BMW Motorrad K1600グランドアメリカ/極上の旅を約束する6気筒ツアラー
- 掲載日/2018年05月21日【試乗インプレ】
- 取材協力/BMW Motorrad 衣装協力/HYOD 取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一
BMWが作ったらこうなった
アメリカン風味の大陸横断ツアラー/K1600グランドアメリカ
最大出力118kW (160PS)、最大トルク175Nmを発生する新設計のコンパクトな水冷並列6気筒排気量1648ccエンジンを前傾させて低重心位置に搭載し、BMWきってのハイパフォーマンスグランドツアラーとして2012年にデビューしたK1600GT。それをベースにウインドスクリーンの大型化やローシート化、トップケースの装備と外装デザインの見直しなどにより、タンデムを含めた長距離移動での快適性をさらに高めたラグジュアリーツアラーがK1600GTLだ。そして、低くカットされたスクリーンやバーハンドルを装備するなど、K1600シリーズの中でも最もカジュアルな雰囲気が印象的なバガースタイルで2017年に衝撃デビューしたK1600Bをベースとし、GTL同様の電動ハイスクリーンとバックレスト付きのトップケースを標準装備して、さらにラグジュアリー度を高めたグランドツアラーが、シリーズ最新作となるGrand America(グランド・アメリカ)である。
BMW K1600 グランドアメリカ(2018-) 特徴
バガーをベース
快適性と実用性をアップ
独自の水平方向に前屈した水冷並列6気筒DOHC4バルブ1648ccエンジンを高剛性のアルミ製ダイヤモンドフレームに搭載したBMWの最高峰ツーリングセグメントであるK1600シリーズの最新作が、K1600 Grand Americaである。
一番の特徴はそのスタイリングだろう。ベースはK1600Bで、これは北米発のカスタムムーブメントである「バガー」スタイルをBMW流に解釈したモデルである。ちなみにバガーの特徴としては、車体のローダウンや簡素化されたカウル、トップケースを持たないサイドバッグだけのフラットなシルエットが挙げられる。一方、Grand Americaは大型スクリーンとトップケースを追加することで、流行りのバガースタイルに快適性と実用性と加味したモデルと言える。いわばK1600を主力ターゲットのアメリカ人好みに味付けしたグランドツアラーと言っていいだろう。
1500 rpmで最大トルクの70%に達する出力特性やボタンひとつで切り替えられる3種類(レイン、ロード、ダイナミック)の走行モード、前後連動ABSやDTC(トラコン)などの安全装備やパーキングなどで便利なセルモーターを利用した後進機能のリバースアシスト、デュオレバー式フロントサスペンションに電子制御サスペンションのダイナミックESAやキーレスライドなどのシステムも全シリーズ共通。ちなみにシート高はGTLや1600Bと共通の750㎜と低く抑えられている。また、坂道発進が容易なヒルスタートコントロール (HSC)や、クラッチ操作なしでギアチェンジ可能なギアシフトアシスト・プロなどのオプション装備も用意されている。
BMW K1600 グランドアメリカ(2018-) 試乗インプレッション
力強くマイルドな直6エンジンと
ふんわりした乗り心地が気持ちいい
BMWが大陸横断ツアラーを作ったらこうなる! というパフォーマンス感満載のモデルだ。K1600シリーズもいろいろ派生モデルが出てきたので一度整理すると、元祖のGTとその豪華版のGTLがヨーロピアンツアラー。そして、昨年登場したバガースタイルのBとその上級版のGrand Americaがアメリカンツアラーと大雑把に分けられる。 さて、そのGrand Americaだがまず見た目がいい。GT系が従来の正統的BMWらしい、いかにも高性能なスポーツモデルといった雰囲気だったのに対し、こちらは丸みのある大らかなデザイン。ほどよい緩さが全体から醸し出されていて親近感が湧く。「そんなに頑張って乗らなくてもいいよ」と言われている感じで気が楽だ。主に車体後半のデザインが違うだけなのだが、だいぶ印象が変わるものだ。
サウンドがまたいい。直列6気筒とあえて言いたいその音色は、まるでテナーとバリトンの混声合唱のような深みと広がりが耳に心地よい。パワーフィールも力強いのにマイルドで、ドカンとくる感じではなく、ファーッと滲み出てくるような上質感がある。排気量が1700cc近くもあるわけだから、その気になればメガスポーツ並みの加速もできるが、急かされずにジェントルにしっとりと走ることもできる。特にライディングモードを「レイン」にすると、スロットルの反応がより穏やかになって気疲れしないのがいい。そう思って個人的には多用していた。
車重はシリーズで最も重い358㎏ではあるが、それでも同クラスのGL1800やハーレーのCVOなどの最大級の大陸横断ツアラーの中では軽いほうだ。故に取り回しも比較的しやすく、シートも低めなので両足をべったり着きながらUターンでできるし、いざとなればそのままリバースアシストを使って乗ったまま切り返しもできる。これは便利だ。
