原 美光(原サイクル 代表)
- 掲載日/2007年05月18日【インタビュー】
売るだけではなく
楽しみ方も提供したい
今回ご紹介するのは、埼玉県越谷市の「原サイクル」の代表、原 美光氏。 越谷市の旧国道4号線沿いに店舗を構える原サイクルは1947年に自転車店として創業し、今年で満60周年を迎える。原サイクルでは一般にはなかなか目にすることもない、コマ図を使ったツーリングを開催するなど、近隣のBMWディーラーとは一風変わったイベントが開催されている。以前からその話は聞いていて「面白いBMWの楽しみ方を提供しているな」と思っていた。今回インタビューにお邪魔して、なぜそのようなことを始めたのか、どんなBMWの魅力をお客さんに提供しようとしているのか、話を伺ってきた。
自分のBMWに永く乗りたいんだけど
みんなお客さんが持っていっちゃう(笑)
原●R100RSでした。これがとてもいいバイクで、その後新車で3台も買い換えたくらいです。もっとも“R100RSらしい”らしい黒の限定車(キャブのところがメッキになっている)や、紺シルバーの最終モデルにも乗っていました。ただ3台も買い換えたのは「好き」以外にも実は理由があるんですけれどね。どのバイクも乗り始めてしばらくすると、お客さんが「この車両が欲しい」といって持っていってしまうんです。今でもそうですが、私が乗るBMWは買ってしばらくすると、私はまだ乗りたいのにお客さんに持って行かれてしまいます(笑)。
原●私が乗っているバイクは「整備はキチっとされている」や「車両を傷めるような乗り方はしていない」ことをみんな知っていますからね。中古車として間違いないバイクだけに、みんな欲しがって持って行かれてしまうんです(笑)。それに「私から買う」ということで少しは安くなるわけです。ウチのお客さんとしては狙い目なんでしょうね。だから、しばらく乗ると「もうそろそろいいんじゃない?」と言われるんです。私としてはもっと長く乗りたんだけど、お客さんが許してくれないんです。ひどいでしょ(笑)。
原●R100ロードスターにしばらく乗ってから、R1100RTを2台乗りましたね。初代の薄いシルバーグリーンのと75周年の限定モデルですね。シルバーグリーンのRTはBMWの中では一番長く乗ったバイクかもしれません。オーディオやアマチュア無線機を付けていたバイクでしたから、手放すのはためらいましたね。ただ、それでも乗ったのは1万キロほどですが…。次のシルバーメタリックの75周年限定モデルもお気に入りだったんですが、これはすぐに持っていかれました(笑)。
原●“いいものに長く、大事に乗れる”ということがBMWの魅力でしょうね。大事にメンテナンスをしてやれば、いつまでも調子よく走ってくれます。また、今でこそ珍しくなくなりましたが、ABSや触媒などの装備を20年近く前から付けているのには常々感心してきました。乗り手の安全や地球環境のことを真剣に考えて作られているバイクなんです。そんなしっかりとした開発思想の上に作られたバイクなだけに、我々ライダーもそれに応えるような乗り方をしてあげるべきでしょう。「ABSがついているから急ブレーキも大丈夫」ではなく、万が一のときの装備ですから上品な運転を心がけて欲しい。ただ、私がそんなことを言わなくても、BMW乗りには、BMWにふさわしい上品な人が多いですけれどね。
原●BMWはとてもバランスの取れた素晴らしいバイクです。ただ、その良さを深く知ろうと思うと他メーカーのオートバイに乗った経験も必要かもしれません。最初からBMWに乗ってしまうと、その優秀さが当たり前になってしまい、ありがたみがわからなくなってしまう気がしますから。ABSやテレレバーが装備されているBMWでは当たり前のように、多少オーバースピードでコーナーに入ってもABSがついていればなんとかなってしまう。でもそれは一般のバイクでは当たり前のことじゃない。ABSやテレレバーが付いていない国産車だったりすると非常に危険なことです。1台目にBMWに乗ってしまうと、バイクに助けられている部分がわからなくなってしまう。だから、BMWに辿り着くまでは、いろいろなバイクに乗ってみて、それからBMWを選べばBMWの魅力をより深く知ることができるでしょう。
