VIRGIN BMW | R1200R(2007-) 試乗インプレ

R1200Rの画像
BMW Motorrad R1200R

R1200R(2007-)

  • 掲載日/2008年07月03日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/バージンハーレー編集部

満を持して登場したR1200Rは
切れ味するどい走りが真骨頂

「ロードスター」というペットネームを持つモデルが初めて登場したのは1991年のこと。OHVエンジンを搭載していたR100Rが最初のロードスターだ。その後、R1100シリーズ、R1150シリーズでもその名前を持つモデルは引き続きラインナップされ、今回取り上げたR1200Rは4世代目のロードスターにあたる。当初ロードスターはGS系モデルと基本構成を共通化したオンロードモデルかつ、装備類を簡素化したベーシックモデルであったため、ともするとラインナップ中のエントリーモデル、もしくは廉価版と捉えられることが多かった。それゆえ、ロードスターの本当に“美味しい部分”理解しているのはオーナーのみで、比較的最近までその傾向は続いていたように思われる。

しかし、R1150Rぐらいから“速いモデル”であることが認識されはじめ、ファンも増加。モデル末期には、酸いも甘いも噛み分けた通が好むモデルとして評価されるようになったと記憶している。そして、その傾向の変化はこのR1200Rで決定的となった。日本市場におけるその変化をBMW自身が認識していたか否かは定かではないが、最新の装備と切れ味鋭い走りを与えられたR1200Rが1200シリーズの真打として登場したのである。

R1200Rの特徴

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シンプルながら多機能
BMW独自の装備が多数

そもそも、4輪の世界で「ロードスター」という用語は「オープン=屋根がない」という意味で用いられることが多いが、少なからず「スポーツ」の意味も含まれている。4輪メーカーでもあるBMWがそんなことを知らないはずもなく、実は初代R100Rからずっとロードスターにはその名に恥じぬスポーティな味付けがされてきたのである。決して「カウルを持たないからロードスター」という単純な図式ではない。そして、やや地味だった歴代モデルに対して、このR1200Rではそれを素直に表現したかのような“華”のある外観が与えられ、装備上でも走りを意識した最新のスペックが与えられているのが大きな特長だ。

まず、注目しておきたいのがR1200Rの基本構成だ。歴代のロードスターがGSと基本構成を共通化していたのに対して、R1200RはR1200RTやR1200STをベースとしている。つまり、その成り立ちからして純然たるオンロードモデルなのだ。若干の仕様の違いはあるがエンジンも両モデルと共通であり、基礎的な部分からオンロードモデルとしての高い完成度は約束されていたようなものである。さらに、ロードスターとしてのスポーティなキャラクターを支えているもうひとつの重要な要素が、その軽さである。車重230kgという数値は、現行RTより50kg、STやGSより10kgも軽いことを意味している。相対的にエンジン重量の比率が大きくなるため、R1200RはBMW特有の低重心メリットを最もダイレクトに享受できる構成となっているのだ。

そのほか、無類の走行安定性をもたらす独自のサスペンションシステム「テレレバー」や「パラレバー」が最新バージョンにアップデートされていることはもちろん、より自然なフィーリングとなった新型インテグラルABSが採用された。また、好評な電子調整式サスペンション(ESA)とともに、オートマチック・スタビリティ・コントロール(ASC)がオプション設定されたのもこのR1200Rが最初である。特にこのASCは特筆すべき装備で、リアホイールの空転を抑制して車体の安定性を確保しようというBMWの最新技術だ。走りに直接影響するこのような装備が最初に投入されたこと自体、このロードスターが単純なベーシックモデルではないことの証である。

