ベストセラーを凌駕する 新生「R1200GS」の登場
- 掲載日/2008年10月07日【GSナビ】
R1200GS
これまでのBMWを凌駕する
新世代ボクサー R1200GS
GSが切り拓いてきたビッグオフロードマシンというカテゴリは、荷物満載で長い距離を移動し、長時間走り続けるツーリストたちが多い欧米のマーケットにおいて当たり前のように受け入れられてきた。1994年に登場したR1100GSは、まさにそのど真ん中に位置するモデルで、他メーカーの追随を許さず(競合モデルがほとんど無かったというのもあるが)、常に好調なセールスを記録。そのカテゴリはBMWのほぼ独壇場と言っていいほどだった。
それから10年後、2004年に登場した新設計のボクサーツインエンジンを搭載したR1200GSは、ある意味BMW自身への挑戦でもあった。なぜなら、1993年のR1100RSから始まるR259系ボクサーの軌跡は、11年もの長い年月を経て常に新しい技術を投入し、1100ccから1150ccへと排気量をアップさせながら、じつにバラエティ豊かなモデル群をラインナップさせてきた。
良く言えばひとつのエンジンで熟成に熟成を重ねてきたもので(悪く言えば引っぱり過ぎなのだが)、次に打ち出すものは、それを超えることを宿命付けられていたからだ。そして結果として大きな成功を収めることとなったのが、1200ボクサーツインというわけだ。これはBMW史上、紛れもなく新時代への幕開けを表す革新的な出来事だった。
デザインを見ても、これまでのGSとは大きく印象が異なる。エンジン設計からフレーム構成、電子制御システムにいたるまで、すべてにおいて進化を遂げており、現行モデルに搭載されるボクサーエンジンが、このR1200GSの登場から始まったことを考えると、R259ボクサーの時代に別れを告げ、BMWの新時代を築くべくトップバッターとして、非常に重要なモデルだったことは言うまでもない。
ニューGSはすべてが新設計
唯一無二のオールラウンダー
100%フルモデルチェンジされた、ニューGSの中身を見てみよう。まずBMWのアイデンティティとなっているエンジンだが、基本構成は変わらず、排気量は1129ccから1170ccへとアップされた。最高出力はボクサーエンジン史上初となる100ps/7000rpmを実現。荒れた路面でもワインディングでも、アクセルを捻る右手に順応して充分な出力を発生し、よりアクティブな走行を可能とする。人にもマシンにも影響を及ぼす振動は、バランスシャフトの採用によって低減した。ここがニューボクサーの最も注目すべきポイントで、振動を低減することでストロークを伸ばし、クランクケースの小型薄肉化とピストンの軽量化を実現。
さらに耐久性についても向上させている。排気量アップやバランスウェイトの装備にも関わらず、エンジン単体の重量は3kgも軽量化された。これも優れた走破性をさらに向上させた要因と言える。これまでのR259ボクサーとはまったく別モノなのだ。
優れた走破性に加え、抜群の積載性もしっかり継承されている。ケース内側の調節レバーで容量の増減も可能。
このエンジンには各シリンダーに独立したセンサーを配置した燃料供給システム、シーケンシャル制御BMS-Kを採用している。いつでもどこでも適切な燃料供給を可能とし、結果、燃焼効率アップ、燃費の向上、さらに低オクタン燃料でも走行に支障がなく、モーターサイクルでは初のノックコントロールも導入した。これによって土地を選ばない、安定した巡航性能が引き上げられ、旅の道具として正常進化を遂げている。ライダーと環境に優しいシステムだ。
ニューボクサー搭載のR1200GSは、先代GSのコンセプトはそのままキャリーオーバーし、エンジン、車体、足回り、それにともなうデザインまで、あらゆる面で歴代GSを凌駕した、オールラウンダーとなっている。
グレードアップされたR1200GS
その進化はBMWを代表するもの
なにから何まで新設計、工業製品として正常進化を遂げたGSは、既存のGSファンからは大いに反発を喰らった。しかし市場に普及していくにつれ、それが覆されたことも事実だ。旧GSより30kgも軽く、外装に軽い素材を採用することでより低重心化が推し進められた。それがサイドスタンドを跳ね上げて車体を起す瞬間から感じられるのは歓迎すべき点だ。加えて100馬力を手にしたニューボクサーは、オンロードでの走破性も格段に向上し、ツーリング先でオフロードも積極的に愉しみたいというライダーにとって大きな悦びとなる。
高出力エンジンと高剛性の車体構成より、軽量化されたGSは荒れた路面でもよりアグレッシブな走行が可能。
跨ってみれば、地面へ降ろす足が素直に接地する方向へと動く。快適性を損なわず、股下のアーチに合わせたシート形状はその後のモデルにも採用されている。手動で5段階に調整可能なウィンドシールドだけでなく、前方で左右に張り出したデザインの燃料タンクと併せると防風性能は極めて優れている。小型化された燃料タンク容量は20L(リザーブ4L含む)だが、よりニーグリップし易く、燃費の向上はデザイン面でもメリットとなった。ブレーキシステムのさらなる洗練により、後に電子サーボ(パワーアシスト)機能が取り除かれるようになったのもR1200GSから。
意外にも、新生GSの登場によって1100GS、あるいは1150GSを購入した、というライダーの声を聞くようになった。ニューモデルは確かに新規ユーザーを獲得し、既存ユーザーの乗り換えを促したことに間違いはないが、性格が異なる新GSの登場によって、これまでのGSのキャラクターが差別化され、あえて新製品ではなく、旧型の選択という愉しみも加えられる結果となった。これはR1200GSが従来の脈流を正統に継承し、結果としてファンの期待を裏切らない製品づくりと言えるだろう。
R1200GSの特徴
必要な情報が一目でわかる新デザインのコックピット
ライダーが認知しやすいアナログを採用し、液晶パネルは光量の調整も可能で様々な情報を表示する。インジケーターにはLEDを採用。
より軽量・強化されたフロントサスペンション
テレレバーはAアームの形状と、素材をより強度のある軽量鍛造アルミニウム製に変更。フォークブリッジはブレーキラインとしても併用。
デザインの変更も見られるニューボクサーの外観
シリンダーとシリンダヘッドカバーの形状は、従来の丸味を帯びたものから、変形六角断面へと変更(通称:ヘックスヘッド)。
継承されるシャフトドライブ パラレバーがより乗り易く
ファイナルドライブ手前にピボットをひとつ追加し、スイングアームから分離。シャフトドライブ特有の“エレベーター現象”を解消。
用途に合わせて選択可能 オンでもオフでも自信アリ
ホイールは5本ダブルスポークのキャストか、クロススポークを選択可能。キャストの方がフロント0.1kg、リア1.6kg軽量となっている。
世界中で売れている大型バイク その勢いは止まらない
およそ3年間で、後に登場するアドベンチャーも含め10万台突破のセールスを記録したGS。写真は10万台目がラインを離れるところ。
- 【前の記事へ】
冒険装備を満載した「R1150GSアドベンチャー」 - 【次の記事へ】
工場出荷からそのまま冒険へ「R1200GSアドベンチャー」