VIRGIN BMW | #06 S1000RRは、ココがスゴい S1000RRの楽しみ方

#06 S1000RRは、ココがスゴい

  • 掲載日/2011年06月30日【S1000RRの楽しみ方】
  • 文・写真/淺倉 恵介
S1000RRの画像

今回は高田さんの視点から、S1000RR というバイクが他と何が違うのかを考えてみる。レーシングライダーとしてはもちろん、バイクショップのスタッフとして働いていたこともある高田さんだけに、バイクを評価する “目” は的確。サーキットだけでなくストリートも走り込んで見いだした、S1000RR のメリットとは…?

BMW 得意の電子制御は
S1000RR でも威力を発揮

鈴鹿8耐まで、残すところ1ヶ月ほどとなりました。8耐に向けて S1000RR にもいろいろと手を加えているところです。好成績を収めることができた昨年より、更に上の順位獲得を目指して日々頑張っています。皆さん、応援をお願いします!

さて S1000RR ですが、レースや8耐に向けたテストを通して、かなり走り込んできた実感があるのですが、乗る度に “よく出来ているなあ” と感心させられる部分があります。それは DTC です。エンジンはチューニングが不要なくらいパワフルですし、シャシーもストリートスポーツとしてかなり高いバランスを持っています。ですが、なにより BMW らしさ、BMW の先進性を感じられるのは DTC の電子制御です。

DTC は、いわゆるトラクションコントロールシステムです。トラクションコントロールシステムとは、簡単に言えばエンジンパワーを効率よく路面に伝えるために制御を行う装置です。一番解りやすい効果は、加速時にはムダなホイールスピンを減らし、確実にマシンを前進させるようにしてくれること。タイヤのスリップはパワーロスに繋がりますし、なによりスリップ中タイヤは本来のグリップ力を発揮できていないので危険性も高まります。そんな時、不要なパワーをカットして “安全” に “速く” 走らせてくれるのが DTC なのです。

S1000RRの画像

S1000RR では DTC が介入すると、メーターパネルのインジケーターが光って、DTC が作動状態にあることを表示します。なので S1000RR でサーキットを走ると、DTC が頻繁に介入していることに皆さん驚かれます。日頃感じているより、リアタイヤはスリップしているということですね。とは言うものの、実際に走っていて DTC の介入を体感することは、インジケーターが光ること以外ではあまりありません。そこが DTC の素晴らしいところです。

トラクションコントロールシステム自体はそれほど珍しくなくなってきましたが、S1000RR の DTC は非常に完成度が高いと言えるでしょう。一番好ましいところは制御が自然なこと。動作時に全く違和感がないというわけではありませんが、他に比べてナチュラルに効果を発揮してくれます。例えばコーナーからの立ち上がりでパワーをかけていく時、リアがスリップしてトラクションコトロールシステムが介入したとします。そこで唐突に動作するようでは、ライダーは反射的に身体を固くしてしまいます。その点 DTC は自然にグリップ回復を行ってくれるので、ライダーはライディングに集中することができるのです。

と、DTC の優位性を訴えても今ひとつピンとこないかもしれません。数値化できる部分でもありませんし、言葉で伝えるのが難しいところです。実際に走って体感していただくのが一番なのですが、先日行った 8810R エビスサーキット走行会で面白い動画が撮れましたので、それをご覧いただこうと思います。

ホンダ CBR1000RR

BMW S1000RR

最初の動画はホンダの CBR1000RR で走っているものです。CBR1000RR は非常に高性能なマシンですが、トラクションコントロールシステムは標準装備されていません。坂を上りきったところから激しくウイリーして、しばらくそのまま走っています。ふたつ目の動画は S1000RR での走行を撮影したもの。坂を上りきったところで一瞬だけ前輪が持ち上がりますが、すぐにウイリーは収まり前輪が接地しています。これも DTC の効果なのです。

DTC にはウイリーコントロールという機能があります。その名の通り車体がウイリーしてしまった時に、ウイリーを止める役割を持っています。バイクにはタイヤがふたつしかありません。ウイリー中はその半分が地面から離れているのですから、当然安定性は落ちます。そこで、ウイリーをなるべくしないようにと考え、採用された制御がウイリーコントロールというわけです。エビスサーキット東コースのメインストレートは、上り勾配が 14% あります。国際格式のレーシングコースでは、スポーツランド菅生の急坂が有名ですが、それでも 11% です。如何にエビスの坂が急であるかが想像できるでしょう。エビスのメインストレートは、最終コーナーからフィニッシュラインのやや手前まで、ずっと急な上り坂です。そのため、リッタークラスのスーパースポーツで走ると、上り坂からフラットな路面に切り替わるところで激しくウイリーしてしまうのが普通です。それが S1000RR であれば、ウイリーコントロールが効いて何事もなく通過できてしまうのです。“百聞は一見にしかず” です、上の動画を見てください。きっと納得していただけるでしょう。

これは S1000RR の持つ、電子制御の優位性の一例に過ぎません。他社に先んじて電子制御に取り組んできた BMW のアドバンテージは相当なものがあるようです。ちなみに RAIN、SPORTS、RACE の各モードセッティングも、かなりハイレベルに煮詰められています。「せっかくだからフルパワーが欲しい…」と、SLICK モード化を望む方も多いと聞きますが、SLICK モードはやはりレース専用のセッティングです。DTC の制御もレース対応になるので、公道で使用するのはお薦めできません。僕も公道では SPORTS モードで走りますし、速さも充分だと思います。ともあれ S1000RR は、マシンのポテンシャルを信じ、それを活用するライディングをすれば、より速く、楽しく、安全に走れると思います。S1000RR というバイク、なかなか奥が深い一台です…。

S1000RRの画像

デビューから1年が経っても
S1000RRの注目度は抜群!!

先日 S1000RR で遠出をする機会があったのですが、高速道路のパーキングで休息をしていたところ、ツーリング途中のライダーさんに話しかけられました。お2人とも S1000RR には興味があったそうで、そんな話をしているところにヒョッコリ僕が S1000RR で現れたのことでした。せっかくなので S1000RR の良いところについて、いろいろとお話しさせていただきました。かなりノリノリで聞いていただけたようです。これで S1000RR の仲間が増えたら嬉しいですね。ちなみにこの日は高速道路を中心に数百キロの距離を走ったのですが、とても快適でした。スーパースポーツでも高速移動がラクなのは、なんとも BMW らしい好ポイントです。途中で雨にも降られましたが、足下が全然濡れなかったことにも驚かされました。カウル形状の設計も、じつに良く考えられているのですね。

国際ライダー MFJ公認インストラクター
高田 速人
バイクのタイヤとメンテナンスの専門店「8810R」代表。1976年生まれ、東京都出身。中学2年でミニバイクレースを始め、高校卒業後はロードレースにステップアップ。1996年に国際ライダーへと昇格、全日本選手権や鈴鹿8時間耐久レースなど、豊富なレース経験を持つ。2010年は 【Tras & G-TRIBE + 8810R】 チームによる、S1000RR鈴鹿8耐への挑戦にライダーとして参加。2011年は S1000RR を駆り 、【Team Tras】 の第1ライダーとして鈴鹿8耐に参戦。15位獲得に貢献した。

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