VIRGIN BMW | #19 BMW S1000RRと駆け抜けた1年間 S1000RRの楽しみ方

#19 BMW S1000RRと駆け抜けた1年間

  • 掲載日/2011年12月16日【S1000RRの楽しみ方】
  • 文・写真/淺倉 恵介
S1000RRの画像

レーシングライダー高田速人が、S1000RR を楽しみ尽くす様子をお伝えしてきたこのコラムですが、今回をもって最終回を迎えます。レース活動やツーリングなど、S1000RR を乗り倒した高田さんだから語れる S1000RR 論を交えつつ、今シーズンを振り返ります。

今、改めて考える
S1000RR というバイク

このところ実感しているのは、S1000RR というバイクがスーパースポーツとして日本国内でもしっかりと支持を得てきていることです。僕は、自分でも 8810R走行会 を主催していますが、ツインリンクもてぎ や筑波サーキットで、ライディングスクールのインストラクターや、走行会の先導を任せてもらうことも多いのです。そういった場所でも S1000RR の姿が目立ちます。ある走行会では、参加車両の3割ほどが S1000RR ということもありました。サーキットを走る S1000RR は本当に増えました。

S1000RR のようなスポーティなバイクを選ぶユーザーさんは、本当にスポーツラン好きなのだなと思いますが、どうも他車種に比べサーキットを楽しむユーザーの率が高いようです。この点こそが、S1000RR がライバル達とはひと味違うポイントなのだと思います。サーキットで S1000RR ユーザーさんとお話しして気付いたのですが、サーキットビギナーの方が多いのです。それも「サーキットを走るために S1000RR を買った」のではなく、「 S1000RR を買ったら、サーキットを走ってみたくなった」という方がほとんどです。

サーキットを走るのは、革ツナギなどの装備が必要だったり、事前に申し込みが必要だったりと、休日にフラッと峠に走りにいくことに比べれば面倒なことも多いし、お金もかかります。それでも「このバイクでサーキットを走ってみたい」と思わせるものが S1000RR にはあるのでしょう。

S1000RR はとても完成度の高いバイクです。それは、市販車最強レベルのパワフルなエンジンであったり、スタビリティの高い車体であったり、DTC を始めとする進んだ電子制御であったりと様々な要素が相互に作用し合っての成果なのですが、一番素晴らしいのはその全てが「乗り手が不安なく、気持ちよく走れるように」と考えられているところです。

BMW は、如何に安全かつ快適に走りを楽しめるか? を突き詰めてきたメーカーだと思います。「速さ」が重要視されるスーパースポーツというジャンルにおいては、「安全」や「快適」といった要素はある意味で犠牲にされても仕方ないと考えられてきた部分があります。ですが、BMW は S1000RR の開発時も自らのポリシーを曲げなかったのだろうと思います。安全性や快適性を、速さと同列に追求するというのは、スーパースポーツの成り立ちとして異色だといえるかもしれません。ですが、その BMW 流のバイク哲学を貫いた結果、他に類を見ない「安心して攻められる」 S1000RR というバイクが生み出されたのです。

車体に不安を感じれば、思い切ったコーナリングはできません。パワーデリバリーが雑では、強大なパワーも活かすことはできません。ですが、S1000RR は、そういった不安感とは無縁です。S1000RR に乗っている間、乗り手はただただライディングを楽しむことだけを考えていれば良いのです。より純粋に走りを楽しみたくなる、こんなバイクはなかなかありません。

S1000RRの画像
高田さんの今年のレース活動は、全日本の 第1戦鈴鹿サーキット大会 から始まった。鈴鹿8耐参戦は早々に決定していたので、8耐に向けたデータ収集を主な目的としてエントリー。ホイールサイズの変更など、様々なトライが行われた。
S1000RRの画像
S1000RRの画像
プロのレーシングライダーといえど、レースばかりをしているわけではない。高田さんのもうひとつの顔が、バイクライディングのインストラクター。スクールや走行会でインストラクターを務める他、自ら営むバイクのタイヤとメンテナンスショップ【8810R】でも走行会を主催。「楽しむ」ことをメインテーマに掲げる 高田速人流走行会 は、内容も盛りだくさん。大好評のタンデムサーキット走行は、目から鱗が落ちる楽しさだ。
S1000RRの画像
S1000RRの画像
今年一番のビッグイベントだった 鈴鹿8時間耐久ロードレース。【Team Tras】として、ペアライダーに寺本幸司選手を迎え参戦。予選は18位、決勝はマシントラブルを乗り越え、15位という素晴らしいリザルトを残した。

