R1150GS(1999-)
- 掲載日/2010年03月24日【試乗インプレ】
- 取材協力/Motorrad Keiyo 写真/山下 剛 文/小松 男、山下 剛
この記事はBMW BIKES Vol.48掲載の記事を再編集したものです
BMW Motorrad R1150GS
あらゆる使い方を許容する
ビッグ・オフ・ツアラー R1150GS
初代 GS モデルである R80G/S が登場したのが1980年のこと。BMW のモデルラインナップを充実させるということもあり、ゲレンデ・シュポルトの頭文字を冠にしたオフロード・モデルとして市場に投入された。ボクサーエンジンを備えたそのオフロード・モデルは、その後パリ・ダカールラリーで連覇を遂げるなど、BMW の新たな可能性を示した。
その後、排気量を 1000cc に引き上げた R100GS は、スタイルこそそれまでの 80G/S に近いものだが、オンロードでの走行能力が高められ、オフロード・モデルと言うよりはグランド・ツアラー的な仕上がりで、デュアルパーパス・モデルと言える。ベーシック・モデルのキャラクターをオンロードよりに振ることによって、容量35Lもの燃料タンクや、ラゲッジラック、ストーンガードなどで装備を固め、オフロード色を強めた R100パリダカールなどが派生モデルとしてリリースされていく。この頃になると、もう GS モデルの存在はラインナップになくてはなららないものになってきていた。
そして1994年、4バルブの R259 エンジンを搭載した R1100GS が発表された。そのスタイルは、それまでの R100GS のようなスタンダードなオフロードバイクというよりも、前衛的なデザインで見るものを驚かせた。先だって登場していた R1100RS と同じく、フロントには新型サスペンション機構、テレレバーを装備、フロントタイヤを19インチとすることで、オンロードでの走行性能が格段に上がっており、R1200GS への礎となったモデルと言える。
1999年。スタイリングは R1100GS を踏襲しつつ、ヘッドライトを異形2灯にした R1150GS がついに道を走り始めた。1100GS と比べて5馬力アップ、トルクは 1Nm 上げられており、実際に乗ってみると、その数値以上の変化が体感出来る。フラットな特性を持つエンジンと6速となったミッションの組み合わせにより、高速道路を使っての移動でもストレスは皆無と言っていい。そのスタイリング、使い道を選ばないキャラクターで世界中にファンを生み出し、それまでの GS ヒストリーの中でズバ抜けたヒットモデルとなった。
これを機に、2002年にはオフロード色を強め、以前のパリ・ダカール的な存在である、R1100GSアドベンチャーが加えられた。
今回の車輌は千葉にある正規ディーラー、モトラッド京葉(047-396-8412)の認定中古車輌。価格:99万7500円/初年度登録:2002年/車検:2010年7月/走行距離:16,000kmという絶好調の一台だ。
R1150GSの詳細
編集部インプレッション
今でも感じる新鮮な違和感 ●山下 剛(BMW BIKES 編集部)
このバイクのファーストインプレッションといったら、「デカイ」ということに尽きる。BMW のバイクはだいたいそう感じるものだが、R1150GS に跨ったときにカラダの前面に感じる威圧感は想像を上回ってくる。それはおもに左右に大きく張り出したタンクが与えてくるもので、跨ってしばらくすると慣れてくる。威圧感が薄れてくると今度は、メーターまでの距離感と幅広のパイプハンドルによってもたらされるコックピットの広さに開放感を覚えるからおもしろい。
エンジンを始動させると、現行ボクサーよりも低音のあるピストン振動と排気音が車体とライダーを一緒に震わせてくる。クラッチをつないで走り出すと、R1100 より新しくて R1200 よりも古いバイクであることを明確に伝えてくる。1100 にあったもっさり感とかユルさといったものが薄まっているが、1200 のような軽さはない。重厚さと軽快さが絶妙にバランスされている印象を受ける。
それより何より、走り出した時に覚える違和感はおもしろい。バイクなのにバイクじゃない、バイクじゃないのにバイクである。コレハ、ナンダ!? フラットツインの太いトルクとテレレバーのガッシリとした乗り味は、まるでバイクじゃない。たとえるなら陸を走る船のような感覚だ。とても8年前に登場したバイクとは思えない新鮮な衝撃を受ける。ドッシリと殿様乗りしながらおもむろにバイクを傾ければ、フロントがガシッと路面を捉えて曲がっていく。アクセルとリーンの操作だけで、R1150GS は巨体をものともせずに曲がるのがフシギだ。
個人的嗜好を言えば、1100 よりも 1200 よりも愉しい。エンジンのレスポンスや音、振動、加速感、そして車体の重さとのバランスが秀逸だ。
今回試乗した GS にはサーボブレーキが採用されていて、これはかなり好みが分かれる。信号待ちの間、ブレーキを握っていると「みゅん、みゅーんみゅん」とまるでどこかに猫でも隠れているのではないかと思うくらい、GS が鳴く。タッチは悪くないが、キーオフ時にはサーボが効かないことを忘れてしまいそうで、慣れるまでは注意が必要だ。
一番コストパフォーマンスの高い GS モデルだと思う ●小松 男(BMW BIKES 編集部)
現在一番売れているシリーズは、間違いなく GS シリーズであり、そのポジションを確固たるものにしたのが、今回とりあげた R1150GS だと、僕は思っている。このバイクもまた発売当時憧れの一台だったモデルあり、僕の購入欲をくすぐりながら、前を通り過ぎ去ってしまったモデルだった。
R1100GS を踏襲しつつもより独特な形状をしたスタイリングは、今見ても怪鳥という異名で呼ばれていたことにうなずける大きさと、見た目のインパクトがある。跨ってみると、身長 178cm という体格の僕でもポジションは広く感じる。これは、ライディング時の自由度が高いともいえるが、タンクの前後長があり、一般的な日本人男性のリーチに対しても、ハンドルとの距離に余裕があまりないと思えた。シッティングポジション時のハンドルフルロックでは、上体を上手に使わないと、外側のハンドルから手が離れそうになるほどだ。
エンジンを掛けて走り出す。エンジンは現行 1200 系ほどの元気さを見せないものの、後ろ足で地面を蹴りだすトルク感が溢れ、今乗ってもパワーの不足は感じない。
車重があるため、バイクを降りての取り回しは気を遣わざるを得ないが、メリットとしては、その重さのおかげでストロークの長いサスペンションをゆったりと動かし、アクセルのオン/オフで、まるでフルサイズのアメ車のような乗り心地(もちろんサスペンションのセッティングで変更も可能)。この感じがクルージングに余裕を与えてくれるので、どこまでも行きたくさせるのだと僕は思っている。
この車重と車体とのバランス面で、個人的な好みを言うなら現行 R1200GS アドベンチャーか、この R1150GS が気に入っている。
さて、こんなにいいバイクが 100万円で買えるとなると、万年懐寂しがり屋の僕でも心が揺らいでしまう。同価格で購入出来る他メーカーのバイクで、これほど購入後の生活を楽しみに思わせるものは、実際思いつかない。機会を作って是非試乗してみて欲しい。そもそも現行型とは別世界であり、旧型だと侮っている人が乗ったら、それはそれで楽しいものだと感じるはずだ。
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