VIRGIN BMW | BMW BIKESプレゼンツ『BBライダートレーニング with オメガ』 特集記事&最新情報

BBライダートレーニング
撮影/山下 剛、田中善介 文/田中善介 協力/BMW Motorrad Dealer OmegaMSP 掲載日/2010年12月10日

BMWバイクを永く安全に愉しむために
日常で役立つスキル向上を目指す

BBライダートレーニングは、BMW BIKES と BMW モトラッド正規ディーラーがタッグを組み、かつてメーカーが主催していた「 BMW モトラッド・ライダートレーニング」のカリキュラムを盛り込んだオリジナルイベントです。初開催となる今回は、静岡県の BMW モトラッド正規ディーラー「オメガ」とのコラボレーションにより実現しました。

 

講師には MSP(Motor Sports Pleasure)代表であり、BMW モトラッド・ライダートレーニング公認のインストラクター資格を持つ齋藤栄治さんを迎え、10名という少人数で、内容の濃いトレーニングが行われました。ちなみに参加費用は25,000円(保険、昼食込み)。基本コンセプトは速く走ることではなく、BMW をより安全に、長く愉しむために、バイクの基本動作を身につけ、日常的に使えるスキルを向上しようというものです。

 

富士山と清水港を望む好ロケーションでのトレーニングの様子を、動画を交えてご紹介しましょう。

本日のカリキュラム
①座学
不安要素を解消するためにまずはアタマで理解する
②慣熟走行
身体とバイクを暖めながらイメージと実践を
重ね合わせる
③制動
思い通りのブレーキングを身につける
④バイクを曲げる方法
スムーズに曲げるための4つの方法を知る
⑤低速での安定走法
低速走行時に安定させるマシン操作

カリキュラム① 「座学」
まずはアタマで理解する

はじめに齋藤インストラクターは、参加者一人ひとりに「苦手意識」と「知りたいこと」(要望)を質問します。今回は「極低速でバイクを安定して走らせたい」や、「Uターンがニガテ」という声が多かったので、講習はその点からスタートしました。

 

極低速でバイクを安定して走らせる方法はいくつかありますが、まず「何故極低速でバイクが不安定になるのか?」を考えます。高速道路を走っているときと、市街地を走っているときでは車体の安定感が異なります。その違いは何なのか? そこから安定して走らせる方法を、質問と回答を繰り返すことで参加者自身に考えさせ、正確な答えを導き出していきます。一方的に知識やノウハウを伝えるのではなく、ディスカッション形式で進めることも、トレーニングの重要な要素なのです。

 

ということで、座学のポイントをざっくりとまとめてご紹介しましょう。

BBライダートレーニングのインストラクターとしてご協力いただいたのは、MSP(Motor Sports Pleasure)代表であり、BMWモトラッド・ライダートレーニング公認のインストラクター資格を持つ齋藤栄治さん。日本でドイツ本国の資格を持つのは2名のみ。

BBライダートレーニングのインストラクターとしてご協力いただいたのは、MSP(Motor Sports Pleasure)代表であり、BMWモトラッド・ライダートレーニング公認のインストラクター資格を持つ齋藤栄治さん。日本でドイツ本国の資格を持つのは2名のみ。

「スロットルとリアブレーキを併用する」

人間が操作によって意識的にトラクションコントロールを行います。このことにより、極低速でも安定してバイクを走らせることが可能となり、Uターン以外にも様々な使用環境で活用することが出来ます。

「バイクに乗る上で最も重要な目線について」

正確な目線が確保されていなければどんなテクニックを覚えても無意味です。まずは意識しましょう。そして目線を置く距離や位置についての根拠は、人間の反応時間に起因します。常にスピードメーターを意識し、時速を秒速に換算して、目線の距離を測るクセを身につけましょう。

「一般道でのライン取りについて」

ライダーによって右コーナーと左コーナーに得手不得手がありますが、その特性の違いは何かを確認しましょう。右コーナーの場合はアウト⇒ミドル⇒ミドル、左コーナーの場合はアウト⇒アウト⇒イン⇒ミドルが適切な走行ラインです。

「タイヤのグリップ限界の考え方」

タイヤの接地面積はごくわずかです。それを意識することでタイヤの仕事量と各種操作の丁寧さ(重要さ)を理解しましょう。タイヤのグリップ限界を「円/サークル」で表し、旋回時やブレーキング時、加速時など、複合的にタイヤに掛かる負担(負荷)をイメージすることで、操作やライディングに反映させることが出来ます。雨天時や厳寒時など、環境によってグリップ限界は変化し、前後タイヤのグリップ限界も変化していきます。

重たいBMWバイクを低速で安定させて走らせるにはどうしたら?
車体に働く「慣性力」と「駆動力」の解説。

【 関連動画 】

1-2. 「時速」を「秒速」に換算する

1-3. コーナーでの「目線」の位置

1-4. 左右コーナーの適切なライン

カリキュラム② 「慣熟走行」
カラダをほぐしながらバイクの性質を知る

慣熟走行では、齋藤インストラクターの後ろに参加者が続き、さまざまなポーズを真似しながらゆっくり走ります。身体のウォームアップやコース状況の確認という目的もありますが、実は2つのことを体感して(気づいて)もらうことが主目的です。

 

ひとつは時速20キロ程度の低速状態でも、スロットル開度を一定に保っていればバイクは安定するということ。もうひとつはタイヤの接地点に対し、重心点が近づいていれば(重なっていれば)バイクは真っ直ぐ走るが、大きくズレると、そのズレた方向に曲がっていこうとする性質がある、ということです。

 