走行中のハンドリングもその巨体イメージよりも軽快感がある。速度を上げていくと、分厚い空気の層を押し分けて進んでいくジャンボジェットのような安定感があり、乗り心地はふんわりとしている。メーカー担当者に聞くところによると、サスペンションの設定もGT系とは異なるようで、乗り心地重視のソフトセッティングになっているそうだ。ダイナミックESAを「クルーズ」モードにすると、さらにそれが際立つ。印象としてはフロントのデュオレバーでガッチリとした接地感を伝えつつ、リアのパラレバーでしなやかな追従性を演出しているようだ。
オプション装備のクイックシフターも特筆もので、シフトアップだけでなくダウンでもスムーズかつ節度を持って変速してくれる。特にダウン時は自動的に回転数を一瞬高めてくれるオートブリップ機能により、ほぼどんな回転域でもスムーズにノンクラッチでシフトダウンできるという素晴らしさだ。
標準装備のトップ&パニアケースの積載性も頼もしく、電動ハイスクリーンはパイプハンドル化されてアップライトな上体のままでも完璧な防風効果を発揮してくれる。ナビゲーション機能付きのオーディオシステムなども含め、上質な時間とともに極上の快適な旅を約束してくれる一台だ。
詳細写真
最大出力118kW (160PS)、最大トルク175Nmを発生する水冷並列6気筒DOHC4バルブ1648ccエンジンを搭載。スペックはK1600シリーズ共通となっている。通常のステップのほか、前方に足を伸ばせるフットボードを装備する。
ピッチングやロールに対してはヘッドライトユニットを動かすことで、ライトの光軸が進行方向を照らすアダプティブヘッドライトを採用。4輪のBMWでもお馴染みのリングライト形状のLED ポジションランプが特徴的。
ハンドルはK1600Bと同様のバータイプに変更されている。ポジション的にも上方かつ手前に引かれて、より上体が起きた楽な乗車姿勢がとれる。タンク容量は全シリーズ共通の26.5リットル。
750㎜の高さに抑えられたシートは跨りやすく足着き性も良好。ベースになった1600Bに比べてライダー側のシートストッパーも盛り上がった形状となりホールド性も向上。タンデム側はトップケース兼用の豪華なバックレスト付き。
トップケースから左右のパニアケースにかけて縁どられた、テールランプとウインカーが一体型となったデザインが斬新。ケース類はボディと一体型でデザインの一部となり、取り外しできないタイプとなっている。
K1600シリーズ共通の電子制御式ショックアブソーバー装備のデュオレバーとφ320㎜ダブルディスクブレーキを組み合わせたフロント足まわり。フロントのレバー操作にリアブレーキが連動するBMW独自のパーシャリーインテグラル方式のABSを標準を装備する。
キーでロック、レバーで簡単に開閉できるパニアケースは容量37リットルを確保。フラップのえぐりまで使えばディフューザー付きのジェットヘルが収納可能なスペースがある。
無段階で調整可能な電動スクリーンを装備。ベースモデルのK1600Bも電動タイプだが、形状をGTLと同タイプのデザインに大型化することで防風効果を大きく高めている。一番立てた状態にすると高速巡行でもほぼ無風だ。
高級4輪車のような豪華装備のコックピットもまたK1600シリーズの魅力。アナログ表示の速度計とタコメーターに挟まれた中央には、ライディングモードやESAの設定を表示するTFTカラー液晶タイプのマルチインフォメーションディスプレイを装備。メーター上部にはナビ画面が設置され、その周囲をオーディオのスピーカーが取り囲む。
SPECIFICATIONS – BMW K1600 Grand America(2018-)
価格(消費税込み) = 355万円
※表示価格は2018年5月現在
水冷並列6気筒排気量エンジンを搭載するグランドツアラー。北米向けのバガースタイルをBMW的に解釈したK1600Bをベースにさらにラグジュアリー化しているのが特徴。
■エンジン型式 =4ストローク 水冷並列6気筒DOHC4バルブ
■総排気量 =1,648cc
■ボア×ストローク =72 x 67.5mm
■最高出力 =118 kw (160PS) / 7,750 rpm
■最大トルク =175 Nm / 5,250 rpm
■トランスミッション =6速リターン
■サイズ =全長2,565mm× 全幅1000 ×全高1,560mm
■車両重量 =358kg
■シート高 =750mm
■ホイールベース =1,620mm
■タンク容量 =26.5リットル
■Fタイヤサイズ =120/70-17
■Rタイヤサイズ =190/55-17
関連する記事
-
モデルカタログ
K1600 GRAND AMERICA(2018-)
-
試乗インプレッション
R1200GSアドベンチャー(2010-)
-
試乗インプレッション
R1200RT(2010-)
-
試乗インプレッション
R1200GS(2010-)
-
特集記事
旅の王者GSアドベンチャーの魅力を考える
-
試乗インプレッション
HP2スポーツ リミテッドエディション(2010)
-
試乗インプレッション
R1200R(2011-) / R1200Rクラシック(2011-)