VIRGIN BMW | エフロクの名を継承するツインの「F650GS(2008)」 GSナビ

エフロクの名を継承するツインの「F650GS(2008)」

  • 掲載日/2009年03月13日【GSナビ】

F650GS(2008)

BMWバイクGSシリーズの画像

その名が示すのは排気量にあらず
F650GSというカテゴリを表している

そもそもこのモデル名にある「650」という数字は、排気量のことを示しているわけではない。新型F650GS(エフロク・ツイン)には先行して発売されたF800S/STのエンジンをベースに、出力設定の変更と専用設計を施した798ccパラレルツインエンジンが搭載されている。日本では“エフロクGS”のニックネームで知られる、シングルエンジン搭載の先代F650GSのキャラクターを継承するという意味で、その名が冠せられているのだ。先代から続くエフロクGSの脈流を知らない人にとってはややこしい話だが、BMWはメーカーとして、全世界に“エフロクというカテゴリ”をアピールしているのだから面白い。

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BMWが築きあげてきたF650(エフロク)シリーズは、1993年に登場したF650ファンデューロ以来、エフロク・ツインで第3世代を迎える。ファンデューロとは「ファン」と「エンデューロ」を組み合わせたBMWオリジナルの造語で、現在のエフロクシリーズのルーツとなる。ロータックス社(オーストリア)との共同開発によってつくられた排気量652ccのシングルエンジンを搭載し、BMWモデルラインナップのなかでは最小排気量で車体も軽量なもの。位置づけとしてはオフロードモデルであったが、その車体構成はオンロードでの使用も十分に考慮され、ワイドレンジで高いトルクを発生し、どの回転域においても優れた加速性能を発揮することから、オンロードでもオフロードでも高いアベレージで走破できるマシンとして、これまでに無かったまったく新しいジャンルを確立することとなった。

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それから7年後、陸の王者の証である「GS」の称号を与えられて登場したのが、第2世代のエフロクシリーズ、F650GS(エフロク・シングル)だ。

登場した年にBMWワークスチームによってパリダカへ参戦し、ワンツー・フィニッシュの快挙を成し遂げている。652ccという排気量は高速道路でも余裕の巡航性能を見せ、ツアラーとしての素質も十分に兼ね備えており、パニアケースやトップケースを装着すれば積載能力も申し分なし。ロングツーリングにも適したデュアルパーパスマシンとして、ほかに類を見ない唯一無二の存在となった。

このように、純粋なオフロードスポーツとは違った、BMW独自の世界観で存在感を維持し続けてきたエフロクGS。新型F650GS(エフロク・ツイン)はその血統を受け継ぎ、先代譲りのキャラクターにさらなるハイパフォーマンスが加えられ、ボクサーGSに比べて軽量・コンパクトな車格でありながら決して劣らず、むしろ扱いやすいGSとして、ライダーのスキル、使い方、年齢、性別に対して、より幅広なスタンスを位置づけられたモデルとなっている。

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その姿から先代エフロク・シングルの面影を見ることはない。排気量798ccのパラレルツインエンジンを搭載する。

より進化した“エフロクGSらしさ”
エントリーモデルとしての役割も

エフロク・ツインの車体構成を見てみると、F800S/STとも従来のエフロク・シングルともまったく異なり、すべてが専用設計だということがわかる。メインフレームはスチール丸パイプをトラス状に溶接した剛性の高いもので、エンジン下にクレードルフレームはない。フロントサスペンションにはスプリングトラベル180mmのテレスコピックフォークを採用。リアサスペンションにはスプリングトラベル170mmの油圧式サスペンションストラットを装備し、両持ちの長いスイングアームがスムースな動きを手伝っている。

オフロードボディのディメンションに適合させるため、シリンダーが30度前傾していたF800S/ST同系のパラレルツインエンジンを8.3度垂直方向へ修正しており、見た目にはほぼ垂直に感じる。

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両サイドのパニアケースにトップケース、タンクバッグなど、ツーリングトリムもちゃんと用意される。

