細沼 清治(ダッツ 取締役 関東地区統括部長)
- 掲載日/2007年09月14日【インタビュー】
オフロードに夢中になった20代
その経験が今に活きていきました
浜松、名古屋、横浜、所沢と、4拠点で展開するBMW正規ディーラー「ダッツ」。その中でもダッツ所沢、ダッツ横浜の店長を務めるのが、今回ご紹介する細沼 清治氏だ。関東近県で開催されるBMWのイベントでは欠かせない存在であり、BMWのワンメイクレース「ボクサートロフィー」には自らR1150GSなどを駆って走るなど、細沼氏はBMWの楽しさを自ら積極的に行動することで発信している。そんな細沼氏とBMWを結びつける絆について伺ってきた。
初めてBMWを手に入れたのは30代
30代からスタートしたBMWライフ
細沼●ダッツ所沢に勤め始めて現在8年目ですが、その前に勤務していたBMW正規ディーラーでも15年ほどBMWと関わっていました。二十歳の時にそのお店に入ったのが、私とBMWとの最初の接点です。16歳で免許を取ってから国産車にしか縁がなかった私にとって、BMWは見たこともない存在でした。当時でも200万円を超える価格のオートバイは、見るのも初めて、触るのも初めてと、私とは世界が違う乗り物でしたよ(笑)。
細沼●国産車はメーカーこそ違えどだいたい同じような構造をしていたので、BMWも同じ内燃機を積む乗り物として理解できるだろうと思っていました。でも、まったく違っていましたね。エンジンの出力がクラッチ、ミッションを通ってプロペラシャフトを回し、ファイナルドライブを介して後輪を回す、というシステムは、それまで自分が触ってきたオートバイになかったものでした。
細沼●その上、とにかく頑丈に作られている、というのが印象に残っていますね。整備士の免許を取るときに勉強したクルマと同じようなミッションケースの厚みだったり、ベアリングの大きさだったりするんです。車体周り、エンジン、ミッション、クラッチと、すべてが耐久性を重視して作られています。そういったところにBMWのポリシーを感じました。当時の国産車はとにかく“軽量”“ハイパワー”を追及していましたが、そういったことが逆に僕の中ではチープに見えてきたんですよ。「なぜ軽くしなくてはならないのだろう」、「なぜ丈夫にできないのだろう」とね。それまでに国産車の故障をたくさん見て、修理してきていただけに、BMWと比べると当時の国産車には少しがっかりしてしまったほどです。BMWが決して故障しないとは言いませんが、BMWの耐久性の良さを痛感しましたね。
細沼●BMWを触るようになって1年程で先輩のメカニックが辞めてしまい、一人で仕事を任されたんです。少しずつ学ぶなんていう余裕はありませんでしたね。もう必死で猛勉強ですよ。マニュアルのすべてを暗記するくらい熟読し、作業でわからないことはしょっちゅうBMWジャパンに電話して確認していました。最初の三年間くらいは講習にも欠かさず出ていましたね。
細沼●例えばミッションひとつをとってみても、国産車では“調整する”という感覚はありませんでした。ミッションを“組む”ということはあっても、二つのベアリングの間隔をシムで調整するというようなことは、ほとんどなかったと思います。もちろん、ある意味では国産車のほうが優秀かもしれませんね。だって、組み込めばきっちり数字が合うわけですから。BMWはベアリングのサイズの微妙な違いなのか、ケースの誤差なのか、とにかくベアリングを変えたらシムの調整をしなければならない。私にはどっちがいいのかわかりませんが、そこまでやるから、BMWは調子のいい状態が長く維持できるのかもしれませんね。
細沼●勤めはじめたばかりのとき、85年式の「R80」に乗ったのが初めてでしたね。リヤサスが片持ちになった初年度のモデルです。それほど強烈なインパクトというのはなかったのですが、鈍重な感じで、あまりきびきびした感じではありませんでした。ただ、サスペンションはしなやかなだったのを覚えていますが。当時の若者のニーズに合ったオートバイとは言えなかったんじゃないかな。だって、当時はRZ250やCBX400、VFR400と、スポーツバイク一色の時代でしたから。
細沼●最初に手に入れたのは4バルブの「K100RS」の中古車でした。仕事でBMWに接するようになって10年くらいは自分で乗ることはできなくて、30を過ぎてやっと手に入れることができたBMWです。ようやく自分で持つことができた、ちょっとした夢がかなった気分でしたよ(笑)。
細沼●当時でも特別パワーもなく、驚くほど速くもありませんでしたが、とにかく乗っていて疲れませんでしたね。街中でも楽しい、峠でも楽しい、よくできたオートバイでした。4年くらいしてから「R100GSパリダカ」を手に入れて、これは今でも乗っていますよ。あ、Kもどこかにあったかな(笑)。
細沼●20代の頃はオフロードをずっとやっていて、GSも欲しいモデルだったんです。毎月のようにモトクロスコースに通っていましたから。ただ、やっと手に入れたGSは小排気量のオフロードバイクに比べると曲がらないし、止まらない。最初はね。「これでどうやってオフロードを走れるの?」と思ったりもしましたね。でも、慣れていくうちにだんだんと走れるようになっていくんですよ。当時関東では有名な中津川林道に持っていっても、下りは苦労しましたが、上りは「CRM」なんかと同じような勢いで行けるようになったんです。そうすると、国産車を見つけると躍起になって追いかけたりもしましたね(笑)。オフロードモデルとして見ると高速道路も楽に走れるし、まさに“デュアルパーパス”モデルですよね。オフロード車としての性能は国産のオフ車に比べると劣るのでしょうが、デュアルパーパスとしての性能はGSの方が上だと思いました。
