BMW Motorrad Japan がプロデュースする年に1度の“土系”イベント『ジャパン GS チャレンジ』は、2006年夏の初回開催から今年で5回目を数える。静岡県周智郡からはじまり、長野県嬬恋村へと2年毎にベースキャンプを移し、今年は岐阜県高山市での開催となった。エキスパートからビギナーまで、多くの GS ライダーを迎え入れるために厳選されたロケーションは、普段、あまりツーリングに行けないライダーにとって最高の旅の始まりを演出してくれる。
6月18日(金)~20日(日)の期間、320名の参加者(観戦・同行者、メディア含む)は、飛騨高山の雄大な自然を満喫し、キャンプやツーリング、チャレンジプログラムなどを体験。さらに今年は『 BMW Motorrad International GS Trophy 』の国内選考会も同時開催され、4つのステージを勝ち抜いた3名の GS ライダーは11月、日本を代表して南アフリカへと旅立つ。例年に比べてエキサイティング度が増した印象のある、飛騨高山を舞台にした GS チャレンジの模様をご紹介しよう。 |
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| GS をいかに巧みに操ることが出来るのか? アクセル全開のスピード勝負ではなく、トライアルのようなセクションでマシンの操作性、テクニカルなスキルを競うチャレンジプログラムが『スキルチャレンジ』だ。予選となる1日目は広い会場の片隅にパイロンを立てて設けられたショートコースで基礎的なテクニックが試された。2日目は会場をベースキャンプへ移し、予選で勝ち残った数名がタイムを競いながらより困難で広いセクションをダイナミックに駆け抜け、観客を沸かせていた。
高度なスキルを要求するものではなく、ベテランでもちょっと油断すれば倒れ、ビギナーでも集中すればほぼノーミスでクリア出来てしまう内容となっているで「せっかくだからチャレンジしてみようかな」というノリで全然オッケー。モデル別にクラス分けされ各クラスの優勝者には BMW Motorrad Japan より「GS 乗り日本一」の称号と賞品が授与される。
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| 2008年に開催された『 BMW Motorrad International GS Trophy 』が2011年にも開催されることが決定し、参加表明国の選抜 GS ライダーは国境を越え、南アフリカを舞台に優れたエンデューロ・ライダーとしてのスキルを競い合うことになっている。その国内選考会も同時に行われ、コーディネーターの三橋淳氏により、4つのセクションから3名のファイナリストが選ばれた。
こちらはスキルチャレンジとは違い、“人とマシンの限界”、“砂漠横断”を前提とした究極のエンデューロ・ライダーとしての能力が試される。したがってマシン操作だけではなく、知力、体力、チームとして力を発揮することが出来るかなど、個人技のみならず万能なスキルが要求されるのだ。初・中級レベルのライダーでもトライ可能なスキルチャレンジの一方で、ハイレベルなチャレンジングが同時に行われているのが印象的だった。 |
| 目的地を決めてルートをトレースするツーリングではなく、知らない土地で、コマ図(ルートマップ)に従って進んでみるのも面白いもの。GS チャレンジ恒例のコマ図ツーリングは公道上で行うもので、現地で受け付けの際にコマ図を渡され、スタート地点とゴール地点のみ知らされ、ルートは走ってみないと分からないようになっている。これは競技ではなく純粋な遊び。したがって初めてのライダーでも難しく考えず、気軽にチャレンジすればいいのだ。ルートを間違えても焦る必要はない。そこでの景色を愉しめばいいだけのこと。
適度にダート区間を挟みながらビュースポット、休憩ポイントなども含まれたルートは、ソロでも複数でも、ゲーム感覚で愉しめる。スタート地点でトリップメーターを「0.00km」にセットし、コマ図に記されている次のポイントまでの距離、時間、目標物を確認しながらゴールを目指すのだ。 |
| 今年のメイン会場、ベースキャンプに選ばれたのは、標高1,600mに位置する「無印良品南乗鞍キャンプ場」。キャンプ用品のレンタルや洗面所、センターハウスには有料シャワーがあるなど、アウトドアを満喫するためのサービスや設備が充実している。“野宿”ではなくキャンプだ。山の麓からここへ到るまで結構な距離を走ることになったが、昨年までと同様、クルマ、バイクの乗り入れがオッケーなので、木々に囲まれたキャンプサイトは絵に描いたようなキャンプツーリングの光景となった。
