VIRGIN BMW | #18 プロを通じて感じる、S1000RRの素晴らしさ S1000RRの楽しみ方

#18 プロを通じて感じる、S1000RRの素晴らしさ

  • 掲載日/2011年11月25日【S1000RRの楽しみ方】
  • 文・写真/淺倉 恵介
S1000RRの画像

忙しいレースシーズンを終え、一息ついたところの高田さん。今回は、鈴鹿8耐でお世話になった、ビトーR&Dを訪ねます。現地では S1000RR でツーリング、ストリートでの S1000RR の良さを再認識した様子です。

美藤さんと、新田さんとプチツーリング
S1000RR の良さを再認識

MFJ 全日本ロードレース選手権の最終戦、鈴鹿で開催された MFJ グランプリ参戦を終え、僕と S1000RR の今年のレースシーズンは終わりを迎えました。8耐と全日本3戦、計4レースを走っただけなのですが、随分と忙しかった気がします。レースはレースウイークだけでなく、事前テストや練習にかける時間も必要です。4レースだけの参戦とはいえ、かなり時間がとられるものなのです。自分の店を空けることも多く、お客様にも随分とご迷惑をおかけしました。これからの季節は、なるべく店に居る時間を多くするつもりです。タイヤ交換とメンテナンスをお考えの方は、是非 【8810R】 にご連絡ください。

さて、レース漬けの慌ただしい日々から解放され、ようやく落ち着いてきたこのところ、【BITO R&D】(ビトー・アール・アンド・ディー) 代表の美藤さんが、S1000RR を手に入れたとの情報が飛び込んできました。当然、S1000RR は BITO R&D 流のカスタマイズが施されているはずです。美藤さんの “神の手” が、S1000RR をどう変えるのか? これは大いに気になります。美藤さんには、8耐で大変お世話になりましたし、8耐でご協力いただいたお礼を兼ねて、再び BITO R&D を訪ねることにしました。前回の訪問と同じく、8耐を共に戦った 【Tras】(トラス)代表の新田さんにもご一緒していただきました。

久しぶりにお会いした美藤さんは、以前にも増してお元気そうです。いきなり押し掛けた我々 【Team Tras】 一行を、お忙しい中いやな顔ひとつせず暖かく迎えてくださいました。今回、新田さんと僕はバイクを持ち込んでいました。新田さんは8耐仕様の K1200R、僕はもちろん S1000RR です。「せっかくですから…」と、ご挨拶もそこそこに3人でツーリングにでかけることになったのです。

BITO R&D は兵庫県の日本海側、豊岡市に会社を構えています。山と海に囲まれた自然が豊かな土地で、BITO R&D の工場のすぐそばにもワインディングがあります。アップダウンが激しく、ほとんどのコーナーが中低速コーナーで構成されている、典型的な日本のワインディングといった峠道です。実はこの峠、美藤さんが日頃テストコースとして使っているところだそうで、なかなか楽しいコースです。ノーマルの S1000RR でワインディングを走るのは、僕にとって久々だったのですが、改めて S1000RR というバイクの懐の深さを感じることが出来ました。

S1000RR というバイクは、少しでも安全性を高め快適に走りを楽しめるようにと考えて造られたバイクだと思っています。世界トップレベルのパワーを持っているのに扱いやすく、その速さを誰もが楽しむことができる。事実、S1000RR に試乗したライダーは、皆「速くて乗りやすい」と口を揃えます。その秘密は、車体のセッティングであり、DTC などの電子デバイスのサポートの存在にあるのですが、とにかく乗り手に優しい。その「優しさ」は、万人向けであるがため、攻め込んだギリギリの領域での余裕を持たせてあるというか、ある意味で操縦性にダルな部分があります。レースを戦う上では、その「優しさ」をネガに感じることがありました。ですが、今回ワインディングを走って、その「ダル」な部分がストリートにピッタリなキャラクターであると再認識しました。

一部の公道レースを除き、レースが行われるのはサーキットです。レースは危ないスポーツだと思われがちですが、危険性を統計的に見れば他のスポーツと実は大差ありません。ですが、アクシデント時のダメージが、他と比べて大きいことは事実です。そのため、サーキットは安全性の確保を重視して設計されていますし、緊急医療体制も整えられています。バイクでスピードを出すのなら、サーキット以上に安全な場所はないでしょう。その点、不確定要素の多いストリートは、ある意味で危険に満ちているともいえます。そんなストリートでこそ、S1000RR の安全性の高さが光ります。路面状況が悪い時に、Race ABS と DTC がどれだけ頼りになるか? 初めて走るワインディングで、過敏すぎないハンドリングがどれだけ強みになるか? 今回、ワインディングを走り、それを強く感じました。S1000RR は、本当に素晴らしいバイクです。

