アクティブサスペンション DDC を標準装備する S 1000 RR。非常に完成度が高い DDC だが、高度に電子化されたシステムは後からおいそれと手を加えられるものではなく、ショックユニットをカスタマイズする楽しみがスポイルされていた。そこに、この度 DDC 完全対応のリプレイスリアショックユニットが、アラゴスタからリリースされた。
スプリングのプリロードは、ナット調整式で無段階でのプリロード調整が可能。今回紹介しているのはプロトタイプのため、製品版とはスプリングのカラーが異なる。製品版ではオレンジのスプリングが使用されている。圧側のダンピングは、高速側と低速側がそれぞれ独立して調整可能。より精密なセッティングを実現する。ボディは高剛性なアルミ鍛造。ショックユニット自体に高い剛性を持たせているのもアラゴスタの特徴のひとつ。
シリンダーはアルミニウム 6082-T6 の押し出し成型で作られており、軽量かつ高剛性。耐熱性にも優れる。ダンパーは単筒構造とされるが、圧側/伸側の相互干渉が極めて少なく、精密な減衰力発生を可能としている。ボルトオン装着で、DDC に完全対応。ノーマルのリアショックと交換し、ハーネスのカプラーを繋ぐだけで、フルに性能を発揮する。アクティブダンパーの減衰力発生はノーマルと同様にソレノイドバルブ式を採用している。
アラゴスタは、ブランド名から輸入品と勘違いしがちだが、日本発のサスペンションメーカー。四輪の世界ではメジャーな存在で、近年はバイク用にも進出。当初は2本ショックのみの展開だったが、モノショック用の開発に着手。その第一弾として選ばれたのが S 1000 RR。開発ライダーを務めたのはモトラッド八千代のセールスマネージャーの原田 伸也さんだ。原田さんは、全日本ロードレース選手権や鈴鹿8耐などで活躍した経歴をもつ国際ライダー。BMW 用アラゴスタ製ショックユニットは、モトラッド八千代とのコラボレーションで生み出されたものなのだ。原田さんは、アラゴスタについてこう語る。
「最初はストリートで走ってみたのですが、セッティングの幅が広く、アジャストの効果がハッキリと出るので、使いやすいサスだなと感じました。やはりスーパースポーツは足周りがカタい。S 1000 RR も例外ではありません。アラゴスタはダンパーがしなやかですから、ギャップを踏んだ時のリアの突き上げは大幅に軽減できます。高速コーナーでの安定感も明らかに向上していますね。全体的に乗りやすさがカサ上げされるので、より積極的にライディングを楽しむことができるでしょう。
DDC はとても高性能なのですが、アジャストできる要素が少ないので、ライダー個々に合わせたセッティングを出しにくい面があります。アラゴスタは、基本性能の高さはもちろん、とにかくセッティングの幅が広いのが魅力。ストリートからサーキットのスポーツ走行まで、十分にカバーできます」
また、アラゴスタではパーソナルオーダーシステムという、フルオーダーでのショックユニットの製作が可能。そこも大きなメリットだ。
「BMW は車格が大きな車種が多いので、足着き性などの取り回しの面で、諦めてしまっているユーザーさんも少なくありません。アラゴスタなら、独自仕様のショックユニットを組めますから、ローダウンタイプでも走行性能を損なわない足周りが実現できます。そのアドバンテージを活かして、C 650 GT 用のショックユニットを作りました。足着きに悩んでいるオーナーさんは、ぜひ試してもらいたいパーツですね」
BMW カスタムの世界に、また新しい選択肢が加わった。しかも、かなり魅力的。これは見逃せないニュースだ。
アラゴスタはもともと四輪用パーツ。その素晴らしい性能をバイクにも使いたいと考えたモトテック代表の杉山 祐一さんの働きかけで、バイク用ショックユニットが誕生した。バイク用の開発にあたっては、オランダの技術者集団であるトラクティブが協力。同社は、WP 出身のスタッフが中心の、サスペンションのスペシャリストだ。2015年10月10日・11日、ツインリンクもてぎで開催される MotoGP カスタムビレッジに、モトテックのブース出展が決定。アラゴスタ製ショックユニットが装着された S 1000 RR も展示される予定だ。
右から、アラゴスタのバイク用サスペンション開発を手がけるモトテック代表の杉山 祐一さん。モトラッド八千代、モトラッド京葉の代表を務める関口 俊晴さん。原田 伸也さん。右は、アラゴスタの C 650 GT 用 PHASE1 1WAYアジャスター、価格は 10万5000円(税抜)。車高調整機能付きでローダウン可能。
住所/千葉県八千代市村上南2-19-1
定休/月曜
営業/火-土 10:00-19:00、日祝 10:00-17:30
Tel/047-486-1600
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原田 伸也