F800R(2009-)
- 掲載日/2009年08月26日【試乗インプレ】
- 取材協力/BMW Motorrad Japan 写真/磯部 孝夫 取材・文/VIRGIN BMW編集部
F 800シリーズを拡充するネイキッド・モデル
ミドルクラス・ロードスターの登場
2006年に登場したBMWの新カテゴリ、F 800シリーズ。新開発の798cc水冷並列2気筒エンジンを搭載したニューBMWは、ほどほどの性能と日本人の体格にマッチしたボディサイズで、新規BMWユーザーを呼び込むきっかけとなった。まずはスポーティなキャラクターのF 800 S、ツーリングトリムをまとったF 800 STの2台が同時に発売され、次いでダート走行もそつなくこなすオールラウンダーのF 650 GS(先代シングル・エンジン・モデルの名を継承)、ビッグ・オフロードマシンのF 800 GSと、セグメントの拡充を図ってきた。
2009年9月5日より店頭販売されるF 800 Rは、異型2灯のヘッドライト・ユニットを装備したネイキッド・モデル。S/STのエンジンをベースに専用のチューニングを施し、シリーズ中では最高出力を捻出する。スタイリングにはストリート・ファイター風のデザインが見られ、ビッグ・ネイキッド・モデルのK 1300 Rに対するミドルクラス・ネイキッドという位置付け。F 800 Rの登場により、スポーツ、ツアラー、オールラウンド、オフロード、そしてネイキッドと、ほぼ全てのセグメントを拡充したことになる。
F800Rの特徴
見た目の印象とは裏腹に
トータルでの扱い易さが際立つ
メーカーは既存のBMWユーザーのみならず、新規ユーザーも強く意識しており、スポーティで個性的なイメージを打ち出すことによって、逆に脱個性(いわゆるBMWらしさを隠す)としているようだ。それが好まれるか否かは別として、ストリート・ファイター的なF 800 Rのルックスは、走り始めのクラッチミートで意とせずフロントアップしてしまうような、過激なキャラクターを連想させる。K 1300 Rのデザインを踏襲したスタイリングで、S/STとの見た目での差別化にも成功している。ネイキッド・モデルらしくヘッドライト周りやエンジン部をカバーするものは無く、剥き出しのブラックに塗装された心臓部は、より引き締まった印象だ。
RのエンジンはS/STをベースにコネクティングロッド、ギア比の変更など専用のチューニングが施され、より中~高回転域での出力特性を重視した設定となっている。また、スイングアームは片持ちシングルではなくダブル・スイングアーム、ファイナルドライブにはベルトではなくチェーンを採用。よりポピュラーな機構とすることで、軽量化とコスト面の圧縮にも貢献している。
重心を低く抑えるためシート下に配置された燃料タンクはシリーズ共通だが、キャスター長やサスペンション・ストロークの短縮、スイングアームの延長など、S/STと比較すると走りはベツモノのキャラクターだ。最高出力と常用回転域はF 800シリーズの中で最も高く、最軽量ボディに小回りの利くフレームなど、じつはライダーの入力に素直に反応し、過激さではなく、あらゆる入力に対応出来るよう設計されているようだ。
F800Rの試乗インプレッション
如何様にも乗れてしまう
フトコロの深さはBMWならでは
F 800シリーズが登場したとき、SやSTに乗ってみての個人的評価はかなり高かったことを覚えている。これほど扱い易く、「上手くなった気にさせてくれる」(=愉しい!)ミドルクラス・マシンには出会ったことが無かったからだ。BMWがこれまで拡大し続けてきた大排気量モデルとは別に、F800シリーズは中間排気量クラスへとセグメントを拡張するモデルとして、未来のBMWユーザーを獲得する(育てる)ための主力製品だということは分かっている。そんなメーカーの戦略にずばりハマってしまったというワケだ。
F 800シリーズとしては最後発となったネイキッド・モデルだが、SやST、GSなどと違って、イマイチそのキャラクターが不透明だなぁというのが第一印象。しかし実際に乗ってしまえば「これはこれでアリだな」という、いつものBMWマジックにやられてしまった。
