佐々木 誠 (Motorrad Yokohama 店長)
- 掲載日/2008年09月21日【インタビュー】
ワークスカラーのHP2に一目惚れして
いまや北海道ツーリングの相棒に
今回ご紹介するのは神奈川県横浜市にあるMotorrad Yokohamaの店長、佐々木誠さん。同店は7月末にBMWオフロードモデルばかりを集めたGSショールームをオープンして注目を集めた。バイクだけではなく、コールマンのテントやシュラフといったアウトドア用品、GSユーザーに人気のツラーテック製品を展示販売するなど、BMWのオフロードモデルをより楽しむための提案を積極的に行っている。そんなスペシャルショップの原動力は、プライベートでもHP2エンデューロでオフロードツーリングを楽しむ佐々木さんのBMWライフ。BMW関連のオフロードイベントにはお客さんと共に必ず参加し、HP2エンデューロで四国や北海道へのロングツーリングもこなす。そんな佐々木さんにBMWオフロードモデルの魅力について伺った。
データに現れない
BMWの感覚性能
佐々木●確かに、燃料タンク容量が少ないとか防風効果がほとんどないといった点で、高速移動は他のBMWに比べると快適ではないかもしれません。でも、私のHP2にはキャリアやパニアケースがついていますから荷物の積載は楽でしたし、目的地のキャンプ場に着いて荷物を降ろして、近くの林道に走りに行くと、はやりHP2で良かったと思いました。それに、HP2エンデューロはその姿に惚れて買いましたから、細かい点はあまり気になりません。
佐々木●私がMotorrad Yokohamaの店長になった2005年の秋にHP2エンデューロは発表されたのですが、当時BMW Motorradモータースポーツチームが各国のレースで走らせていたワークスマシーンのカラーリングを見て「カッコいい! このワークスカラーのHP2に乗りたい!」と衝動的に思いました。それですぐに予約を入れ、私の車両が日本にやってきたのが翌年の冬。実はその間に足を怪我してしまい、しばらくバイクに乗れない時期がありました。それで、足が完治するまでの時間を利用して、しっかり憧れのワークスカラーにオールペンしてしまったというわけです。
佐々木●私はレーサーレプリカに憧れた世代です。最初に乗ったバイクがスズキのRG50Γで、その後もRM80、RMX250、RGV-Γを2台、RG400Γ、そしてTL1000Rと、レーサーレプリカとか今で言うスーパースポーツばかりに乗ってきました。子どもの頃は飛行機、中でも戦闘機が好きでパイロットになりたいと思っていたぐらいでした。戦闘機って無駄なものを削ぎ落とした機能美の固まりのようなものですよね。だからバイクも必要な機能だけを追求したレーサーレプリカ的なものに興味が沸くのかもしれません。
佐々木●確かに、HP2エンデューロが発表されるまではR1100Sを買おうと思っていたこともありました。ちょうどR1100Sボクサーカップレプリカの中古が店にあって、その当時のラインナップの中で一番レーシーなモデルだと思っていましたから。ただ、HP2エンデューロは発売前にBMWモータースポーツチームがレースに実戦投入していたモデルそのもの。「これぞまさしくBMWのレーサーレプリカだ!」と思ったのです。だから、HP2エンデューロといっても、私にとっては白に赤青のラインが入った2005年のワークスカラーでないとダメ。それで納車前からオールペンに踏み切ったのです。
佐々木●実は、HP2エンデューロが自分で所有した初めてのBMWなのです。高校生の頃から根っからのバイク好きで、もともとBMWの存在は知っていたのですが、「K1」のデザインを見て「何だ? このバイクは?」とか、ボクサーツインや直列四気筒のエンジンを見て「変わったエンジンだな」と思っていた程度。丸富オート販売に就職して国産車の営業を担当していた時も、お客さんから預かったR1100RTに触れて、「なんて巨大なバイクなんだ…」というぐらいの認識しか持っていませんでした。
佐々木●BMWのメカニックになって乗ったK100RSが最初ですね。代車として店にあったので、それを借り出して乗ってみました。最初は「重い」とか「オレのガンマより遅いぞ」という印象でした。でも、ほとんどのスピードを5速で走れてしまうオートマチック車的な感覚、そして取り回しこそ重いけれど、走り出すと軽いという、国産車的な感覚で捉えると不思議なバランスのバイクだと思いました。その後、R1150RTでテレレバーとフラットツインを初体験したのですが、それはもっと衝撃的でした。
佐々木●一番驚いたのは、今まで経験してきたバイクとは全く違う車体の挙動ですね。地上30cmくらいを飛んでいるような感覚を覚えました。左右に突き出たシリンダーもなんとなく翼のように思えましたし。さらに、RTの大きなカウルとスクリーンによる防風性能のおかげで風切音がまったく聞こえず、エンジン音だけが響く不思議な空間。そして、曲がろうと思ったらいつでも簡単にペタンと寝て曲がってしまうテレレバーのハンドリング。これには驚き、それ以来「BMWはカタログデータだけで判断してはいけないバイクですよ」とお客さんに説明するようになりました。
