オフロード走行を愛好するGS乗りなら、ミシュランラインナップにアドベンチャーバイク向けタイヤの登場を心待ちにしていたはずだ。
野性の名を冠したアナキーワイルド。その乗り味やいかに。
秋の恒例行事となったGSファンライドに展示されるなど、すでに面の割れた未発売タイヤとして、お馴染みだったアナキーワイルド。オフ系GSファンのなかには、これを待ち続けた人も多いはずだ。
見た目のワイルドさとうらはらに、みずから"マルチパーパスタイヤ"を称する新製品は、開発時に大陸規模のエクスペディションテストをR1200GSで敢行。GSセグメントに狙いを絞った製品だ。
その開発テーマは、ビッグトルク、ヘビーウエイトのGSで、ロードセクションでのハンドリングと快適性。それらを得たうえで、ダートでの性能、そしてライフを織り込むことだった。
ルックスはブロックが独立したダートタイヤ然として乗り手に視覚的安心感を。サイドブロックには舗装路でのコーナリング時の剛性を確保するリブを入れる。
ラジアル構造としたことで、バイアスでは不可能な軽さに仕上がっており、サイドウォールを触った印象は、同社のパイロットロードシリーズを思わせるしなやかさだ。
そしてフロントタイヤにハンドリングの信頼感とグリップを、リアには安定感を付加したデザインとされている。装着時に観察すると、リアがより丸く、フロントはなだらかなプロファイルにも見える。
さらにリアには、旋回時のスタビリティー確保のために、エッジブロックと、ひとつ内側のブロックをブリッジで結ぶトレッドデザインが採用され、ブロックに剛性感を持たせ、コーナリング時の腰砕け感を出さない工夫がされている。一見するとオフ系タイヤだが、マルチパーパスをうたうだけのことはある。
ラジアル構造のメリットはタイヤそのものの軽量化と路面コンタクト性の向上。これによりアナキーワイルドは接地性を向上させグリップとライフを向上させた。
OEMタイヤと比較すれば舗装路での接地感は乏しくなるが、想定内。さっそく高速道路へ乗り入れ、郊外を目指す。走行距離30キロを越えたあたりから旋回時のグリップ感と、ブレーキング時のしっかり感、そしてマイルドな乗り味となり、こなれてきた様子である。高速移動ではノイズが高まるが、この手のタイヤを所望する人には問題ないだろう。
今回のテスト車はR1200GS、キャストホイール仕様だった。リム打ちを嫌って空気圧は指定のままで走行した。撮影した路面はハードパックに石が混ざる。ここに対してもタイヤの追従性は良好。トラコンを活用した状態でも慣性を着けて行けばかなりホットな走りを楽しめた。横方向へのスライド時の過渡特性が掴みやすく、オフロードでのキャラは印象的。
何はともあれダートを走る。標準空気圧のまま飛び込んだ。直線では吸収性のよいサイドウォールと、GSの車重とサスペンションがしっかりと接地感を演出する。
固いダート路のカーブでは、接地面が左右にくだけるような動きが出るのでは、と思ったが、グリップ感、接地性ともに頼もしい。マッドではさすがに空気圧を下げたくなるが、アクセルワークを間違えなければこともなげに通過できる。ヒルクライムでも無駄堀せずに登り、グリップの高さを確認できた。
ASCをカットしてリアをブレイクさせても、滑りだしの過渡特性がスムーズ。予測しやすいコントロール性が魅力だ。GSでのダートワールドを、見事に補強するタイヤであろう。