VIRGIN BMW | 空冷大排気量エンジンのメンテナンスポイント R259系ボクサー基礎メンテ

空冷大排気量エンジンのメンテナンスポイント

  • 掲載日/2010年10月25日【R259系ボクサー基礎メンテ】
  • このコンテンツは BMW BIKES Vol.43 掲載の記事を再編集したものです。
    文・写真/ BMW BIKES  構成 / VIRGIN BMW.com

あと10年、10万キロ
乗り続けるために。

R259系ボクサーが登場したのは1993年の R1100RS から。旧OHVボクサーとは全くベツモノの、新世代 BMW のファーストモデルだ。

ハイカムシャフトコントロール、4バルブ、テレレバーサスペンション、ABS システム、エンジン本体が強度メンバーとなってフレーム構造を持たないという発想など、現行ボクサーの礎となったその中身は、今でも十分に走りを愉しませてくれる、とっても“お得な BMW ”と言ってもいい。

しかし10年以上も経てば、車体各部、消耗パーツの経年劣化、疲弊、腐食など、故障が発生してもおかしくない状況だ。

きちんと整備を施せば、新車時の性能を復帰させることもできるR259系ボクサー。これからも長く乗り続けるために、ここでは実際の事例を交えつつ、メンテナンスあるいはチェックポイントを紹介していこう。

R259系ボクサー基礎メンテ【エンジン】編

R259系ボクサー基礎メンテの画像
ドナー車輌は、いまでも元気に走っている極初期型の R1100RS。オイル量チェックや定期的な交換、バルブクリアランスの調整など、管理が普通にできていれば基本的に頑丈。ただし、元々発熱量が大きい空冷大排気量エンジンのうえに、冷却は走行風に頼っている。要するに走らなければ冷えない。絶対に、エンジン掛けっぱなしで長時間放置しないこと。油温が安全マージンを超えて上昇する。オーバーヒートぐらいならまだいいが、車両火災の危険性もありうる。
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エンジンオイル。メーカー推奨は 20w-50 の鉱物性オイルで相性もいいが、ある程度距離を走ってなじみがついたエンジンならば、化学合成オイルでもかまわない。全ての性能が鉱物性より上だ。スターターモーターへの負担を減らして始動性を向上させるため、冬季は粘度が低め(低温でもやわらかい)オイルを使う手もある。
R259系ボクサー基礎メンテの画像
オイルレベルグラスは、外周部のゴムの弾力によってクランクケースにはめこまれているだけだ。古くなるとゴムが硬化して抜ける可能性がある。抜ければその場で走行不能だ。適時交換しておきたい部品のひとつだ。このバイクはオイル漏れしていたので交換した。
R259系ボクサー基礎メンテの画像
オイル量の点検は、エンジン暖機(オイルクーラーが熱い状態)状態で、停止後5分以上待ってから。もちろんバイクは直立状態。油面がレベルグラスの外周赤丸の範囲であること。
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最初の数年を乗り切れば、異例なほどオイル漏れの少ないエンジンだが、稀にヘッドガスケットから漏れることがある。ガスケットの縮みやスタッドボルトの伸びによるトルク不足が原因だ。漏れを発見しても、軽微ならば様子見でもかまわないが、そうでなければ交換とともに、後述するヘッド周りのオーバーホールを施せばいいだろう。
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バルブクリアランスとロッカーアームのスラストクリアランスは、5,000~10,000キロごとに調整する。ヘッドカバーガスケットの交換は適時。
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シリンダーヘッドオーバーホールの例。エンジン不調で入庫。圧縮を測ってみると、片側が極端に低い。
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ヘッドを降ろしてみる。2Vボクサー程ではないが、さほど手間はかからない。
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燃焼室にはすごい量のカーボンが堆積している。
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バルブはすべて全閉状態にして、それぞれのポートからパーツクリーナーを吹き付ける。一箇所素通しのバルブがあった。
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バルブ(排気側)を外すと、ヘッドと密着するべき面にもカーボンが堆積している。
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ヘッド側のバルブシート。黒い部分が排気ガスの通り道で、バルブが閉じきっていないことがわかる。剥離した大粒のカーボンを噛み込んだと思われる。
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カーボンをすべて掃除し、バルブの摺り合わせで新品同様となった。
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これはトラブルの例。バルブの傘が一部焼損している。同じように排気バルブにカーボンが噛み、バルブの熱がヘッド側に逃げなくなり、局地的な異常燃焼が発生したと思われる。
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同じエンジンのもの。異常燃焼による油膜切れでピストンとシリンダーが焼きついてしまった。
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