それらに気付いてもらうため、変な格好で乗りつつ、スロットルを一定に開けている状態をつくり出しています。

コースを広く使ってゆっくり周回しながら、齋藤インストラクターの格好を真似しながら走ります。

コースを広く使ってゆっくり周回しながら、齋藤インストラクターの格好を真似しながら走ります。

 

齋藤インストラクターの動作を真似ながら慣熟走行。
一定速度でスタンディング、片手を離してバランスをとる。
なかなかムズカシイのです。

【 関連動画 】

2-2. 片手片足を離してみる

2-3. タイヤの接地点と中心の状態

カリキュラム③ 「制動」
思い通りに停まるためのブレーキング

直線を時速40キロで走り、普段通りのブレーキングで、置かれたパイロンの間に停まる練習です。たかが時速40キロでも、実際は狙ったラインで正確に停まれないもので、まずはそこに気付いてもらいます。

 

続いてリアブレーキのみ、フロントブレーキのみの制動、前後ブレーキでの急制動を体感し、それぞれの制動距離(ブレーキ力)の違いを確認します。また速度を上げた場合、2人乗りやウェット路面でのそれぞれの違いを体感、確認します。

 

参加者の車輌は全て ABS が装備されており、いざというとき、パニックブレーキで強くブレーキをかけてしまった場合でも、タイヤがグリップを失わないよう、マシンがライダーをサポートしてくれます。したがって滑りそうだと思ったら、ためらわずブレーキを強く握り(踏み)続けることが大事です。途中で緩めてしまうと ABS システムが作動せず、短い距離で停止することが出来ません。まさに BMW バイクならではの練習ですね。

 

普段何気なく行っているブレーキングでも、パイロントレーニングによって実はそれほど正確な操作が出来ていないことに気付かされます。

普段何気なく行っているブレーキングでも、パイロントレーニングによって実はそれほど正確な操作が出来ていないことに気付かされます。

カリキュラム④ 「バイクを曲げる」
スムーズに曲がるための4つの方法

「ステップワーク」「ニーアクション」「ボディアクション」「ステアリングワーク(逆操舵)」という4つの方法をスラロームで確認します。この目的は、実際の走行環境で、これらの方法を状況によって上手く組み合わせ、疲れている部分を補いながら安全に走行する、ということです。

 

まずはより実践的な「逆操舵」の理論を解説し、ひとりずつ齋藤インストラクターが運転するGSの後ろに乗って車体の動きを理解します。また休憩中にも、自転車のタイヤを使ったジャイロ効果を体験。軸を両手で持ち、回転する車輪に軽く入力すると傾く力が働きます。これには参加者も思わず声が出ます。そしてパイロンをサークル状に並べ、コーナリング中の操舵によるバイクの挙動変化を確認し、実際にどのようなシーンで活用出来るかを考えます。

 

曲げるための4つの方法をスラロームでじっくり体感します。素早く駆け抜けるのではなく、ライダーからの入力によって車体がどう動くのかを確認するのです。

曲げるための4つの方法をスラロームでじっくり体感します。素早く駆け抜けるのではなく、ライダーからの入力によって車体がどう動くのかを確認するのです。

パイロンサークルを回りながら齋藤インストラクターによる逆操舵の実演。
左手の動きかとステアリングの反応に注目!

【 関連動画 】

4-2. 参加者の様子(R1200R)

4-3. 参加者の様子(R1200S)

4-4. 参加者の様子(F800R)

4-5. スタンディングでスラローム

4-6. セルフステアの解説

4-7. 逆操舵の解説

4-8. 逆操舵を体感する

4-9. ジャイロ効果を体感

カリキュラム⑤ 「低速での安定走法」
BMWにこそ必要なマシン操作

体力よりも集中力を使うので、マメに休憩を挟みながら行われるライダートレーニング。本日最後のカリキュラムは、極低速走行とUターンを安定させる方法についてです。

 

まずは直線を走り、時速30キロ時点でスロットル開度一定のままリアブレーキを踏み、スロットルとリアブレーキの併用に慣れます。ノッキング寸前のギリギリまで踏み続け、自分のバイクはどこまで粘るのかを確認します。その後パイロンを交差点に見立て、スロットル開度一定のままリアブレーキで減速し、ちゃんと左右の安全を確認して、ゆっくりと右左折します。

 

続いてUターン。齋藤インストラクターは参加者の前で数回、変化をつけたUターンを見せ、どのような操作を行っていたのかを質疑応答します。ポイントは「目線」、「スロットル開度」、「クラッチワーク」、そして「バイクの傾き」などです。さらに「操舵角」と「実舵角」の変化も、GSのハンドルをフルロックさせて解説。車体が直立状態でのタイヤの向きは、そのまま傾けていくとさらに内側へ切れ込んでいくことを実演します。

 

駐車場4スパン分の幅を片側一車線の道路に見立て、なるべくゆっくり、徐々に小さくUターンする練習。最後の難関ですが、朝から学んできたことを素直に実践すれば、自ずとクリア出来てしまいます。

駐車場4スパン分の幅を片側一車線の道路に見立て、なるべくゆっくり、徐々に小さくUターンする練習。最後の難関ですが、朝から学んできたことを素直に実践すれば、自ずとクリア出来てしまいます。

安定走法とはつまり、スロットルとリアブレーキの併用、目線の向き、そしてクラッチ操作などが基本となり、それをいかなる環境でも確実に行うには、反復練習によって習熟するのみなのです。

 

齋藤インストラクターによるUターンの見本。
小半径で安定してUターンするにはどうしたら?

【 関連動画 】

5-2. 「舵角」の変化解説

5-3. Uターン練習(K1200RS)

5-4. Uターン練習(R1200R)

5-5. Uターン練習(F800GS)