S1000RR と過ごした
高田速人の2011年

思い返せば、僕のこの一年は S1000RR を中心に回っていました。今年の大きな目標であった 8耐 では、苦しみながらも良い結果を残すことができました。8耐は決勝レースだけでなく、事前準備にも大きな労力がかかりますし、もちろん多くの方の手助けが必要です、共に戦った 【Team Tras】 のメンバーの皆さんにはいくら感謝してもしきれません。

何戦かエントリーした全日本では、なかなか結果が出せず悩んだこともありましたが、最終戦の 鈴鹿大会 ではシングルフィニッシュという望外の成績を得て、気持ちよくシーズンを終えることができました。ただ、最終戦は【Team Tras】のメンバーがあまり揃っていなかったので、高いポジションでゴールするところを皆に見てもらえなかったことが残念です。できればチームの仲間達と、喜びを分かち合いたかったと思います。

仲間といえば、今年は多くの新しい出会いがあった年でもありました。それも、S1000RR で走ったおかげかもしれません。このコラムでも何度か登場していただいている【BITO R&D】の美藤さんは、コンストラクターとしてもちろんお名前は存じ上げていましたが、親しくさせていただいたのは初めてでした。兵庫の【BITO R&D】を訪ね、いろいろなお話を伺えたのはとても貴重な体験です。【Tras】の新田さんは、8耐だけでなく僕のレースに何度も足を運んでくださいましたし、公私共々お世話になりっぱなしです。この場を借りてお礼いたします、ありがとうございました。そのお二方以外にも、ここではとても書ききれない大切な出会いがたくさんありました。周りの皆さんに助けられ今の僕があるのだと、本当にそう思います。

このコラムを始めてから、ユーザーさんから「 S1000RR を買おうと思っているのですけど…」と、相談を受けることも増えました。もちろん、みなさん僕が S1000RR でレースをやっていることをご存知の上での質問です。そういう時はレース活動を通じて得た、僕なりの S1000RR 感をお話しするのですが、皆さんとても真剣に聞いてくださいます。実際に S1000RR を購入された方もいらっしゃいましたし、S1000RR というバイクの素晴らしさを、皆さんにお伝えするお手伝いができたのなら嬉しく思います。僕の ブログ やこの コラム を読んでくださっている方も多く、連載を続ける上で励みにもなりました。読者の皆さん本当にありがとうございました。

現時点では、まだ何も決まっていませんが、来年も S1000RR でレースができたら…と考えています。となると、海外で発表された新型 S1000RRの存在も気になります。かなりポテンシャルが上がっていると聞きますし、一刻も早く乗ってみたいものです。

このコラムは、今回で一旦幕を閉じますが、いずれまた皆さんとお会いできる機会もあるかと思います。その時は、是非また S1000RR と高田速人をよろしくお願いいたします。

高田速人さんへのご声援、および本コラムのご愛読、まことにありがとうございました!

VIRGIN BMW.com 編集部

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S1000RR を通じて、様々な人物との交流もあった。【BITO R&D】代表の美藤 定氏を訪ね、【Tras】代表の新田正直氏と共に兵庫まで足を運んだことも。コンストラクターとして超一流レベルにある美藤さん、新田さんとの交流は、高田さんにとっても貴重な体験となったようだ。
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高田さんが、今年印象に残ったレースとして上げている、MFJ全日本ロードレース選手権の最終戦、MFJグランプリ鈴鹿大会。2ヒート制で行われたこのレース、2レースとも雨に祟られてしまったのだが、雨が得意な高田さんにとっては大チャンス。1レース目は12位、2レース目は9位を獲得し、S1000RRの全日本JSB1000クラスの最高リザルトを更新した。
国際ライダー MFJ公認インストラクター
高田 速人
バイクのタイヤとメンテナンスの専門店「8810R」代表。1976年生まれ、東京都出身。中学2年でミニバイクレースを始め、高校卒業後はロードレースにステップアップ。1996年に国際ライダーへと昇格、全日本選手権や鈴鹿8時間耐久レースなど、豊富なレース経験を持つ。2010年は 【Tras & G-TRIBE + 8810R】 チームによる、S1000RR鈴鹿8耐への挑戦にライダーとして参加。2011年は S1000RR を駆り 、【Team Tras】 の第1ライダーとして鈴鹿8耐に参戦。15位獲得に貢献した。
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