第6回 内圧コントロールバルブ講座
- 掲載日/2008年09月03日【BMWカスタムパーツガイド】
- 取材協力/Motorrad SHONAN Craft コラムニスト/滝本 幸一
クランクケース
内圧コントロールバルブ
Motorrad SHONAN Craftの滝本です。私が6回にわたりご案内してきた「BMWカスタムパーツガイド」もいよいよ最終回となりました。トリを飾るのは最近静かなブームを起こしている(?)カスタムパーツ「クランクケース内圧コントロールバルブ(以下、内圧コントロールバルブ)」についての話です。やや専門的で難しいかも知れませんが、我慢して最後まで読み切ってくださいね。見た目は地味ですが、効果的なカスタムの一例として新たなヒントが得られるかもしれません。
カスタムパーツを知る
内圧コントロールバルブ
開発の背景
プラグが正常な状態での走りを覚えれば、イリジウムプラグ装着後の効果もより実感出来ますので、まずはプラグのメンテナンスについてご説明します。
オートバイの4サイクルエンジンは、外から空気とガソリンを吸入、圧縮して燃えやすくしたうえで点火、燃焼によりパワーを取り出し、さらに燃焼後のガスを排出という工程を繰り返しています。この一連の動作はエンジンのシリンダー内部でピストンが上下することにより行われており、この4ストロークエンジンの基本的な仕組みはご存知の方も多いことでしょう。さて、エンジンの構造に目を向けますと、ピストンが往復運動をするシリンダー部分と、それを回転運動に変えるためのクランクケース部分の2つの部分で構成され、それぞれに一定容量の空間があることがお分かりかと思います。そして、エンジンが稼動してシリンダー部分でピストンが往復運動すると、それぞれの空間の容量が変化し、エンジン内部で圧力変化が生じます。ピストンが上昇し、シリンダーヘッド側に移動すると燃焼室内の圧力が高くなり、逆にクランクケース内の圧力が下がります。一方、ピストンが降下してクランク側に移動すると燃焼室内の圧力が下がり、クランクケース内は圧力が高くなります。
実は、この圧力変化が抵抗となり、4サイクルエンジン独特のエンジンブレーキや吹け上がり特性に影響するのです。その対策として、大抵のエンジンはクランクケースにブリーザー(呼吸口)が設けられており、内部の圧力を一定に保つようになっています。そのため、理屈上は抵抗がほとんと無いように考えられるのですが、実はそうではありません。ピストンがゆっくり動いている場合はブリーザーが有効に機能するのですが、エンジンの回転数が上がれば上がるほど圧力の解放が間に合わなくなります。クランクケース内の圧力がブリーザーから解放される前に、ピストンが反転して負圧となりはじめ、その負圧も解放される前にピストンが反転して圧力が高まります。この状態が続くと、クランクケース内の圧力が完全に抜け切らず、内部圧力が高いままになります。こうして、ピストンがクランク側に移動する時に大きな抵抗が生まれてしまうのです。内圧コントロールバルブはこの現象を解消するためのカスタムパーツなのです。
内圧コントロールバルブの
構造と得られる効果
内圧コントロールバルブは、クランクケース内の空気(圧力)を外に逃がす時に開き、外からの空気が流入しようとするときに閉じる弁を内蔵しています。いわゆるワンウェイバルブと同じような作用がありますが、構造的にはもっと複雑で、効率的にクランクケースの内圧を下げます。実は、F1やMOTO GPでも同じ考え方に基づいたシステムが導入されており、クランクケースの内圧を真空に近い状態まで下げて抵抗を減らす努力をしています。また、最新のR1200シリーズは、ファンで強制的に減圧するシステムを採用しました。それぐらい、クランクケース内の圧力を解放することは重要なのです。一方、カスタムパーツとして販売されている内圧コントロールバルブもわずかな圧力の変化に反応し、非常に効率良く減圧する独特の構造となっています。
このように内圧コントロールバルブはホースの途中に割り込ませるように装着する。
内圧コントロールバルブを装着して期待できる効果には、
【1】始動性の向上
【2】アイドリングの安定
【3】エンジンブレーキがスムーズになる
【4】低回転からの加速が向上
【5】高回転での振動減少
【6】燃費向上
などがあげられます。
ピストン往復運動の抵抗が減るのですから、上記の効果は当然と言えば当然のことかもしれません。特に、BMWのフラットツインエンジンは左右ピストンの動きが同じであることと、クランクケースの空間が比較的少ないことなどが要因で、内圧変化が大きくなりがちです。そのため、内圧コントロールバルブを装着することで得られるメリットがより大きいと言えます。Motorrad SHONANで取り付けたお客様にアンケートを取っても上記の効果と同じような意見を聞くことができました。現状のBMWでも全く問題ないと考えている方でも、このパーツを取り付ければ自分のオートバイの変化に必ず驚くはずです。このように、大きなメリットが期待できる内圧コントロールバルブですが、ひとつだけ注意することがあります。それは、定期的にバルブをパーツクリーナーで洗浄するということです。構造上、このパーツはオイルの吹き返しに晒されることになり、メンテナンスを怠ると固着して動かなくなる可能性があります。1年に1度、定期点検時には必ず洗浄をするように心がけてください。
カスタムパーツを見つける
取り扱いブランドは2つ
NAG SEDとAELLA
バイク用の内圧コントロールバルブを製造しているブランドはNAG SEDとAELLAの2つがありますが、両ブランドは製品開発で協力関係にあります。つまり、この2つのブランドであれば、品質・性能的に信頼できると言えますから、あとはご自分のバイクの適合品をお好みで選べば良いでしょう。なお、取り付け方法に関してはいくつか注意すべきポイントもあるので、ショップに相談することをお勧めします。
NAG SED製内圧コントロールバルブ
AELLA製内圧コントロールバルブ
さて、6回にわたり私が担当したBMWカスタムパーツガイドをお読み頂き、本当にありがとうございまいた。BMWとカスタムなんてまったく縁がないように思われていた方も多いかと思いますが、これまでご紹介してきたカスタムはほんの一例に過ぎません。BMWでもカスタムできる可能性は無限に広がっているのです。また、大がかりなものだけがカスタムではありません。たとえば小銭入れを付けたり、荷かけフックを作ったり…。カスタムとは自分のオートバイを自分色に染めていくことだと思います。乗るだけでも十分楽しいオートバイですが、それを自分色に染めてゆく楽しみを覚えて頂くと素敵なバイクライフが2倍にも3倍にも膨らんでいくことでしょう。是非自分のできる事からスタートしてみてください。
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