掲載日/2014年9月1日 文/T-Chopper
今や日本のカスタムシーンから外すことのできない男だ。ブラットスタイル率いるビルダー高嶺剛。ハーレーダビッドソン、トライアンフ、ヤマハSRやXSなど空冷マシンをベースに、ストリートバイクとレーサーが融合したセンス溢れるマシンを数多く製作してきた。
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その実力は日本国内だけでなく、本国アメリカでも高い評価を受け、いまや、カリフォルニアのロングビーチにも進出を果たしている。
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その活躍の根本にあるのは、自らクラシックエンデューロにも参戦し、とにかくバイクを楽しみ、直感力や感性といった本能の赴くままにバイク造りを楽しんでいる他ない。そんな男が2014年、最先端テクノロジーを詰め込んだR nineTと対峙する。BMWは素材として初めてのバイク。そこには不安もあった。しかし、根っからのバイク好きは、そのチャレンジそのものを楽しんだ。
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フレーム、エンジンの基本骨格は純正だが、まずはそこにセットアップされた足周りに注目したい。BMWの中ではそれでも軽快感あるR nineTなのだが、高嶺にはまだマッチョ過ぎた。そこに意表とも思えるオールドレーサー御用達のセリアーニのフロントフォークを投入。車重に合わせ、スプリングはハーレー用のプログレッシブ製をセット。ホイールはフロント19インチ、リア18インチのHリムとされ、スリムなスタイルを実現した。
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エクステリアは、巨大な電装系を収めるコンパクトなフューエルタンクや、フレーム幅を極限に抑えたシートカウルなど、複雑な処理を経て、軽快なマシンを演出する。
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ダートトラッカーと言えば、右出しマフラーがポイントとなるが、BMWは右側にシャフトドライブがある。2本のサイレンサーの配置、バンク角など、オーディエンスにはなかなか気付かない点で苦労もあったという。
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新たなるチャレンジを乗り越え、ここにお疲労目となったブラットスタイルのマシンは、そのカラーが全面に押し出され、BMWのイメージを覆す斬新でスタイリッシュなマシンとなった。
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これまで直感とその類稀なる感性でバイクを製作してきたブラットスタイルと、緻密な設計とノウハウ、そして最先端テクノロジーが投入されたBMWというモーターサイクル。その相反するベクトルが、ここにひとつとなる。
こんなスタイルのビーエムダブリューを見たことがあるだろうか? フロント19、リア18のホイールサイズ、セリアーニ製フロントフォーク、そして、トラッカーハンドルに小振りなフューエルタンク&シートカウル。フラットツインの鼓動を感じながら、気負わず走りたい。