18(金)午後に行われたビギナースクールを含む「ビギナーズ・パッケージ」で申し込みの参加者は2泊3日、それ以外の参加者は1泊2日をここで過ごし、例年通り、明るい時間は走りを愉しみ、夜はキャンプ場で自然を満喫する。ライディングとアウトドアライフを同時に体験出来る、GS チャレンジのもうひとつの魅力が見られた。 |
自然に囲まれたキャンプサイトは、思い切り走って適度に疲れた参加者たちの身体を充分に癒してくれる、とてもリラックス出来る空間だ。今年はあいにくの空模様で、夜中にテントを叩く雨粒の音で目を覚ましてしまった、という声もあったが、アウトドアでのアクティビティは天候の影響をモロに受けるものだし、それはライディングでも同じこと。「まぁそんなモンでしょ」という大らかな気持ちで受け止め、雨上がりの澄んだ空気を堪能すればいいのだ。
GS チャレンジの期間中、GS を駆るのに最適なロケーションとプログラムを見て、参加者たちは各々のスケジュールを決め、自由に行動する。ソロで走ったり、仲間と行動を共にしたり、ほとんどの時間をキャンプサイトで過ごしていたり、じつに自由な時間を送っていた。GS チャレンジは愉しむための「場」と「きっかけ」を提供するもので、至れり尽くせりのご招待イベントとは異なる。ここでは他人に合わせる必要も無ければスケジュールに追われることも無く、無理せずマイペースで過ごすことが出来るのだ。それが、GS というモデル名だけで毎年300名前後もの参加者が集まる理由なのだろう。 |
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山下さん(東京都) 「GS チャレンジは今回初めて来ました。せっかくGSを買ったので参加してみようかなと。それにオフロードも走ってみたいし、でも1人だと怖いので、金曜日のスクールから参加しました。やっぱり習うと違いますね。体重のかけ方を実感しましたよ。以前は250ccのオフ車を通勤で乗っていて、GS は 1150 の頃からカッコイイと思っていました。1200 になってデザインがさらにカッコ良くなって、ついに購入しました。初めての BMW です。これからスキルチャレンジ、それからツーリングに行ってきます。」 |
| 佐藤さん(東京都) 「GS チャレンジ初参加です。スクールから参加したのですが、とても為になりました。教えてもらうと全然違うものですね。この GS が初めての BMW で、オフロードバイクとしても初めてですが、普段はツーリングメインで、林道チャレンジはまずしません(笑)。でも、スクールの最後に走った短い林道は面白かったですよ。以前“どろんこ祭”にも参加したのですが、ノーマルタイヤでの経験を踏まえて今回はメッツラー KAROO T です。これはいい! タイヤが違うと一層愉しいです!」 |
| 小川さん(兵庫県) 「ここへ来たのは1人ですが、来れば誰かしら知っている人が居るんですよ。今年で4回目です。GS は 1150 から知っていて欲しかったバイクです。それが 1200 になって登場したとき、デザインに一目惚れして買ってしまいました。そして今はアドベンチャーです。乗るのはロングツーリングがほとんどで、ダートは年に数回走る程度。今回はキャンプツーリングメインで参加です。チャレンジはナシ。慣れないダートでも GS チャレンジは安心なんですよね、何かあっても助けがあるので。」 |
GS に乗るオーナーにはより深く GS の愉しさを知ってもらうために、また他メーカーモデルに乗るライダーには GS という乗り物をよく知ってもらうために、GS チャレンジはライディングスキルのレベルを気にすることなく、参加すれば誰もがそれなりに愉しさを体感出来る。ダートを含むツーリング、バイクを隣に置けるキャンプ、サポート付きで腕試しが出来るスキルチャレンジと、競争ではなく GS を使った遊びがメインなのだ。そもそもオフロードが不安という初心者にはビギナーズ・パッケージがあり、最終日の午後にはスクール体験も用意されている。BMW Motorrad インストラクター陣によるオフロード・レクチャーは、GS に乗ってもっと愉しむための基礎的な知識と経験を得るのに最良のプログラムだ。さらに今年は『 GS トロフィー』の選考会も行われ、困難なステージに果敢にチャレンジする一般参加者の姿を見て「いつか自分も…」と密かな目標を立てた人もいたかもしれない。
来年の夏もまた、GS のお祭りイベントとして今年以上に盛り上がることを期待したい。 |
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