チタンやステンレス、アルミから生み出される BMW バイク用のスペシャルパーツ。R-style の製品は、機能性に優れ、さらにデザイン性も追求されている。使われる素材には用途に応じたものが選ばれ、それゆえに製作過程で手間が増えることもあるが、作り手としては譲れない部分でもある。しかし、それに対する評価は、正規ディーラーからのオーダーという形で確実に現れている。
「当初は、製品化しない方向だったのですが、乗っているうちに『早くしないと、目も当てられないことになりそう』との結論に至りました」と、R-style ブランドを展開する森下 徹さん。これは、以前の愛車であった R 1200 GS に乗り始めたころのこと。それまでに乗ってきたバイクに比べてシートが高く、停車のたびに “立ちゴケの不安” を感じたのだった。それを解消するには足つき性を高めればいい、ということから開発に着手したのがローダウントルクロッドである。「バネのようなしなやかさを持っているので、材質はチタンに決めていました。強度も必要になってきますから、構造をモノコックとしています」
これによって、15mm ダウンし、セットになっているローシートアジャスターでさらに 10mm、合わせて 25mm のシート高のダウンが可能になる。数値的にはわずかといった感もあるが、実はこの種の社外パーツの中では最大級のローダウン量で、森下さんの場合、ノーマルでは両足のつま先+アルファくらいだったのが、かかとまでが接地するようになり、停車時における立ちゴケの不安は、ゼロに等しくなったそうだ。
BMW バイクは、大がらなドイツ人の体格に合わせているからか、車体の大きさもそれなりに大きい。ライディング時に足の屈曲が少なくなって疲労の軽減につながるというメリットもあるが、足つき性の悪さを筆頭にしたデメリットも、けっして少なくない。そのような日本人向けでない部分を少しでも解消して、乗りやすく、乗るのを楽しくしたいというのが趣旨であり、また日本人ならではの細やかさや美しさをも包括しているのが R-style ブランドの BMW バイク製品に共通したコンセプトともいえるだろう。
R-style の BMW バイク向けパーツの第1号となったのが、K 1600 GTL 用のエンジンガードだった。純正オプションにはない機能と、そのプロテクション性で大好評をもって迎え入れられており、全国各地の BMW Motorrad 正規ディーラーからのオーダーが絶えないほどである。
その後、不幸にも転倒した際にシリンダーヘッド部が接地しやすいRシリーズも積極的に保護してあげたいという思いから、ボクサー用のエンジンガードも製品化した。
「試作段階ではチタンで作ってみたのですが、どうも色合いがバイクに合わない。高級感に乏しいのです。なので、材質はステンレスで、ミラーポリッシュ仕上げとしました。ひとつひとつ溶接して、完成後にそれをすべて手作業で磨いています。手間はかかりますが、錆の心配が少ないのと、軽微な傷ならば磨いて修復できるというメリットがあってのことです。溶接もですが、実は研磨技術に自信を持っています。純正のフォグランプが装着できること、そしてデザイン性を重視しています。シリンダーヘッドカバーにあるラインとエンジンガードのパイプの角度を合わせました。本来の機能であるプロテクション性は、ヘッドを守ることはもちろん、立ちゴケ程度ならばパニアケースが接地しないようにもしてあります」
「ローダウントルクロッドは、長さを短くすることで取り付け位置が前方に移動し、ホイールの中心だけが上がる仕組みです。つまり、タイヤとフェンダーの空間が減ってシート高が下がることになります。ダウン量は 15mm で、それだけトルクロッドの取り付け位置も移動していますが、ドライブシャフトなどへの負担はゼロに等しいです。
要するに、リア下がりになって足つき性が向上するということなのですが、ハンドリングにも影響を及ぼします。キャスター角が増える(寝る)=直進安定性が増すのです。それでいて、コーナーではペタンペタンと寝てくれてくれます。印象はノーマルよりも良く、絶妙なバランスになっていると思います。
ローシートアジャスターは、単独だとシートが前下がりになって好ましくありません。なので、それを打ち消すために、ローダウントルクロッドとのセットにしています。逆に、ローダウントルクロッド単独での使用は問題ないので、ハンドリングの改善を目的に装着してみてもいいのではないでしょうか」
全国のディーラーからのオーダーの多さが R-style 製品の確かさを現しているといっても過言ではないだろう。次に登場するパーツも、そんな “らしさ” が込められているに違いない。
森下さんの愛車である R 1200 RT に装着されている R-style ブランドのパーツを見てみよう。いずれも機能性を向上させているのはもちろん、ドレスアップ効果が高いことも特色といえるだろう。チタン材を使用したものは、色のあり or なしの2つのバージョンが用意されており、スペシャルパーツに変更したことを主張するか、それともさりげなくとするかという点で悩んでみるのも楽しいだろう。
R-style 製品を装着したデモ車的な存在でもある森下さんの R 1200 RT。サイレンサー部分を見せるためにパニアケースは外しているが、もちろん装着に問題はない。
ローダウントルクロッドは、デモ車として装着をわかりやすくするために色の付いたヒートカラータイプとされているが、ソリッドならばさりげないカスタムとなる。
車体の右斜め後方から見ると、エンジンガードがシリンダーヘッド部分をしっかりと保護する形状なのがわかる。
エンジンガードは純正のフォグランプも装着可能。一見するとスチールにクロームメッキのようだが、材質はステンレス。溶接後に磨き上げられての輝きだ。
カバーで隠れてしまう部分はトラス形状とし、エンジンガード自体の強度を確保。どこにどのように取り付けるか? が開発段階で森下さんの悩んだ部分でもある。
ノーマルよりも 15mm 短くすることで車高が下がる仕組みのローダウントルクロッド。ハンドリングの改善効果もあるので、それを目的として装着するのも良いだろう。カラーはほかにソリッドがある。
シート高を 10mm 下げるローシートアジャスター。これだけではシート自体が前下がりになってしまうために単独装着は好ましくない。よって、単品の設定はされておらず、ローダウントルクロッドとのセット販売のみ。
ハンドルバーマウントボルト部に取り付けられるナビゲーションステー。材質はステンレスで、他のパーツと同様にポリッシュ仕上げだ。
マフラーは、ノーマルのエキパイに組み合わせるスリップオンタイプ。サイレンサーの形状は7角形で、排気口は上下のデュアル。前後のサイレンサーバンドも凝った作りだ。
車体に装着されている鮮やかな色合いが美しいヒートカラーと、画像のチタンの素材感を楽しめる2種類をラインナップ。
住所/大阪府大阪市生野区小路東2-1-21
定休/日曜、祝日
営業/10:00~20:00
Tel/06-6756-7025
本来『アイアン』は鉄のことだが、手がけているのは鉄からアルミ、ステンレス、チタンと、適材適所。いうなれば、金属の象徴的な意味としての『アイアンワークス』を名乗る。その発想力には定評があり、フォルムの中に高い機能性を有した製品を得意とする。小回りが効くことも特色で、ワンオフ製作にも対応している。