美藤さんも、新田さんも、楽しげに走っておられました。美藤さんにとっては走り慣れたコースですから、なかなかにハイペース。走っているところを見ても、お話ししていても、美藤さんは本当によくバイクを知っている方だなと感じます。そして、今も現役のライダーであることが素晴らしいと思います。美藤さんがパーツの開発を行う際には、まずノーマルの車両で徹底的に走り込むのだそうです。その上で「この車両はどの部分をモディファイすればより良くなるのか? そのためにはどんなパーツが必要なのか?」を考えるとのこと。コンピュータによるシミュレーションが進化し、実車を見ずにデータだけで作られていくパーツも少なくない現代において、実走にこだわった製品開発を続ける美藤さん。BITO R&D 製のパーツが高い評価を得ている理由は、そこにあるのではないかと感じました。

道端にバイクを停めて少し休憩したところ、バイク談義が止まらなくなってしまいます。美藤さんと新田さんはモノ造りのプロ、僕は乗り手と立場は違いますが、3人ともバイクが好きで好きで、最終的にバイクに関連した仕事に辿り着いた人ばかりですから、当然ですね。美藤さんはホイールを、新田さんはカーボンパーツの分野で、それぞれモトGPのワークスマシンにパーツを供給するサプライヤーです。モトGPはバイクレースの最高峰、そこで使われるパーツも当然世界最高の性能と品質を求められます。そんな “プロ中のプロ” であるお2人との会話は、いちいち勉強になることばかりです。キャリアも経験もハンパでないお2人ですから、飛び出してくるエピソードが本当に面白い。興味深いお話しもたくさん伺えたのですが、ここでは紹介するスペースがありません。いつかご紹介する機会が持てればと思っています。短い時間でしたが、美藤さんと新田さんの3人で走ることができたのは、とても楽しく、また貴重な経験でした。美藤さん、新田さん、本当にありがとうございました。

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美藤さん、新田さん、高田さんの3人は、3台のBMWを連ねてツーリング。秋の穏やかな日差しの中、短い時間ではあったが走りを楽しんだ。
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高田さんはノーマルのS1000RR。【8810R】走行会の、タンデム走行でも大活躍の一台だが、久々にワインディングを走り、その素性の良さに改めて驚かされたとのこと。
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美藤さんはBITO R&D製パーツを装着した、S1000RRカスタムで走行。このマシンをベースにして、S1000RR用パーツを多数と開発中とのことだ。
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新田さんの駆るK1200Rは、なんと2006年に鈴鹿8耐に参戦した時のTカー。外装パーツは、もちろん 【Tras】製のフル・ドライカーボン。8耐のTカーとはいえ、レース時からの変更は保安部品を装着した程度。元々、レーサー自体がほぼノーマルだったのだ。
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休憩時のバイク談義が止まらないのは、プロフェッショナルも一般ライダーも変わらない。3人とも、元々 “ド” の着くバイク好きなのだから当然だ。“バイク業界人” である前に、そもそもが “バイク乗り” なのだ。

S1000RR “BITO R&D スペシャル” を
高田速人がインプレッション

スリップオンマフラーは、コンベンショナルなラウンドタイプのサイレンサーを採用。もちろん、BITO R&D が得意とするフルチタン製で、大変軽く作られています。抜けがよくなった効果で高回転域の伸びが実に気持ち良く、猛々しさを増した排気音も、乗り手の気分を盛り上げてくれます。抜けがよくなったせいで、若干燃調が薄い回転域の存在も感じられましたが、これはリセッティングで十分カバーできる範囲です。

そして BITO R&D といえば、やはり “JB-MAGTAN” ホイールです。とても軽量なホイールですから、押し歩きの軽快さからして違います。跨がってバイクを起こすだけでも軽さが体感できますし、走り出せば切り返しの鋭さは段違いです。S1000RR のノーマルホイールは、ノーマルパーツとしては相当軽い部類に入るのですが、やはり重量の面ではマグネシウム鍛造ホイールにはかないません。

また、見逃せないのが剛性のバランスです。ホイールは軽くさえあれば良いというものではありません。過減速でかかるGに負けない剛性、ギャップなどから受ける衝撃に耐え得る強度と、ショックを吸収するしなやかさも必要です。公道で使用するなら耐久性も重要になります。そのあたりのバランスが JB-MAGTAN はとても素晴らしい。