さらに車体重心位置を補正するとともに、セミドライサンプ式のエンジン下部オイルパン・ハウジングを新設計し、最低地上高を稼いでいる。エンジン単体で1kg軽量化され、エンデューロマシンに適した特性を狙い、カムシャフトにも修正が加えられた。これらによって低中回転域重視の設定となり、71psという最高出力をあらゆる場面で扱いやすい性格となっている。

専用フレームと、深くゆとりのあるサスペンションストロークによって前後重量バランスが最適化され、ホイールとサスペンションがオンロード指向であるにもかかわらず、オフロードに分け入っても意外なほど高い走破性を実現する。この“走る場所を選ばない”という点ではR1200GSと変わらず、あえてその差を挙げるならば、絶対的な最高巡航速度と、ボクサーならではの安定性くらいだ。普段の足からロングツーリング、林道探索や、たまにダートを元気よく走らせてみるなど、あらゆる使い方でバランスが良いつくりとなっているのが、エフロク・ツイン最大の特徴といえるだろう。

そのポジションはもはや
他メーカーの追随を許さない

エフロク・ツインは、BMWモデルラインナップのなかではミドルクラスのエントリーモデルという位置づけではあるものの、それは1200ccボクサーエンジンを搭載したGSと比較してのことであり、排気量798ccのエンジンはじゅうぶん大きい。ロングツアラーとしての素質を備え、オン/オフ両方の道を駆け抜けるデュアルパーパスモデルとして考えれば、相当の大型車と言っていいだろう。

前述したとおり、F800S/ST同系のパラレルツインエンジンを搭載しながらその排気量をモデル名とせず、あくまでも“エフロクGS”の名を冠するのは、BMWが自ら築き上げてきた、ミドルクラスのオン/オフ車輌というカテゴリを途絶えさせることなく継承したかったからにほかならない。エフロク・ツインと同じタイミングで発売となったもうひとつのF800シリーズ“F800GS”と比較すると、明らかにエンデューロスポーツに振った車体構成に対して、エフロク・ツインはかなり優しいキャラクターと言える。それはこれまでのエフロクシリーズの脈流に則ったものであり、F800GSとは明確に差別化されている。

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オンロードでは楽なライディングポジションのまま、深くバンキングするオフロードバイクらしいフィーリング。

とはいえ、オフロード走行においてもかなり高いパフォーマンスを発揮するエフロク・ツインは、1,580mmという異常なほど長いホイールベースによって、オンロードでもオフロードでも高い安定性を誇り、1200ボクサー系と比較しても決して劣ることはない。つまりエフロク・ツインは、走る道を選ばずどんな人のどんな使い方にも応える万能モデルであり、他メーカーにはない稀有な存在なのだ。

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オフロードでも高いポテンシャルを発揮。パワフルなエンジンも、ロングホイールベースの恩恵で絶大な安定感。

F650GS(2008)の特徴

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特徴的なフロントマスク F800GS共通のヘッドライトユニット

左右非対称の異型2灯式ヘッドライトユニットはF800GS同様。大きいほうが常時点灯、小さいほうがハイビームとなる。スモールウィンドシールドを標準装備。

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メインスイッチへのアクセスが容易 電源ソケットも標準装備

メインスイッチはステアリング側ではなく車体側に設置。左隣には12Vの電力を供給するソケットも併設され、各種アクセサリーの電源をとれる。

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シンプルな足回りには必要十分な性能を備える

前後とも新デザインのキャストホイールにチューブレス・ラジアルタイヤを装着する。大径シングルディスク、片押し2ピストンキャリパーは共にブレンボ社製。

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調整可能なリアサスペンション 状況に適したセッティングを

リンクレスでダイレクトにマウントされるショックユニットは、車載の専用ツールでスプリングプリロードとリバウンドダンピングの調整が可能。

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すべてが最新の心臓部 旧エフロクとの共通点は皆無

ほぼ直立にレイアウトされた360度クランクのパラレルツインエンジン。スチール丸パイプをトラス状に溶接したメインフレームに載せられる。クレードルはない。

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見た目にも長いスイングアーム 駆動にはチェーンが採用される

17インチのリアホイールはダブルスイングアームに組み合わされる。ブレーキはキャリパー、ディスク共にブレンボ社製を採用。片押しシングルピストンを装着。

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