VIRGIN BMW | #04 バイクの聖地、鈴鹿サーキットへ! S1000RRの楽しみ方

#04 バイクの聖地、鈴鹿サーキットへ!

  • 掲載日/2011年06月01日【S1000RRの楽しみ方】
  • 文・写真/淺倉 恵介
S1000RRの画像

高田さんと S1000RR のレースシーズンがいよいよ開幕。第1戦に選んだのは、MFJ全日本ロードレース選手権の開幕戦「SUZUKA 2&4 RACE」。目標である鈴鹿8時間耐久レースに向け、気合い十分で挑んだのだが…

2011年の初レースは
バイクの聖地、鈴鹿サーキット

こんにちは、高田速人です。僕と S1000RR は、先日鈴鹿サーキットで開催された『 SUZUKA 2&4 レース』に参戦してきました。今回は、そのレースについてお話ししたいと思います。レース結果については、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。正直なところ、納得のいく結果ではありませんでした。ベストからはほど遠いタイムしか記録できませんでしたし、順位の方も19位に終わってしまい、ポイントこそ獲得したものの満足のいくリザルトとはいえません。応援してくれた皆さんには、申し訳なく思います。

ですが、実戦を走ったことでいろいろと得るものがありました。僕の今年のレース活動は『鈴鹿8時間耐久ロードレース』参戦を目標に行っています。今回のレースは、その8耐が行われる鈴鹿サーキットでのレースですから、セッティングやデータ収集のために、どうしても走っておきたかったレースです。なかでも重要な意味合いがあったのが、リアホイール周りのテストでした。

僕がレースに使っている S1000RR は、基本的には昨年の8耐で使ったマシンです。その中で、今年大きく変更したのがリアタイヤのサイズ変更です。昨年は 17 インチサイズのリアタイヤを使用していましたが、今年はそれを 16.5 インチに変更しました。16.5 インチのタイヤはレース専用の特殊なサイズです。現時点では世界選手権のモト GP や WSBK、国内のレースでは JSB1000など限られたレースでしか使用されていません。将来的には 17 インチに移行するとも言われていますが、現時点ではトップカテゴリーのレースでは主流であるといえるでしょう。

昨年はフロント 16.5 インチ、リア 17 インチという組み合わせでセッティングを進め、最終的にはなかなか仕上がってきた実感がありました。ですが、今年は更なるポテンシャルアップを目指し、リアタイヤの 16.5 インチ化に挑戦することにしたのです。今回いまひとつなレース結果に終わったのは、この 16.5 インチに合わせたセッティングを詰めきれなかったことにあります。昨年使用していた 17 インチタイヤとは大きくキャラクターが異なり、サスセッティングはもちろん、車体のセットアップも大きく見直す必要が出てきました。それを確認できたこと、また“こうすれば良くなるだろう”というセッティングの方向性は掴むことができたように思えます。レース結果は残念でしたが、本番である8耐に向け、大きな成果を得ることができたレースでした。

8耐といえば、今回は大きなご報告があります。8耐のペアライダーが寺本幸司選手に決定しました。寺本選手は長年全日本で活躍してきたベテランです。近年はボルドール24時間耐久レースに参戦するなど活躍の場を拡げていますし、開発ライダーとしての腕も確かな、経験豊富なライダーです。チームを組むのは今回が始めてですが、共に戦う仲間として確かな手応えを感じています。皆さん、期待していてください。

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今年最初のレースで懸命な走りを見せる、高田さんとS1000RR。マシンは基本的に昨年の全日本最終戦鈴鹿Rd.のときから変更はないが、リア タイヤのサイズを17インチから16.5インチにチェンジ。そのため、車体のセットアップを全面的に見直すことになった。
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今回の参戦チーム【 Tras & 8810R + NKB 】の面々。全日本選手権参戦チームとはいえ、プライベートチームの Tras & 8810R + NKB のスタッフはかなりの小所帯。バージンBMW読者にはお馴染みの、Trasの新田さんの姿も。Tras は高田さんのレース活動をサポートすることが決定している。
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鈴鹿8時間耐久レースで高田さんとペアを組むことが決定した、寺本幸司選手が応援に駆けつけた。寺本さんは1971年大阪生まれの39歳。レースファンにはGSX-R1000、GSX-R600を駆っての活躍が印象強いだろう。昨年からは世界耐久選手権にも参戦、今年もボルドール24時間耐久レースで完走を果たしている。

