ここは長野県と群馬県の境にある『浅間火山レース跡地』の一角。なにやら新旧GSに加えBMWのモロクロスマシンまで一列に並んでいる。そう、これからこの人たちは、かつて日本のバイク文化を大いに盛り上げた浅間火山レース跡地で、自分たちのGSを目いっぱい走らせてやろうと待ち構えているのだ。
今年で4回目を迎えたメーカー主催の一大イベント『ジャパンGSチャレンジ2009』は、2006年夏、静岡県で初回開催。以降2008年より長野県は嬬恋村の浅間山周辺に場所を移し、オフロードバイクであればメーカーも限定しないというフトコロの深いスタンスで、他メーカーのビッグオフファンをも巻き込みながら多くのGSユーザーの間で定着している。
年式の新旧を問わず、ここに来ればたくさんのGSを見ることができる。土の上を豪快に、浅間の自然の中を爽快に駆け抜けていくGSたちの姿は圧巻の一言。日本でこれだけ多くのGSが集まるのを見るのは、このとき以外にないだろう。ムズカシイことは考えなくていい。ただ、GSで遊ぶ。それでいいのだ! |
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| 『浅間フリーラン』で GSに乗っていながらオフロードとは無縁、もしくは行きたいという気持ちはあっても第一歩を踏み出せない…そんなオフロードビギナーは多いのではないだろうか? 逆に自分のGSで思いっきりオフロードを走りたい! という欲求不満のユーザーもきっと少なくないはず。 普段はオンロードツーリングばかりだけれど、年に一度はオフロードにチャレンジできる場として、ここでは浅間火山レース跡地の一部を解放している。今年は程よく地面が湿り、後続車はタイヤが巻き上げる火山灰の埃に視界を遮られることなく、ライディングを愉しんでいた。 ノーマルタイヤ&オフロードビギナーでも走れるやさしいルートでは、いかにも「オフロードは今日が初めてです!」というユーザーの姿が多く、アスファルトとは違う感触にビビリながらも、なぜか頬は緩みっぱなしという表情が見られた。また、フカフカの火山灰の丘やジグザグの狭路を走るトライエリアもあり、自分のレベルに応じて、思う存分GSを走らせていた。 | |
| 巨躯を繰るのはラクじゃない アクセル全開で突っ走るも気持ち良いものだが、この『スキルチャレンジ』は、狭いエリアに設けられたいくつかの障害をクリアしながら、スタートからゴールまでのタイムを競うゲーム感覚のテクニカルなプログラムだ。足つきや転倒、パイロンタッチなどがペナルティとなる…が、そんな細かいことはあまり関係ないかもしれない。ただでさえ大きくて重いGSを駆り、足場の悪いところで障害をクリアするのはヒジョーに難しく、完走できただけでも大きな達成感が得られるのだから。転倒なんて当たり前で、見ている方もハラハラドキドキしながら一緒に愉しめる、そこがオモシロイ。
競技はモデル別に5つのクラスに分けられ、予選となる第1ステージは浅間火山レース跡地の火山灰セクション。そこで上位に残ったライダーが、今度は嬬恋村キャンプサイトのすぐ脇に設けられた草原セクションで決勝となる。どちらもGSで走りたいとは思えないフィールドだ。 参加者は自分の腕試しで競技性を愉しみ、観客側はGSの豪快な走りに思わず拍手してしまう。ある意味“M 的”なチャレンジで、アトラクションとして大いに盛り上がっていた。 |
| ゲーム感覚で走る GSチャレンジのオモシロさは、なにもオフロード走行だけではない。浅間の自然の中を、空気と景色を愉しみながらまったりとクルーズできる、オススメのツーリングルートも走れるのだ。参加当日に受付でルートマップを渡されるのだが、このマップはコマ図になっており、ゴールするまでどこをどう走っているのか分からないようになっている。しかもそのルートには林道のダートセクションも含まれ、オンロードとオフロードの両方を走るように設定されている。
普段のツーリングでは目的地とそこへ至るまでのルートを事前に調べて行くものだが、このコマ図ツーリングはルート不明のまま、コマ図をひとつひとつチェックしながら進み、競い合うでもなく、自分のペースでのんびりと走るもの。グループで走るもよし、個人で走るもよし、いつもと違ったツーリングを愉しめるのだ。 |
| GS濃度が極めて高い GSチャレンジの期間中、参加者は1泊2日、もしくは2泊3日で、カンパーニャ嬬恋村キャンプ場でゆったりとした時間を過ごすことが出来る。昼間は走って、夜はキャンプ。共通のアソビ感覚をもって集まった者同士だから、1人で参加しても不安はない。
