BMW Motorrad R1250GS /新型の可変バルブ機構を搭載したボクサーエンジンを装備した最新モデル
- 掲載日/2019年02月20日【試乗インプレ】
- 取材協力/BMW Motorrad 取材・写真・文/小松 男
BMW R1250GS(2018-) 試乗インプレッション
新型が出るたびに完成しつくしたと感じていても
さらにその先を行くBMWスピリットの塊
広報車を10日間借用し、市街地からワインディング、ダートまで様々なシーンでテストしてきた。その中でも400キロ程走行した日帰りツーリングではR1250GSの真価を感じることができたと言えよう。
一年で最も寒くなる大寒と立春に挟まれた2月初旬、朝4時台にR1250GSの新型ボクサーに火を入れて走り出した。大型で見やすいディスプレイの外気温計には-4℃と表示されていた。エンジンが冷えている際には6000回転手前からレッドゾーン表示とされ、温まると9000回転まで引き上げられる。このような細かい芸当はTFTカラーディスプレイが採用されるようになった昨今かなり広まった。
零下の中高速道路を抜けワインディングを通り、目的地である伊豆半島を目指した。R1250GSは終始安定した走行を見せる。特にエンジンは低速から粘り強くクラッチ操作をしなくともシフト操作可能なシフト・アシスタントの装備も相まってオートマチック感覚で走らせることができる。ボクサーエンジンが水冷となった最初のR1200GSが登場した際には、そのパワーの出方が大胆すぎてこれからGSが目指す方向性に疑問を持ったものだったが、イヤーモデルごとに細かい調整が施されたようで乗りやすくなっていった。
そこで登場したニューボクサーはそれをも凌駕するしなやかさとイージーコントロール性能を備えていたのだ。日本仕様では標準となるライディング・モード・プロは、ロード・レイン・ダイナミック・エンデューロ・エンデューロプロの5種類から選ぶことができる。路面の凍結などが見られた日の出前はレインモードで、その後外気温が5℃、10℃と上がるごとにロード、ダイナミックとモードを切り替えていった。
エンジン性能もさることながら、走行状況に応じてサスペンションの減衰力とプリロードを自動的に調整するダイナミックESAの完成度の高さも特筆すべきものがある。従来モデルよりもより自然に走行状況に応じたセッティングをしてくれ、例えば高速道路や直線をクルーズするような場面では、あたかも雲の上に乗っているかのような乗り心地を演出し、コーナーの続くワインディングを走り抜ける際にはしっかりとリアのトラクションを感じられるような踏ん張りを見せる。もちろん未舗装路に踏み入れば、ロングストロークのメリットを十分に発揮する設定となる。ツーリングを通じて、より一層快適さを得ながら走りのプレミアム度が増したことを体感することができた。街中で使うのもスタイリッシュだと思うが、やはりGSにはロングディスタンスやアドベンチャーなステージが似合う。
もはやこれ以上の改善の余地はないGS、
最終的にEVとなるのでは!?と予言する。
私はこれまで数台のBMWモトラッドを乗り継いできており、実は現在もR1100GSを所有している。1994年型なので今年で四半世紀を迎えるモデルだ。現役であり最新モデルと出かけても遜色のない走りを楽しめる。試乗してきた新型R1250GSに対する本音を、旧型オーナーとしての主観的な面と、対して客観的な面から書かせていただく。
GSはボクサーエンジンの進化の歴史そのものだ。R1100GSが登場した際にはロードスポーツとも張り合えるとサーキットを走る姿もよく見られたものだが、一方でオフロード性能はスポイルされていたし、その後軽量かつパワフルな水冷ボクサーとなると足まわりも同時にグレードアップしてゆきオフロード走破性も飛躍的に向上した。
その間にミドルクラスのF-GSが登場し、シングルエンジン、パラレルツインエンジンと心臓部を変更しながら、もうひとつのGSワールドを確立していったし、近年はR9TシリーズにもアーバンG/Sという派生モデルが生まれた。そのような中登場したR1250GSという存在は確かに歴代GSモデルの中にあって最良のものだとは思うが、他社のライバルモデルたちも熟成を重ねてきており、それらとの格段の差と言うものはもはや演出しきれていないようにも思えた。
ボクサーエンジンだからこそGSが良いと感じさせてくれる魅力、これこそが今後の課題となるのではなかろうか。とはいえ私はBMWモトラッドというブランドが作り上げるモーターサイクルが好きだ。まろやかながら力強くなったエンジンは、もはや一般的なスキルのライダーには過度なものだ。世界的に見ても環境問題に対して厳しい欧州で、GSという一大看板を使ってイノベーションするならば、パワートレーンのEV化というのも視野に入れているのではなかろうかと感じている。
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