見ているだけがレースじゃない
マニアックなレースの楽しみ方を紹介

さて、ここでレースの内側にいる立場から、ちょっとした豆知識を披露したいと思います。実は今回のレースでは、表彰台圏内にあるトップの数台を除けば、僕を含めほとんどのライダーがベストタイムから1秒~2秒落ちのタイムしか出せていません。マニアックなレースファンなら、このことに気付いた人も居るかもしれませんね。実は、これには理由があるのです。

レース名に『2&4』とある通り、今回のレースは4輪のフォーミュラーカーのレースが併催される、珍しい形態のレースでした。この4輪の存在が、レースを難しくしていたのです。レース用のタイヤは、高いグリップ力を生み出すことと引き換えに、とても寿命が短くなっています。摩耗も激しいので、コース上にはタイヤのカスが多く残ることになります。このタイヤのカスが“曲者”で、アスファルトの表面をタイヤのカスがコーティングしたようになってしまうのです。そのため、通常のアスファルト路面で性能が発揮できるように作られたタイヤが、本来持つポテンシャルを発揮できないのです。

また、4輪のフォーミュラーカーは、とても車高が低いので路面のちょっとした凹凸で簡単に車体の底面を擦ります。その車体と路面が擦れ合った跡も、バイクにとっては有り難くない路面コンディションとなるのです。

僕だけでなく全体的にタイムがパッとしないのは、そういった理由があったのです。鈴鹿サーキットの公式ホームページ には今回のレース結果や、予選から決勝までのタイムなどが掲載されていますので、興味がある人は目を通してみてください。昨年のレースタイムと比べてみれば、面白い現象が発見できると思います。レースは観ているだけで単純に楽しいものですが、こういったデータと照らし合わせるなどすると、違った視点からも楽しむことができます。まずはサーキットで生のレースを観戦、そしてその後はデータを検証して、レース結果のウラを読む。そこまですれば相当なレース通ですし、もっとレースを楽しめると思います。

