第7回 ワインディング事情
- 掲載日/2013年02月08日【はじめてのヨーロッパツーリング】
- 取材協力/オズ・インターナショナル、オーストリア航空 写真・文/佐川 健太郎
※ 2012年12月15日発行『BMW BIKES』Vol.61 P.74 「ヨーロッパ=ロングラン 使ってみてわかった R1200GS ホントの実力」にて、佐川健太郎さんによるヨーロッパツーリングの模様がレポートされています。
スケール感が魅力だが
その分タフな道も多い
今回はヨーロッパの「ワインディング」についての話です。ヨーロッパツーリングでは初めて訪れる異国の風景はもちろん、文化や食、そこに住む人々との交流など、実際にそこに行かなければけっして味わえない素晴らしい体験が待っています。そして、何日もかけて数ヶ国を巡るツーリングの中でもハイライトと言えるのは、やはりアルプス越えでしょう。スイスとイタリアの国境にある“世界一のワインディング”と称される「ステルビオ峠」や、チロル地方に広がる山岳景勝地として有名な「ドロミテ山塊」など、ライダーにとってのパラダイスがそこかしこに点在しています。まるで絵葉書のようなパノラマが広がる中をバイクで駆け抜けていく快感は何にも代えがたいものです。
峠道では右コーナーがブラインドになっていることが多い。山側は岩盤が剥き出しになっていることも多く、あまりイン側に寄せるとヘルメットを擦りそうになることも。
アルプス周辺のワインディングを走っていてまず感じるのは、スケールの大きさ。日本の峠道と比べるとコーナーは緩やかでつなぎの直線も長いため、結果的にアベレージ速度も高く、特に大型バイクは皆けっこうな速度で走っています。また、トリッキーなレイアウトが多いのも特徴。氷河が削ってできた荒々しい地形の中を切り通して道路が創られているため、ロングストレートの後、いきなりUターン並みのタイトコーナーが出てきたり、山側は岩盤が剥き出しだったり、谷側は断崖絶壁だったり。加えてガードレールがない場合もしばしば。ほぼ全工程でアスファルト舗装ではありますが、場所によって舗装の質が極端に悪くなっている場合もあります。ちなみにワインディングでもごく稀に石畳が残っている場所もあるなど、路面状態にはけっこう気を遣います。3000メートル近い標高を走ることもあるため、山頂付近では秋口でも凍結している場合も。
日本のワインディングをいろいろ体験している人ならまず心配はいりませんが、日本より速度レンジが高く、タフな状況に出くわすことが多いのも事実。輸入車でも特にBMWには早くから ABS やトラコン、グリップヒーターや外気温を表示する機能などが付いていましたが、実際にアルプス周辺を走ってみると、そうした過剰とも言える機能が実は“必然”であることがよく理解できますね。
ライン取りも独特
特に右コーナーは鬼門
ワインディングの走り方にもコツがあります。欧州は右側通行なので、右コーナーがブラインドになることが多く、走りずらかったりします。特にタイトコーナーの場合、センターラインがないのが普通で、対向車がショートカットしてくることも多く危険です。
そこで、ライン取りにひと工夫。現地のライダーを見ていると、右コーナーは反対車線にはみ出るぐらいアウト側に寄せてアプローチしていきます。ライン取りで言うと、「アウト・イン・センター」という感じ。そうすることで、いち早くブラインドの先の情報を得られるし、旋回半径を大きくとれるので楽に曲がれて、立ち上がりでアウト側にはらみにくくなります。もちろん、ケース・バイ・ケースですが、その場に応じて合理的で安全なラインを使い分けている感じがしました。欧州でも数年前に比べると、スーパースポーツ系バイクでヒザ擦りしながらかっ飛んでいくライダーの姿はだいぶ減ったように思えます。事故が増えて取り締まりが厳しくなっていることも理由らしいですが、日本でもそれは同じですね。
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌やWEB等で活躍中。本サイトではニューモデル試乗やライディングテクニック講座【スマテクで乗りこなそう!】で講師を担当。公道で役立つ実践的な安全運転スキルからサーキット走行まで造詣が深く、ライテク関連の記事や映像も数多く手掛ける。『MOTOCOM』編集長。『ライディングアカデミー東京』校長。MFJ公認インストラクター。
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