増えつつある“土系”のイベント
Gシリーズの登場も僕には嬉しい
細沼●19歳のときに筑波のライセンスを取って、一度だけ筑波の「BOTT」にドゥカティで出たことがありました。サーキットも嫌いじゃなかったんです。それ以来ロードレースとは縁がなかったのですが、ひょんなことから当時出たばかりのR1150GSが手に入り、それで久しぶりにレースに出ることになったんです。
細沼●ボクサートロフィーといえば、参加車両のほとんどがR1100Sでしたからね。R1100Sは当時BMWのラインアップの中で最もサーキット寄りのモデルでしたから、速くてもあたりまえですよね。85馬力のGSに対してSは98馬力。車重もSのほうが30kgくらい軽かったのかな。オフロード好き人間の私としては、GSでSに勝てたらちょっと面白いかなと思いませんか? でも実際は、残念ながらトップは取れませんでした(笑)。一番順位がよかった時で4位でしたね。
細沼●GSで7、8回出た後、R1150Rロックスターでも出ました。ABSは外したのですがインテグラルブレーキは外すことができず、ブレーキングでかなり苦労しました。フロントブレーキをかけるとすぐにリアがホッピングを始めちゃって。リアブレーキのパッドの当たり面を半分くらいに削ってもダメでした。その後、R1200GSが出たときにも一度だけ雨のもてぎのレースを走ったことがあります。もう3年くらいはレースから離れています。厄年だった時期があってしばらく走らない方がいいかな、と(笑)。
細沼●10年くらい前からBMWジャパンや首都圏のディーラーの人たちと、埼玉県中津川のキャンプ場でキャンプツーリングのイベントをやっていました。昨年からGSチャレンジが始まり、日程が近いためキャンプツーリングは開催できていませんが、こうしたオフロード系のイベントもメーカーで開催するようになったんだな、と感慨深いですね。
細沼●至れり尽せりの宿に泊まるツーリングも嫌いではないのですが、キャンプツーリングの面白さはまた格別です。一番自然を楽しめる旅ですからね。その楽しさを少しでも知ってもらえれば、という思いで始めました。GSチャレンジはGSシリーズを持っている人だけが楽しめるイベント。我々のやってきた中津川のキャンプはGSオーナーだけでなく、それ以外のモデルのオーナーも楽しめます。GSの試乗車を用意して、中津川林道をちょっと走るような企画も用意していました。ロードスターに乗っている人も、RTに乗っている人も、自分のバイクで参加して、さらにGSの楽しさにも触れてもらえるイベントでした。
細沼●そうかもしれませんね。僕の経験をもっと生かすとなると、林道だけではなくクローズドコースで思いっきり走る楽しさも伝えていきたいですね。6年位前にHPNのエンデューロウィークでスペインを一週間走ったことがあります。すごく楽しいイベントだった。日本でも首都圏ディーラーでは秋に「泥んこ祭り」というイベントをやっています。オフロードを楽しめるエリアを貸しきって、そこを自分のバイクで思いっきり楽しんでもらうことができます。最近ではGシリーズも登場しましたし、F800シリーズにGSが追加される、なんて噂もあります。個人的にはX650チャレンジに興味がありますし、X650motoもいいですよ。これからのBMWは“土系”モデルが俄然面白いので、オフの面白さをぜひ感じていただきたいですね。
株式会社ダッツ「ダッツ所沢」
Interviewer Column
僕の中での細沼さんといえば、ボクサートロフィーで当時出たばかりのR1150GSを豪快にバンクさせながら第1ヘアピンを駆け抜けていった姿が、強烈なインパクトとなって記憶に残っていた。普段、イベントなどでお見かけするとても物静かな様子からは想像できない走りとのギャップが、よりその印象を強くしていたのかもしれない。たまたま、ボクサートロフィーを走る他のBMWディーラーの店長の話になったときに、ちょっぴりコース上でのライバル!?と意識しているのか、「この人には負けないよー」と少年のような笑みを浮かべながら楽しそうに話す細沼さんを見て、ディーラーの店長という立場を超え、いちバイク好きとしての純粋なココロを感じたのだった。(八百山ゆーすけ)
- 【前の記事へ】
千葉 保男(K75S) - 【次の記事へ】
石神 達也・愛友子(R1200RT, F800S)
関連する記事
-
インタビュー
八木原 昇(モトパーク 前社長)
-
インタビュー
新里 克一(Moto Sound)
-
インタビュー
佐々木 誠 (Motorrad Yokohama 店長)
-
インタビュー
野崎 正博(AMC Tokyo 店長)
-
インタビュー
武内 理(A-big Motorrad 店長)
-
インタビュー
小久保 宏登(コクボモータース 店長)
-
インタビュー
佐々木 正嗣(ササキスポーツクラブ 代表)