R1200Rの試乗インプレッション

ポジションの良さはBMW随一
スポーツ性の良さも申し分なし

軽い。これがロードスターを走らせたときの第一印象だ。あっけなく目覚めたエンジンはアイドリング音がとても静かで、緊張することもなくクラッチを繋ぎ走り始めると、エンジンの躾もとてもジェントル。ここまでは歴代ロードスターと同様のとっつきやすさを感じる。しかし、ハンドリングには大きな変化があった。さすがに生まれも育ちも純粋なオンロードモデルとなっただけあって、舗装路面での身のこなしが格段に軽いのだ。実は日本仕様の標準シートは本国で言うところのローシート。開発段階でハンドリングを煮詰める時の基準となったであろうスタンダードシートと比較するとシート高がかなり低くなっており、大抵このようなシートはハンドリングをダルにする方向で作用する。しかしR1200Rの場合、前述したように車体全体が圧倒的に兄弟モデルよりも軽く、重心も相対的に低くなっているため、ハンドリングがシャープに維持され、路面に張り付くような安定感も強い。また、座面の前傾が緩められているためか、ポジションもスタンダードシートやハイシートと比較するとアップライト。これがマシンの振り回しやすさに繋がっている。

これに気を良くしてワインディングを走り始めると、R1200Rは「正しくロードスター」とも言うべきパフォーマンスを披露してくれた。ハンドリングはあくまでも軽く、オンロードモデルとしてより洗練されているのは間違いないのだが、それがどのような乗り方でも破綻しない。テレレバーの安定感をアテにして、ハンドルバーを強めにこじるような乗り方をしても、何事もなかったようにコーナーをクリアできる。なにもマシンを振り回す場合だけではなく、例えばオーバースピードでパニック気味のコーナーリングになった時など、この「どうにでもなる」という安心感は安全にも繋がるずだ。もともとBMWのテレレバー車にはこのような資質が備わっているのだが、軽い車体に低重心のR1200Rでは、そのメリットがより明確に感じられる。また、軽さはエンジンとのマッチングにおいても好影響を及ぼしている。街中で常用域となるであろう2,000~3,000rpmあたりでも、トルクの厚みと軽量な車体の相乗効果で、好みのギアに入れておけばほとんどオートマチック車のようなズボラな運転が許容されるのだ。このような特性はメリハリをつけたいロングツーリングでもありがたいキャラクターだと言えよう。

シンプル極まりない構成だった初代ロードスターは、その軽快なハンドリングがいわゆる「通好み」と評され、実は予想以上に売れたモデルであった。しかし、発売時期がよりパワフルなR1100シリーズやK1100RSなどと近かったために、そのスポーティなキャラクターは埋もれてしまった感がある。一方、R1200Rは最新のエンジンとシャーシを与えられ、車重の軽さと運動性の高さはBMW屈指のスポーツモデルR1200Sに迫るモデルとしてデビューした。ツアラー系の兄弟モデルのようなウインドプロテクションと豪華さを放棄した代わりに、スポーティな「ロードスター」としてのプレゼンスは十分過ぎるほどだと言えよう。

こんな方にオススメ

素材の良さが味わえる
BMWが誇るロードスター

もともとBMWは車体の低重心化にこだわりをもったメーカーだ。ボクサーエンジンや新旧Kシリーズ用エンジンはもとより、ミドルクラスモデルにおけるシート下燃料タンクなど、低重心化を目的としたアイデアがBMWのバイクに共通した走行安定性をもたらしている。特に車体上部に集中する装備が簡素化されたR1200Rは、その良さをダイレクトに味わえる存在だ。車体全体の軽量化は純粋なスポーツモデルに匹敵する運動性の高さとして結実し、いまや最新のエンジンとあいまって「ロードスター」というペットネームに名前負けしないスポーツ性も兼ね備えている。パニアケースなどのツーリング用オプション装備は他のモデルと全く遜色ないのだから、近距離のスポーツツーリングを頻繁にこなすようなライダーにとってはうってつけの1台ではないだろうか。

クローズアップ

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リアタイヤの空転を抑制する
BMWの最新安全技術ASC

BMWがR1200Rにオプション設定されたオートマチック・スタビリティ・コントロール(ASC)は、いわゆるトラクションコントロールの一種で、リアの駆動輪が空転するのを抑制するシステムだ。滑りやすい路面で横方向の安定性を保ち、加速する際にフロント・ホィールが浮き上がるのを防止する効果がある。

