#14 2011 鈴鹿8耐参戦記完結編 【前編】
- 掲載日/2011年10月19日【S1000RRの楽しみ方】
- 文・写真/淺倉 恵介
昨年の鈴鹿8耐、初参戦の S1000RR は18位というリザルトを獲得。昨年以上の成績を求めて始動した 【Team Tras】 が、いよいよ8耐の決勝レースを迎える。果たして目標は達成できるのか? お待たせしました! 高田さんと 【Team Tras】 の8耐参戦ストーリー、完結編 【前編】 です。
ようやく迎えた8耐決勝
【Team Tras】 かく戦えり
すっかり時間が空いてしまいましたが、いよいよ8耐の決勝についてお話ししたいと思います。迎えた決勝日は7月31日。この日は、朝6時45分からピットウォークがあり、8時から30分間のフリー走行が行われるというスケジュールのため、チームは早朝からサーキットに入ります。それでも僕達ライダーは6時半くらいにサーキット入りしましたが、レース前のいろいろと準備があるメカさんやヘルパーの皆さんは、5時にはパドックで働き始めています。サーキットの朝は早いのです。
そしていよいよレースがスタートします。今年の8耐のレース開始時刻は午前10時30分、例年より1時間早いスタートとなりました。これは東日本大震災の影響による電力不足に配慮したものです。サーキットは巨大施設ですから、レース中に使用される電力は相当なもの。レースが1時間早く終了すれば、その分だけ照明を早く落とすことができ、電力消費量の節約につながるというわけです。実際にどれくらい電力が節約できたかはわかりませんし、レースを開催すること自体に否定的な意見があるのも確かです。ですが、レース界も震災からの復興に向けた意識を持っているということだけは、皆さんにも知っていただければと思います。
長丁場の耐久レースでも、スタート時点での順位は大きな意味を持ちます。さすがにスプリントレースほどではありませんが、やはりスタートで少しでも前にいるにこしたことはありません。耐久レースのスタートライダーは、通常チームのベストタイムを記録したライダーが務めるものです。ですので、我が 【Team Tras】 のスタートライダーは、寺本選手が担当することになりました。寺本選手は、ここで素晴らしい仕事をしてくれました。18番グリッドから見事なロケットスタートを決め、第1コーナーへと飛び込んだ時には12位付近まで順位を上げていたのです。これは見事という他ありません。
エンジン始動不能!!
ひとつめのトラブルが発生
寺本選手は順調に周回を重ね、ポジションをキープしたままピットに帰ってきました。せっかくの好ポジション、ここで第1ライダーである僕が順位を落とすわけにはいきません。8耐で上を走っているようなライダーは、皆経験値が高く速いライダーばかりですから、気の抜けた走りをすれば、すぐに追い越されてしまいます。全力で速く走る、けれど焦らず絶対に転倒しない走りをしなければなりません。これが耐久レースの難しいところであり、またライダーとしてのやりがいを感じるところです。僕もライダーとして、とにかくベストを尽くして走ります。フルタンクで重くなったマシンの挙動に手こずりつつ、なんとか自分の担当周回数を走り抜き、順位を落とすことなく寺本選手へバトンを渡すことができました。
その後のレース展開は順調そのもの。ライダー交代時に一時的なポジションダウンはありますが、それは他のチームがピットインすれば回復できます。これは、ピット作業がスムーズに進んだことが大きなファクターです。マイスターの皆さんは、それぞれの役割をしっかりと意識して、見事な仕事ぶりを見せてくれました。
レース開始から3時間 【Team Tras】 は安定して12位をキープしていました。このままいけばシングルフィニッシュも十分に有り得る。そう考え始めていた矢先に、思わぬトラブルが僕たちに降りかかってきたのです。僕が2回目の走行を終え、寺本選手にライダー交代したところ、エンジンが始動しなくなってしまいました。セルボタンを押してもセルモーターが回ってくれません。ここでのチームの判断も的確でした。慌てて故障箇所を調べたりせずに、すぐに押しがけでのエンジン始動にチャレンジしたのです。スリッパークラッチを標準装備する S1000RR は、押しがけではエンジンがかかりにくいのですが、メカニックの皆さんが渾身の力でマシンを押し、なんとかエンジン始動に成功しコースへと復帰することができました。
トラブルの原因は、スターターリレーの不良であることが症状から推測できました。普通は壊れる部分ではないのですが、予想以上の熱的負荷がかかり不調となったようです。なんとかレースを諦めずに済んだ 【Team Tras】 でしたが、この始動不良は、その後もピットインの度に僕たちを悩ませることになるのです。
- 【前の記事へ】
#13 高田速人流サーキット走行会~その2~ - 【次の記事へ】
#15 2011 鈴鹿8耐参戦記完結編 【後編】
関連する記事
-
S1000RRの楽しみ方
#12 耐久レースの厳しさ、チームワークの意味とは?
-
S1000RRの楽しみ方
#08 強力なサポーター BITO R&Dの登場!
-
S1000RRの楽しみ方
#09 Team Tras 8耐直前情報!
-
S1000RRの楽しみ方
#15 2011 鈴鹿8耐参戦記完結編 【後編】
-
S1000RR鈴鹿8耐参戦記【英語】
#04 Finishing the ‘Suzuka 8hours’
-
S1000RRの楽しみ方
#11 迎えた公式予選、目指せ上位グリッド!