R1200R(2015-)
- 掲載日/2015年04月21日【試乗インプレ】
- 取材協力/BMW Motorrad Japan 取材・文/TOMO 写真/山下 剛
BMW とともに進化してきた
伝統のロードスター
アーバンスポーツ R1200R の元をたどると、1991年に登場した R100R というシンプルな構造のロードスターにたどり着く。その当時は、古いタイプの2バルブ OHV ボクサーエンジン全盛期。R100R もそれを搭載したモデルで、BMW としては装飾等が少なく、プライスも抑えられ、街中や近距離のツーリングでも気兼ねなく使えるように作られていた。
その後、フロントにテレレバーシステムが採用されたり、4バルブエンジンが登場したりと BMW とともにロードスターは進化した。2003年には R1150R ロックスターというアクティブなイメージのモデルが追加ラインナップ。それ以降、BMW のロードスターにはスポーティなモデルも用意されるようになっている。
ボクサーエンジン搭載のロードスターの車体レイアウトは、排気量 1,200cc&DOHC ヘッドになっても大きく変わることはなかったが、空水冷エンジンとなった 2015年、フロントにダイナミック ESA 付き倒立フォークを採用するなど、その様相を大きく変えた。
R1200Rの特徴
テレレバーに代えて
テレスコピック式フォークを採用
2015年3月に発売された新型 R1200R は、モデルチェンジというよりニューモデルと言えるほどの進化を果たした。エンジンは空水冷の DOHC で、R1200GS/R1200RT と同系列になった。そしてフロントのサスペンション方式をそれまでのテレレバーから一般的なテレスコピック式の倒立フォークに変更。これに伴って、フレームもステアリングヘッドまわりを大きく変更した。以前の R1200R とも、R1200GS/R1200RT とも異なる新設計である。
テレレバーには、過大なピッチンングやブレーキング時のノーズダイブを抑える能力があった。それを変更した理由は、セミアクティブとなった最新世代のダイナミック ESA(電子調整式サスペンション)の採用だ。これにより、テレスコピック式フロントフォークを使っても、同様の効果を得られるようになったという。実際の効果のほどは、後述の試乗インプレッションでお伝えしよう。
R1200Rの試乗インプレッション
イージーでパワフルな
空水冷ボクサーとダイナミック ESA
最初に乗った印象は、とにかく軽いということ。排気量相応のどっしりとしたボリュームは感じない。車格はそれなりにあるものの、まるで 250cc クラスのバイクのようだ。フワフワとしていて、さもすると接地感も忘れそうな軽さで騙されそう。それでいてパワフルだ。もちろん乗ったことはないが、西遊記に登場する『キン斗雲』という表現が思い浮かんだ。
92kw(125PS)の最高出力と 125Nm の最大トルクを発生させる排気量 1,169cc の空水冷水平対向2気筒エンジンがスーッとストレスなく吹け上がる。どこまでも乗っていこうとするスピードは、体が置いていかれそうなくらいなのに、乗り手をつい油断させてしまいそうな乗り心地の良さと滑らかさがある。
新型 R1200R の最大のトピックであるテレスコピック式フロントフォークとダイナミック ESA の組み合わせには、先に行われたメディア向け発表試乗会で多くのライダーが「ふつうのフロントフォークになって、自然に扱えるようになった」と言っていた。
私は日ごろ、テレレバーとよく似た構造のデュオレバーを採用する K1300R に乗っているため、以前の R1200R にまったく違和感がなかったから、かつての不自然さがわからない。しかし、新しい R1200R が自然にフットワークするのはよくわかる。
ワインディングでの細かな切り返しも、ヒラリヒラリと素直に軽く舞う。フワフワというと、バネが柔らかすぎるといった誤解を与えてしまいそうだが、地面からほんの少しだけ浮いたところを、スーッと流れていくリニアモーターカーみたいなイメージだ。少しばかり路面が荒れていてもそう感じるのは、やはりダイナミック ESA のおかげだろう。
これは S1000R や 2015年の S1000RR に装備されている DDC(ダイナミック・ダンピング・コントロール=電子制御セミアクティブサスペンション)と同じように、路面状態や加減速、リーン・アングル・センサー付き DTC(ダイナミック・トラクションコントロール)、ABS などの情報をもとに、状況を瞬時に判断して減衰調整を行うもの。
R1200GS のダイナミック ESA よりも DDC に近く、多くの情報をもとに減衰を変えてくれる。だから、凹凸を越えても硬く感じず、コーナリング中はビシッと決まる。ワンセッティングのままでも自動で減衰力を常に変化させてくれているから、日本仕様のローシートで長時間乗っても、お尻が痺れない。でもこのローシートはステップとの距離が近くて、長く乗っていると、私の場合はヒザが少しきつくなる。
また、この R1200R には『レイン』『ロード』の走行モードに加え、『ダイナミック』『ユーザー(カスタマイズ可能)』を合わせたライディングモード Pro を標準装備している。ダイナミック ESA も『ロード』と『ダイナミック』のダンパーセットにそれぞれ『一人乗り』『一人乗り+荷物』『ニ人乗り』のプリロード変更をかけ合わせられる。一台であれこれできて快適な “欲張りバイク” と言えそう。
軽くて気兼ねなく普段使いできるビッグバイクで、どこを走っていても楽しくて快適。そして、とにかくイージー。プライスも抑えられているし、この親近感は魅力だなぁ。
R1200R プロフェッショナル・コメント
前モデルのオーナーである私は
本気で乗り換えたくなる
空冷 DOHC エンジンの R1200R オーナーである私にとって、新型 R1200R の登場は楽しみでした。まず外観ですが、以前のモデルの後継機と思えないほどスタイリッシュな印象を受けました。そして跨ってみると、足つき性の良さにビックリさせられます。シート高は低く、両足がベッタリと着き、非常に安心感があるのです。
走りは、加速が非常にスムースで、フロントヘビーだった空冷モデルと比べてかなり軽くなった印象です。スイスイと車両を扱うことができました。ワインディング走行でも、ギアシフト・アシスタント Pro とダイナミック ESA のおかげで、スロットルを思いきり開けてもフロントが浮くことなく、しっかりと路面に吸い付きます。まるで自分のライディングテクニックが上がったかと勘違いするほどの乗り味ですね。
また、クルーズコントロールも装備されているため、手首が疲れることなく長距離走行ができます。オプションで高さのあるスクリーンを付ければ、より快適になりますよ。新型に乗ってみて、本気で乗り換えたくなりました。自信を持っておすすめいたします。(モトラッド香川 桑島 晃平さん)
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