この S1000RR はブレーキ性能も向上しているのですが、実はブレーキ関係には一切手が入れられていません。では、何故ブレーキ性能が上がったのかというと、これもホイール交換の効果なのです。JB-MAGTAN は、ノーマルホイールと比べはるかに高い剛性を持っているので、ブレーキング中にホイールがたわむ量が小さくなっています。そのため、乗り手にはしっかりとした剛性感が伝わってきますし、ホイールが力を逃がさないのでブレーキ操作に対する制動力の立ち上がりもリニアになり、よりコントローラブルなブレーキ操作が可能になったというわけです。

足周りが全体的にシャキッとして、乗り味がソリッドさを増しています。ホイールを交換しただけで、サスペンションをグレードアップしたような効果まで得ているのですから、JB-MAGTAN の効果は絶大ですね。

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このS1000RRは、前後ホイールにマグネシウム鍛造ホイール、JB-MAGTANのJB-4タイプを装着。マフラーをオリジナルのスリップオンマフラーに交換し、エアフィルターはBMC製を使用する。スイングアームは、ノーマルをベースにクイックリリース加工を施した耐久レース仕様。
S1000RRの画像
S1000RRの画像
ホイールは BITO R&D の代名詞、鍛造マグネシウムホイールJB-MAGTANのJB-4タイプを装着。フロントホイールには、ノーマルのブレーキローターに合わせた、専用のインナーローター兼ローターハブが付属する。DTCセンサー対応品で、ボルトオン装着が可能。価格は前後セットで36万7500円。
S1000RRの画像
ホイールは BITO R&D の代名詞、鍛造マグネシウムホイールJB-MAGTANのJB-4タイプを装着。フロントホイールには、ノーマルのブレーキローターに合わせた、専用のインナーローター兼ローターハブが付属する。DTCセンサー対応品で、ボルトオン装着が可能。価格は前後セットで36万7500円。
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JB-POWER チタンスリップオンマフラーは、テールパイプ以降を交換。BITO R&D が得意とするフルチタン製で、テールパイプは手曲げで製作されている。価格は11万5500円。
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スイングアームはノーマルを加工し、リアアクスルを耐久レース対応のクイックリリースタイプに変更している。【Team Tras】のS1000RR鈴鹿8耐レーサー用として開発されたものだが、実戦を経て更に進化した形状が持たされている。加工はノーマルスイングアーム単体での持ち込みが基本。JB-POWER アルミスイングアーム クイックチェンジキットは14万9100円、加工工賃は2万1000円。
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エアフィルターは、BITO R&D が日本総代理店を務めるイタリアのBMC製を使用。S1000RR用としては純正リプレイスフィルター(写真下右/1万2075円)、フィルターコットンを変更し更に吸入効率が高められたレーシング・フィルター(写真上右/1万3125円)、パネルにドライカーボンを採用したカーボン・レーシング・フィルター(写真下左/5万0400円)の3タイプをラインナップ。全て、洗浄しての再使用が可能。
S1000RRの画像
カーボン・レーシング・フィルターは、贅沢にもパネルの素材にドライカーボンを使用している。また、パネルに独自形状を持たせることで、エアボックス内の空気の流れを最適化。フィルターのコットンはレーシング・フィルターと同様だが、より高い吸入効率を実現している。
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このマシンは、2006年に【ボクサースポーツクラブ】がK1200Rで鈴鹿8耐に挑戦した時のTカーを、公道仕様にモディファイしたもの。外装は【Tras】製のフル・ドライカーボン。ライト形状は8耐マシンとは異なる。マフラーは【ササキスポーツ】、タンクは【ビーター】製の耐久レース用アルミタンクに変えられているが、基本的にはノーマル車両。
国際ライダー MFJ公認インストラクター
高田 速人
バイクのタイヤとメンテナンスの専門店「8810R」代表。1976年生まれ、東京都出身。中学2年でミニバイクレースを始め、高校卒業後はロードレースにステップアップ。1996年に国際ライダーへと昇格、全日本選手権や鈴鹿8時間耐久レースなど、豊富なレース経験を持つ。2010年は 【Tras & G-TRIBE + 8810R】 チームによる、S1000RR鈴鹿8耐への挑戦にライダーとして参加。2011年は S1000RR を駆り 、【Team Tras】 の第1ライダーとして鈴鹿8耐に参戦。15位獲得に貢献した。

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