キャンプサイトはクルマ、バイクの乗り入れが可能なので、テントの傍らにGSを置いてアルコールを嗜む、なんて贅沢なこともできてしまう。普段、自分でこういったベストプレイスを探す時間の無い人や、そもそもキャンプツーリングの経験も少ない、というGSユーザーにとって、GSチャレンジはうってつけの機会なのだ。
夜にもなると、1人で静かに過ごす人や、灯りを囲んでワイワイとGS談義に花を咲かせる人たちなど、GSという共通のファクターでつながっている人たちが、同じ場所で各々好きな時間を過ごしている。とても素敵な空間であり、一種独特の雰囲気を漂わせていた。 |
オフロードタイヤ
いくらオンロードを走ることが多いとは言え、オフロード走行には専用タイヤの方が断然愉しいに決まっている。GSのようなビッグオフバイクには、それ相応のタイヤが各メーカーからラインナップされているので要チェック。写真はロングツーリング用エンデューロタイヤのメッツラー社製『KAROO』。
ボディプロテクション
もしもに備えてプロテクションの装備は必須。ツーリングメインで楽しむのであればウェアに内蔵されているもので十分だが、『浅間フリーラン』や『スキルチャレンジ』で遊ぶなら、スペックの高いしっかりしたものもを選びたい。写真はBMW純正の『ネックブレースシステム』を装着した例。
マップホルダー
コマ図ツーリングに、あると便利な『コマ図ケース』。出発地点から次のポイントまでの距離と情報を簡単な図で表してある。メーターで距離をチェックしつつ、ポイントを通過したら巻き上げて次のポイントを表示させる。本格的なラリー用(電動)とまではいかなくても、自作で安く作成することもできる。(BMW BIKWS Vol.38参照)
GSチャレンジにはどこか不思議な雰囲気がある。まず、GSと謳っておきながら参加モデルを限定していないため、他メーカーのモデルも混在しているところ。しかも違和感が無い。普通、自分が乗っているバイク以外のメーカーイベントに参加したいと思うだろうか? また、浅間フリーランやスキルチャレンジ、林道ダートツーリングなど、オフロードを遊ぶコンテンツがメインに含まれていながら、あまり“土臭く”ない。さらに、目を三角にして、エンデューロレースと勘違いしたような人たちも見られない。
どことなくまったりとした空気が流れていて、誰も焦っている様子は無く、冷めた目でオフロードビギナーを見るような人もいない。初回開催から毎年イベントの様子を見てきたが、この雰囲気は一種独特なものだ。BMWというブランドイメージがそうさせているのか、主催者側の意図が働いているのかはわからないが、これだけ多くのライダーが集まって、それぞれがマイペースで愉しめるのはとても良いことだ。GSチャレンジのオモシロイところとは何なのか? 実際の参加者に聞いてみることにしよう。 |
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| 2008年も参加し、たまたまスキルチャレンジで2位に入賞したという、大阪から参加のkぞーさん。普段はツーリングで温泉と美味いメシを求めて走り、フィールドはもっぱらオンロードだとか。 「林道アタックをしようとは思わないけど、そのダートの先に温泉があれば躊躇せず走りますね。ここまでの道中は往復とも1人ですが、知り合いが何人か来ているので現地集合みたいなもんです。このイベントは、当たり前だけどGSばっかりで、なんだか特別な空間・独特な気がします。GSの愉しむフィールドは、年式が違えど同じなんですよね。そう言えば、ツーリングルートが昨年と同じで、しかも短くなっていたのにはちょっとがっかりですが、イベントの後のビールがまた美味いです。」 |
毎年6月第1週目の週末に開催されるジャパンGSチャレンジ。今年は275名のGSユーザーが思いっきり走り、遊び、愉しんだ。そのフィールドを4年にわたって作り上げたメーカーの努力は、2輪業界全体にとっても非常に有意義なものだと思う。またそのメーカーを影で支え、地元住民の理解を得るために尽力したイベント運営のスタッフたち。GSチャレンジはたくさんの人たちに支えられ、無事4回目を終えることが出来た。 海外メーカーで、しかもGSシリーズという単一モデルを主体としたこの愉しいイベントが、今後はメーカー、地域、ユーザーという関係を発展させ、メーカー主導のイベントから、日本の2輪文化の一部として定着して欲しいと思う。
来年の開催については未定だが、今年と同様、もしくはそれ以上のイベントとして盛り上がることを期待している。 |
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