガード、サイドバッグ用ステーは標準装備、日本語取扱説明書と豪華な車載工具はうれしい装備品でした。
シンプルさが際立つエンジン
コンパートメントは収納も良好
年代を見分ける目安に
当時のカタログを見てみよう!
一切の贅肉をそぎ落とした
ベーシックモデルとして登場
中古車選びの注意点
整備性バツグンの優良モデル
修理すれば長く付き合える
今回はエンジン内部の注意点ついてご紹介します。OHVエンジンの整備性は賞賛に値します。エンジンを画像の状態にまで作業する場合、シリンダーを外すよりもエキゾーストパイプを外すほうが、以外にも時間がかかります。83年以降のエンジンの場合、バルブを支えている、円筒形状のバルブガイドと呼ばれる部品が磨耗している場合が見受けられます。クリアランスが規定値を大きく違っていても、体感できるほどの出力減少や異音が無いので放置されることがほとんどです。新車時でもオイル消費量は多く、磨耗していてもその差はほとんどありません。ただし、特製のガイドに交換するとオイル消費量が激減し、気分的には新車以上のものになります。
OHVシリーズのセルモーターはよく壊れると言われ続けていますが、ワンオーナーで何度も同じ箇所が壊れ続けるということはありません。初期モデルはドイツ製のボッシュ社製が使われていて、これはほとんど壊れませんでした。ただし、少しでもバッテリーの電圧が下がるとエンジンを始動させることができません。途中からフランス製のバレオ社製に代わり、少し弱ったバッテリーでもエンジンは始動させるようになりました。ただし、たまに機能しなくなることがあります。磁石が剥がれたり、断線したり、ギアの飛込みが悪くなったりと色々です。そのような時は迷わず、交換ではなく修理して下さい。できる職人さんが修理すれば同じ箇所はまず壊れません。交換だけが修理ではないと考えさせられる部品です。
- ● BMWのホイールは強打したときに割れないよう柔軟性を持たせていますので、歪みに注意する必要があります。
- ● リアホイールのブレーキドラムは、遅くても数万キロでメーカー指定の使用限界を超えます。
- ● 車体全体の振れやハンドルの振れは、事故車でなくても一定の条件下で必ず発生します。
- ● ガソリンタンク内のわずかな錆びは、タンクキャップからのぞいても見えません。キャブ側で確認します。
- ● ミッションケースから出ているスピードメーターワイヤーのゴムキャップが劣化していると水が入ります。
- ● セルモーター使用時のギア鳴りのような音が大きいときは、早めにオーバーホールしたほうが低コストです。
- ● サイドスタンドは自動的に戻ります。加工して戻らないようにできますが、キルスイッチが無いので要注意。
- ● エンジンやミッションのオイルにじみは問題ありません。数日置いて垂れてくるようになっても、修理すればO.K.です。
- ● 前後タイヤは車体との相性がありますので、BMWディーラーにご相談ください。
- ● エンジンガードは転倒時に曲がるようにできています。曲がっていたら足で蹴飛ばして元に戻してください!
1960年生まれ、91年式R100GSパリダカール所有。1983年に福田モーター商会に入社して以来、BMWに携わり続けている。毎年100台以上のBMWの下取り査定や中古車販売に携わっていて経験豊富。
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