佐々木●よく、国産車をメーカー間で比較するときにカタログスペックを見ますが、BMWはそういった数値だけを見れば、大きいし、重いし、高い(笑)。でもカタログ上のスペックに現れない感覚性能、体感性能を備えていると思います。ライダーが走りに集中するにはどうすれば良いのか、そのためにどのようにバイクを作るべきか。それを追求しているのがBMWではないでしょうか。
GSシリーズの幅広い使い勝手は
クルマのSUVのような存在
佐々木●基本的にはオンロード車がメインですが、もともとオフロード車は好きだったんです。機会があればオフロード車を1台持ちたいと思っていたので当時 発売されたばかりのDR-Z400と迷いましたが、RMX250の方が戦闘的だったのでこちらを選びました。その後BMW担当に異動になり、その時メカニックだった頃の同僚に林道好きがいて、その彼に触発されてRMX250で林道に通うようになりました。オフロードを走ることにハマったのはこの頃からです。
佐々木●オンロードは、バイク自体の性能とかタイヤのグリップに助けられている部分が大きいと思います。だから、これだけ高性能なバイクが増えると、誰でもある程度のレベルで簡単に走ることができてしまいます。また、転倒などということは本当に極端な走りをしたときや限界を超えたときくらいしか起きませんよね。でも、オフロードはそういう攻めた走りをしなくても簡単に転んでしまう。オフロード走行には、「本来転ぶものを、いかに転ばないように走らせるか」という、2輪車の本質的な楽しみがあると思っています。
佐々木●HP2エンデューロに乗ってからは、こうしたオフロードの楽しみがより身近なものになった思います。納車からわずか2回目のツーリングがGSチャレンジというイベントだったのですが、そのスキルチャレンジという競技で私のようなヘッポコライダーでも予選3位に入ることができました。HP2エンデューロでオフロードを走るのも初めてでしたし、BMWでオフロードを走るのも初めて。それでも、以前に乗っていたRMX250よりもHP2エンデューロのほうが速く楽しく走れたのです。オフロードレーサーのような尖がった性能ではなく、初心者でもそれなりに楽しく走らせることができるHP2エンデューロの懐の深さが感じられた出来事です。
佐々木●きっとどんなレベルのライダーが乗ってもHP2エンデューロの良さを引き出して楽しむことができると思います。ただ個人的には、このバイクのオーナーである限りそれにふさわしい技量を持たなくてはと思っています。だから、ちゃんとライダートレーニングにも通っているんです。私が乗るHP2は、“ハイパフォーマンス”ではなくて、まだまだ“ヘッポコ”だと思っていますから(笑)。
佐々木●もちろんです。特にGSシリーズは単にバイクを運転するうえでの扱いやすさだけでなく、実用性という意味でも守備派がとても広いと思います。GSシリーズは外観こそオフロードバイク的なデザインですが、そのポジションはオンロードバイクとオフロードバイクのちょうど中間。快適なポジションでオンロードでも結構速い。イザとなったらオフロードにも行ける走破性を持ち、パニアケースやトップケース、タンデムシートを外せばそこも荷台になる積載性の良さも兼ね備えている。ツーリングバイクのあらゆる要素がまんべんなく詰まっているのがGSシリーズです。そういう意味ではもっともクロスオーバーなモデルであり、クルマで例えるならSUVでしょう。普段のセダン的な使い方にも耐えて、なおかつフィールドに入ればクロスカントリーモデル的な走破性があり、モノもいっぱい積めるから、無限の楽しみ方ができる。新しくオープンしたGSショールームでも、BMWオフロード系モデルの楽しみ方を積極的に提案できればと思っています。
丸富オート販売 Motorrad Yokohama
Interviewer Column
BMWディーラーの店長である佐々木さんは、バイク好きの少年がそのまま大人になったような雰囲気の持ち主だった。だから、HP2エンデューロを購入したときは、まさに一般のユーザーと同じワクワクする感覚を味わったという。今でも、「お客さんと接しているときは、ついつい商売抜きで一人のバイクフリークとして同じ視線で話をしてしまいます。ディーラーの店長としては、それではダメなのでしょうけどね」とも話してくれた。そんなバイクフリークの佐々木さんは、すでに発表されているG450Xの発売が待ち遠しくてたまらない様子。インタビュー終了後、「これは買っておかないとダメでしょう。あれこそまさしくレーサーですから」と、BMW好きのライダーの目に戻っていたのがとても印象的だった。(八百山ゆーすけ)
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