走り始めはストールしてしまいそうなほど低回転域でのトルクの薄さを感じたが、逆に回転数を高めに意識して、5,000回転付近をキープすると面白いほど良く走ることに気付く。とにかく元気なのだ。レスポンスは鋭く、低回転域から高回転域まで素早く上昇するフィーリングは爽快なもの。しかし他メーカー同セグメントのモデルと比較すると、鋭いレスポンスとは言え、そこにはライダーを急かさず、長距離移動でも疲れを感じさせないための「BMWらしさ」がある。実際にワインディングから高速道路~都内と、およそ300km強を継続して走ってみたが、いわゆる「疲れ知らず」な乗り物だった。
スタイリングこそアグレッシブな演出をしているものの、軽量なボディとパワフルな並列2気筒エンジンは、普段のシティユースから長距離ツーリングまで、いずれのフィールドでも走る愉しさと、それだけにとどまらない快適さを実現している。F 800 Rは「ちょっと走ってハイ満足」「こうしないと上手く曲がってくれない」という個性やアクの強さが魅力のキャラクターではなく、やはり操る愉しさや、遠くまで走った先に待っている感動を得るためのマシンであり、BMWの中にあって『気負わず付き合えるスニーカー的存在』、そんな印象を覚えた。
こんな方にオススメ
他人とは違う個性やこだわりを持ち
先入観無くモノを選べる人へ
BMWのラインナップにおいて、F 800 Rのスタイリングはとても個性的だ。しかも乾燥重量177kg、最高出力87ps/8,000rpm、最大トルク86Nm/6,000rpmという軽量・パワフルなスペックから「扱い易くて遊べる中間排気量マシン」というキャラクターが見えてくる。ブランドにこだわらず、自分の直感や機能・実用性に基づいて何が欲しいのかをセレクトし、行動出来るライダーには、たった1台でいろいろと満足させてくれる性能が必要なのだ。デザインがカッコイイから、コーナリングが気持ち良いから、サーキット走行で遊べるから、などなど、バイクに求めるものによって選ぶ車体もそれぞれだが、「それだけ」では満足せず、つねにアレもコレも幅広く愉しみたい、というアクティブなライダーへうってつけなマシンだと思う。
F800R プロフェッショナル・コメント
より多くのユーザーさんへ向けた
「一般ウケ」の良さが魅力です
F 800 Rは、先に登場した兄弟モデルのSやSTとは違った魅力をお客様にお伝え出来ると思います。
SやSTと比較してみると、F 800 Rの大きな特徴として「シート高=足つき性が良い」「車輌重量=軽い」「エンジン設定=パワフル」の3点が挙げられます。もともとF 800シリーズは既存のBMWファンのみならず、BMWをあまり知らない、より多くのユーザー層を見据えて登場してきました。「誰が乗ってもオーケー」なBMWなのです。その扱い易さや親しみ易さはとても一般ウケが良く、実際に当店では、非BMWユーザーのお客様が、跨っただけで「フィット感がイイ!乗り易そう!」と喜ばれるシーンがよくあります。
それに「デザイン」! K 1300 Rの弟分と言うだけあって、シリーズ中もっとも個性的なキャラクターです。でも、それは見せ方をそのようにしただけであって、ストリート・ファイター風の外観でも、実際はライダーがビックリしたり、ヒヤリとするような過激さは抑えられています。
軽量ボディにパワフルなパラレル・ツイン・エンジンを搭載しておりますので、市街地を小気味良く走ることが出来ますし、取り回しだって必死になることはありません。一度跨ってみて、軽~くストリートへ駆け出してみれば、きっとその魅力をご理解いただけると思いますよ?(Motorrad SHONAN 滝本 幸一さん)
F800R の詳細写真
意外なほど効果の高い
小ぶりなスクリーン
より親しみ易くなった
安心のシート形状
剥き出しのエンジンは
デザイン・アクセントに
より一般的な機構を採用した
スイングアームと駆動系
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