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JSB1000クラスの予選はノックアウト方式を採用。ノックアウト方式予選では、走行時間を Q1、Q2、Q3 の3つのセッションに分割。それぞれのセッションで、上位のマシンだけが次のセッションに進出できるシステムをとっている。各セッションの間にはインターバルが設けられ、そこでセッティング変更やタイヤ交換も行われる。全日本JSB1000クラスでは、予選から決勝までを3セットのタイヤで戦わなければならない、タイヤ本数制限のレギュレーションがある。予選でQ3に進出すると、基本のタイヤ3セットに加え、更に1セットのタイヤが使用可能になるため有利。そのため、レースウィークを通してのタイヤマネジメントを念頭においた戦略が必要になる。一発が速いだけでは、レースに勝つことはできないのだ。
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予選中は度々ピットイン、セッティング変更やタイヤ交換が行われる。ライダーが少しでも速く走れるマシンに仕上げるため、メカニックも真剣だ。予選はノックアウト方式を採用。高田さんはQ2まで進出し、17番グリッドを獲得した。
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予選終了後にPCで走行データを確認。応援にかけつけたTrasの新田さん、メカニックを務めるモトラッド鈴鹿のマイスター岩間さんと、セッティングについてミーティング。
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パソコンに映し出されているのはGPSロガー『デジスパイス』の画面。ラップタイムをはじめ、各コーナーの走行ラインや区間タイムなど、様々な走行データを記録、走行後にPC上で確認することができる。
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これは『デジスパイス』の本体。マッチ箱程度の大きさしかない。車体への配線などは必要なく、テープなどで貼付けるだけで使用できる。「どのコーナーが速く、どのコーナーが遅い」などが確認できるため、セッティングを考える際の情報として活用できるのだ。
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S1000RRをメンテナンスする岩間メカニック。マシンがピットにいる間、セッティング変更やタイヤ交換などメカニックには休む暇はない。岩間さんは BMW のマシンが8耐に参戦する際は、常に現場へ駆けつける。
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高田さんがレースで使用しているタイヤはダンロップ製。ピットにダンロップのスタッフが訪れて情報交換。タイヤメーカーのサービススタッフは、ライダーにタイヤ選択のアドバイスをしたり、ライダー側の意見を聞き取り開発スタッフに伝えるなど、レースの重要な役割を果たしている。
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高田さんの実兄、慎吾さんもチームのクルーとして参加。慎吾さんは、自らもレース経験を持つライダーであり、兄として高田さんのレース活動をサポートしてきた人物。
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決勝レース前に行われるフリー走行で、なんと高田さんがトップタイムを記録! 実は走行開始直後にセーフティーカーが入り、本格的にタイムが上がる前に起きた出来事。とはいうものの、リーダータワーのトップにゼッケン17 高田速人が上がったのは事実なのだ。
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自分たちのピットへ向かうピットロード上の高田さん。一瞬雨が降ることもあったのだが、高田さんの出場したJSB1000クラスは、予選、決勝とも好天に恵まれ真夏を思わせる暑いレースとなった。
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フリー走行中にピットイン。ヘルメットも外さずに自らインジェクションとDTCのセッティングを変更する。セッティング変更を終えると、その効果を確認するためにコースへ飛び出していった。
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S1000RRはサブコンなどの補器類を使用せず、インジェクションなどのセッティング変更が可能。このコネクターと専用プログラムをインストールしたPCを使用すれば、インジェクションセッティング、DTCの効き方、シフターのタイミング、ピットレーン速度リミッターの設定などが可能となる。
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高田さんとS1000RRはなかなかの注目度の高さ。観戦者がピットロードを歩くことができる『ピットウォーク』では、多くのレースファンが押し寄せていた。
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サムアップも凛々しく、ファンに応える高田さん。ピットウォークはレーシングマシンやライダーを間近に見ることができるまたとないチャンス。レース観戦にサーキットを訪れたら、是非とも参加したい。
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決勝レース直前のグリッド上。いつも笑顔を絶やさない高田さんだが、さすがにレース前には表情が引き締まる。
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いよいよ決勝レースがスタート。6列目17番グリッドからダッシュを決めた高田さん。3台ほどを抜きさって第1コーナーへ進入。周回数の少ないスプリントレースでは、スタートの重要度はとても高い。
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無線の使用が禁止されている2輪のレースでは、ピットからのサインだけがライダーの得られる情報の全て。ライダーは、周回数やラップタイム、順位から自らの置かれた状況を判断、どこでラッシュをかけるかなどのレース展開を組み立てるのだ。
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中盤グループで先頭を走っていた高田さんだったが、タイヤの消耗とともに徐々に順位をダウン。最終的には予選から2つ順位を落とした19位でフィニッシュした。
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レース終了後、ツナギも脱がずにチームでミーティング。悔いが残るレース結果となったため、表情は硬い。だが、次のレースに向けて、有効なデータ収集ができた。今後のレースにも注目だ。
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決勝レースを走りきったリアタイヤ。わずか15周使用しただけなのだが、完全に使用限界を超えている。表面は相当荒れた状態。レース後半は、かなりグリップレベルが落ちていたようだ。
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ピットを訪れた熱心なファンに対し、気さくにサインに応じる高田さん。こうしてライダーと触れ合う機会がもてるのは、実際にサーキットに足を運んだ人だけの特典だ。
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ライダーである高田さんも、レース終了後の片付けを率先して行う。大きなチームとは違い、少人数のプライベートチームらしい光景。
国際ライダー MFJ公認インストラクター
高田 速人
バイクのタイヤとメンテナンスの専門店「8810R」代表。1976年生まれ、東京都出身。中学2年でミニバイクレースを始め、高校卒業後はロードレースにステップアップ。1996年に国際ライダーへと昇格、全日本選手権や鈴鹿8時間耐久レースなど、豊富なレース経験を持つ。2010年は 【Tras & G-TRIBE + 8810R】 チームによる、S1000RR鈴鹿8耐への挑戦にライダーとして参加。2011年は S1000RR を駆り 、【Team Tras】 の第1ライダーとして鈴鹿8耐に参戦。15位獲得に貢献した。

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