ASCは、ABSホイール・センサーからの情報により前後ホイールをモニターしている。そして、前後ホイールの回転速度差からスリップ傾向を検出すると、情報を受け取ったエンジン・コントロール・ユニットが路面に伝達できる限界の駆動力を判定。空転を収束させる第1ステップとして点火時期をリタードする(遅らせる)ことによりトルクを下げる。そして、さらにエンジン・パワーを絞る必要があると判断した場合、第2ステップとして燃料噴射を一定期間中断しリアタイヤの空転を抑制する。

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このシステムの長所は、作動が敏感かつ迅速なことで、BMWは快適性と運動性能が損なわれることはまずないとしている。また、システムの作動はメーター・パネル内の警告灯が高速で点滅し注意を促すとともに、ライダーがASC機能を使用しないと判断した場合は、走行中でもボタンを押すだけでオフにできる機能も実装している。さらに、ASCは新型インテグラルABSやエンジン・コントロール・ユニットの一部として開発されたASC用ソフトウェアによって制御されており、別途ASCコントロール・ユニットを設置する必要もなく、バイク全体の軽量化にも影響を与えないシステムとなっている。

気をつけなくてはならないのが、ASCを搭載していてもモーターサイクルの物理的限界が高まるわけではないということ。ASCは刻々と変化する路面状況のなかを安全に走行するための補助装置であり、加速性能を高めたり、コーナリング時のラフな急加速を可能とするためのシステムではないことを注意しなくてはならない。

R1200R プロフェッショナル・コメント

1台のスタンダードバイクとして
高い完成度を誇るR1200R

先代のR1150Rも洗練されたも完成度の高いバイクでしたが、R1200Rではスタイリッシュな外観とともにその速さにも磨きがかかりました。試乗したお客様もその乗りやすさとともに、スポーティな乗り味に驚かれる方が多いです。また、あまり注目されていませんが、燃費がとても良いという隠れた美点もあります。

Rシリーズとしては簡素な装備のベーシックモデルという見方も出来ますが、新型のインテグラルABSやESA、ASCなども用意されているので、走りという面では他のモデルに全く引けをとりません。乗りやすいので初めてBMWに乗るという方にもオススメできるモデルですが、速さやスポーツ性を求められるベテランライダーの方にも最適な1台だと思います。また、パニアケースや小ぶりでも効果の高いウインドスクリーンなど、別途ツーリング性能を強化できるオプションも一通り設定されているので、ツーリング志向のお客様や、軽さを重視される女性の方にも好評です。(Motorrad SHONAN 滝本 幸一さん)

取材協力
住所/神奈川県大和市下和田953
電話/046-269-1377
営業時間/10:00-19:00
定休日/火曜日(年末年始12月29日~1月5日)

R1200R の詳細写真

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伝統のボクサーエンジン

左右に突き出したシリンダーが特徴的な水平対向エンジン。1169ccの空油冷エンジンながら109馬力の出力を誇る。R1200RではR1200RTやR1200STとエンジンの共通化図られた。
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安心のABSシステム

世界で初めて市販車輌にABSを搭載したBMW。その歴史の長さに比例して、細かな仕様変更が重ねられているため信頼性は抜群。急ブレーキでもロックしない安心感が快適なライディングに繋がる。
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ノーズダイブしないテレレバー

路面からの衝撃とブレーキ時に発生する減速Gを別々に処理する、BMWの独創的なサスペンションシステム。Rシリーズの車輌すべてに採用されており、減速時にライダーは前のめりにならない。
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シャフトドライブ&パラレバー

メンテナンスが楽なことと静粛性を求め採用されたシャフトドライブ。しかし、スロットルのON/OFF時に車体後部が上下するデメリットもあった。それを解決するために採用されたのがパラレバーだ。
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