走る楽しさをどう知っていただこう…
そして生まれたのがコマ図ツーリング
原●そうです。もう会社は専務(豪志さん)に任せて、私はバイクの販売などはほとんどしていません。もちろん、今でもお客さんと話したり、接客したりするのは楽しいですよ。けれど、いつまでも私が表に出るわけには行きませんから。私ももうすぐ59歳になりますし、いつまでも“オヤジさん”ががんばってしまうと、後進がやりづらいでしょうし…。今の私の立場は難しいんですよ。仕事をやりすぎてはいけないし、やらないわけにもいかない。“そこそこ”のところがちょうどいい。今はできるだけ裏方に回って、お客さんたちがBMWを楽しめるサポートしたり、社員が働きやすい環境を作ることに専念したりすることが中心です。
原●店を覗いて「社長いるかー? 来たぞー」って私の顔を見ては帰っていく人はいてくれて嬉しいですね。ただ、少しずつ後進に仕事を引き継いでいかないといけないので仕事の話はナシです。私が営業したり、契約書を書いたりするとつい安くしてあげたくなってしまいますし(笑)。
原●私がメインでやっていた頃には「わがままクラブ」と称して温泉に行って宴会をするツーリングをしょっちゅうやっていました。現在は「ホライズン」というお客さんによるツーリングクラブがあります。お客さんがミーティングをして行き先を決め、月に1度ツーリングに行っています。お店でたくさんのバイクに毎日囲まれていますが、やっぱりバイクに乗って走らないとね。お客さんと一緒に走るのは毎月の楽しみです。ただ車両を販売するだけではなく、まだBMWに乗り始めて間もない人に「こういう風に楽しむともっと面白いよ」ということも楽しみながらお伝えできたら、と考えています。
原●「コマ図」を使ったツーリングは、2年ほど前にヨーロッパで行われたHP2の試乗会で専務が触発されたのがきっかけです。毎回、ツーリングの前に専務が実際にコースを走り、曲がり角周辺のコマ図を作成します。地図と言ってもA4の紙に2枚程度なのですが、ツーリング参加者はそれを元に走るんです。この発展版として、参加者には行き先を知らせずにコマ図だけを頼りに目的に向かう「ミステリーツーリング」というのもやっています。ほかにも、ライディング講習会を年に1、2回開催したり、万が一の時に役立つようにと、消防署に協力いただいて年1回応急処置の方法などを学ぶファーストエイド講習というものもやっています。
原●ウチには常連さんもたくさんいらっしゃいますが、最近はBMW初心者の方も増えてきました。そういう方の中には、忙しくてなかなかバイクのために時間が取ることができない人も多い。そのため、例えばツーリングに行くにしても「どこに行ったらいいんだろう?」と困っているようです。そういう方のためにも、いろいろな楽しいことを提供し、BMWに乗るきっかけを提供できればいいと思っています。お客さん同士で仲間を作っていける、自然と人が集まるお店にしていきたいですね。
株式会社原サイクル
Interviewer Column
原サイクルのある越谷は、日光街道の宿場として古くから栄えた街だ。そんな風情のある街に60年前からある原サイクル。地域に根ざした自転車店から発展したBMWディーラーだけに、お客さんとの距離感が近いお店なのだと思った。店内にはお客さん主体のツーリングクラブ「ホライズン」の棚があり、そこは原さんですら自由には触れないスペースなのだとか。お客さんがお店と深い関係を持ったディーラーなのである。こうしたお客さんとのいい関係は、三代目である豪志専務に引き継がれている。そんな専務が作る原サイクルの今後がとても楽しみとなった取材だった。(八百山ゆーすけ)
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