GS新時代を切り開いた名車「R1100GS」の魅力とは
- 掲載日/2008年05月08日【GSナビ】
R1100GS
色あせない魅力を放つ
R259系以降のGSたち
今回からこのページでは、R1100GS以降の歴代GSを詳細にご紹介しよう。また、忘れてはならない存在であるFシリーズのGSも取り上げる予定だ。なぜ、1100以降のGSなのかというと、この世代以降のGSは高速化が進む現代交通への適性が高く、どのモデルにも長く楽しめる独自の魅力が存在するからである。
また、それ以前のOHV系GSとなるとさすがに個体数も少なく、良い状態の中古車を購入するには相当な苦労を伴うが、R259系以降のGSであれば価格はこなれている上に個体数は比較的豊富。仮に中古車物件を探す場合でも極めて現実的で魅力的な対象だと考えられるからだ。
新時代の幕開けを飾った
R1100GSの魅力とは
さて、今回取り上げるのは、1994年に発売されGS新時代の幕開けを飾ったR1100GSだ。新開発のボクサーエンジン「R259ユニット」を搭載し、テレレバーやパラレバーといった革新的な車体構成を持つこのモデルは、基本構成を同じくするオンロードモデルR1100RSの1年後にデビューしている。このことから、オフロードモデルは当初から企画されており、開発もR1100RSと同時進行であったことが窺える。
今見てもまったく古さを感じさせないR1100GSのスタイリング。シンプルなライトとスモーククリーンの取り合わせには迫力が漂う。
多少の転倒にはビクともしない堅牢性や優れた積載性、BMWらしい巡航性能やウインドプロテクションなどを追求した結果であるR1100GSの外観は、GSというバイクにユーザーが求めるヘビーデューティーなイメージと合致。それゆえ、デザインに関して物議をかもしたR1100RSよりは、ずっとスムーズに市場に受け入れられた。
また、デビュー当初こそ、OHV系GSを超えるオフロード性能を期待したファンから、オンロード重視のキャラクターに対する疑問が湧き上がったことは確かだが、前期モデルから後期モデルへと熟成が進むうちにオフロード性能も著しく向上。モデル末期には、オンオフ問わず全方位的な性能を持つ優秀なビッグオフ兼ツアラーとして認知されるようになったのである。
古さを感じさせない
R1100GSの存在感
こうして改めてR1100GSを見ても、そのデザインと車体構成は全く古さを感じさせない。発売当初は斬新なアイデアだった独特の2段フロントフェンダーも今ではGSのアイコンとなり、オフロード車の標準とも言うべき21インチに対して19インチに小径化されたフロントホイールも、現在ではビッグオフの主流となっている。
さらに、飛躍的な走行性能の向上をもたらしたテレレバー&パラレバーサスペンションをはじめとする優れた車体構成が、この段階ですでに完成していたことも非常に感慨深い。インジェクションやABS、キャタライザーの搭載も同様だが、15年近く前に発売されたR1100GSは、近年のビッグオフを予見するアイデアに満ち溢れた記念碑的モデルであったのだ。
テレレバー+パラレバーに19インチのフロントホイールという車体構成は当時としても衝撃的なものだった。
一方、チューブレスタイヤ装着を可能としたクロススポークとアルミリムの組み合わせは、R100GSからのキャリーオーバー。大幅にブラッシュアップされたリアのパラレバーと合わせて、BMWが既に持っていた優れたアイデアが上手く取り込まれていることに気づく。空油冷ハイカムOHV4バルブボクサーはインジェクション制御のマッピングはもちろんのこと、カムプロファイルやバルブサイズまで変更。R1100RSやR1100RTと比較すると最高出力は80馬力に抑えられていたが、より低い回転数から逞しいトルクを発生するのが特徴だ。
また、オフロード走行に備えるABS解除スイッチや、タンデムシートを外すと現れる広大なラゲッジキャリアなど、さまざまな専用仕様を採用するGSの伝統はこのモデルから始まっている。こうしてみると、同時進行で開発していたR1100RSと共通するのは基本的な車体構造ぐらいで、BMWはこの当時から相当な意気込みをもってGSを作り込んでいたことが窺えるのである。
熟成極まった後期型は
オフロード性能も向上
テレレバー+パラレバーに19インチのフロントホイールという車体構成は当時としても衝撃的なものだった。
4バルブエンジンとインジェクションを得た初期型のR1100GSは、スペック通りの素晴らしいパワーを発揮し、どちらかと言えば中回転域から高回転域で積極的に回したくなるキャラクターだった。ABSを備える強力なブレーキシステムや、テレレバーやパラレバーなどの革新的な技術による走行性能の向上も目覚しく、新時代のGSとして恥ずかしくない性能を誇っていたと言えよう。
しかし、オンロード性能の向上に軸足を置いた開発を行っていたためか、オフロード性能のツメはやや甘く、大型化した車体の取り扱いには気を遣う場面が少なくなかった。しかし、5年という販売期間の間に熟成は進み、後期型で問題点の多くは解決。エンジンの出力特性には絶妙なタメができてオフロードでのトラクションは大きく向上、低中速域も使いやすいキャラクターへと変貌を遂げていた。
また、サスペンションのチューニングも進み、よりしなやかな足周りとなったほか、ABS自体も改良が重ねられ、オフロードで使えるABSに生まれ変わっている。
テレレバー+パラレバーに19インチのフロントホイールという車体構成は当時としても衝撃的なものだった。
このように書くと、後期型のみが注目されそうだが、実は総合的な乗り味に関しては若干の荒々しさを残した初期型の面白さを評価する声もあり、一概に後期型が良いとは言えない。また、初期型にのみ採用されている樹脂製タンクは、溶接リブがタンクの下端にない美しいもので、このスタイリングに惚れ込んでいるファンも多い。
オプションのパニアケースを含めた積載性など、利便性に関しては変更が無く、ツアラーとしては前後期ともに非常に優れていることから、中古車として探す場合は、よほどオフロード走行が多いライダー以外は後期型にこだわる必要がないとも言える。
R1100GSの特徴
4バルブボクサー R259ユニット
現役当時はパワフルと感じたが、現行ボクサーと比較するとどこかのんびりとしたテイストを感じる出力特性だ。
1100時代の特徴 フレームレス構造
1100時代はミッションの後端がパラレバーのピボットを兼ねており、車体はフレームレスと言える構造だった。
アップマフラーとクロススポーク
アップマフラーやスロススポークのホイールはOHV系GSから受け継いだGSの伝統。太いタイヤも新鮮だった。
1100時代の始動は儀式も必要
左側グリップには、始動直用のファーストアイドルレバーが備わる。クラッチもワイヤー作動であることが分かる。
特徴的な形状のハンドルグリップ
この時代のハンドルグリップはバーエンドに向かって太くなる形状。疲れ難くツーリング好きには好評だった。
多様な情報を表示するメーター周り
燃料計や油温計などが備わるRIDは当初オプションだった。任意にABS解除ができたのはGSだけの特徴。