第10回 キルギスタンへ
- 掲載日/2007年08月29日【ユーラシア大陸横断】
- コラムニスト/Erik Andreas Jorn
たまには愛車のメンテでも。
ロシアの大都市に寄り道します
ロシアに再入国してからの計画では、そのまま真っ直ぐカザフスタンに向かう予定でした。しかし、R1200GSのタイヤは磨り減り、オイル交換もすでに何キロしていないのかわからない状態…。ブレーキの効きもどうもオカシイように思えます。いろいろ調べてみたのですが、カザフスタンに向かう道中にはBMWを触れるバイクショップはなさそう…。そのため少し寄り道になりますが、ロシアで3番目に大きい大都市であるノボシビルスクに向かうことにしました。ここにある大きなバイクショップで必要なメンテナンスを行います。ノボシビルスクへは北へ向かわなければいけないのですが、北上する度に気温がどんどん下がってきて、しまいには雪が降り始めるほどの寒さ。道中のガソリンスタンドでお金を支払おうと財布を出したら、手がかじかみ過ぎてお金が出せなくなるくらい、きつい寒さでした。
なんとか凍らずにノボシビルスクに辿りつき、また“Help List”のおかげで知り合えたライダーYevgeni にお世話になってしまいました。このリストには何度助けられていることか…。初対面だった私を家に招いて、食事をご馳走していただきました。彼は友人とアパートをシェアしていたので、同居人の友人にも散々迷惑をかけたような気がします。Yevgeniはセミプロと言っていい腕のカメラマンで、彼の撮った写真を見せてもらいながら夜更けまで語り合いました。翌日、彼に連れられ大きなバイクショップへと向かいました。ここでブレーキトラブルを直し、オイルやタイヤ交換も行います。私の財布はどんどん薄くなってしまいますが、R1200GSのコンディションが良くなるのなら! 修理とメンテナンスにはそれほど時間はかからなかったので、Yevgeniにお礼を言いまた旅を始めることにしましょう。が、この日の気温は2℃。まず南の暖かいところまで戻った方が良さそうです。
知り合ったフィンランド人と
カザフスタンでサッカー観戦
翌日にはカザフスタンに入国し、セメイという街へたどりつきました。ここは旧ソ連時代に何百発もの核爆弾のテストが行われた場所です。この辺りはまだまだ放射能濃度が高い場所らしいので、あまり長く滞在したいところではないですね…。ここで1泊だけして出発しようと思っていましたが、翌日は残念なことに土砂降り。雨がやむのをしばらく待っていたもののやむ気配はありません。雨天走行も散々経験してきましたから、走り出すことにしましょう。…が何時間たっても雨はやむ気配はなく、むしろ雨の勢いは増してきています。厳寒の雨に打たれ続け、服の中にも雨が侵入しはじめたので、暗くなる前に道沿いのホテルに宿を取ってこの日は早々に旅じまいです。天候が悪いとなかなか距離が稼げません。
この翌日からは雨は上がり、気温も上昇、快適に走れるようになりました。そして辿りついたのはアルマトイというカザフスタンの街です。非常に美しい街並みの大都市ですが、行きかう車両はクレイジーな運転をするので観光しながら走っていると事故を起こしてしまいそう(笑)。この街ではこれから訪れるウズベキスタンとキルギスタンのビザを取らなければなりません。これまではロシアという広い国を走ってきましたが、これから通る道のりではたくさん国を通過するのでビザの申請も忙しくなりそうです。キルギスタンのビザを取りに大使館に訪れたときに、フィンランドからやって来た旅行者に出会いました。母国スウェーデンの隣人との出会いに少し嬉しくなる私。彼らはアルマトイで行われるフィンランドvsカザフスタンのサッカー国際試合の応援にやってきたのだとか。「チケットは余っているから一緒に応援しない?」と誘ってもらい、私もサッカーを観戦することにしました。まさか旅の途中でサッカー観戦なんて…非常に楽しみです。競技場に到着すると、フィンランドからの応援団はたった30名、クレイジーなほど陽気な連中でしたが少ないですね。一方カザフスタン側は何千人もいました。試合はフィンランドの勝ちで大喜びをしましたが、敗れたカザフスタンのサポーターの一部から酷い言葉を投げかけられちょっと嫌な思いも。サッカーファンは熱狂的ですが、もう少しマナーがよくなって欲しいものです。
旅人同士の交流の場
Sakura Guesthouseを訪れる
予定外のサッカー観戦を楽しんだアルマトイを後にし、キルギスタンの首都ビシケクと言う街へと向かいます。カザフスタンとキルギスタンの国境は何の問題もなくパスすることができ、少し拍子抜けでした。カザフ国境の役人は非常に暖かく陽気な男たちで出国審査もすぐに終わりました。役人が質問してくるのは「日本はどんな国?」、「スウェーデンは?」などと言ったことばかり。本来ならいくつかの窓口に顔を出す必要があるはずなのですが、最初に話した役人が親切に動き回ってくれたため、よくわからないウチにカザフスタンを後にすることができました。こんな気持ちよく通れる国境は初めてかもしれません。国境を抜けたあとは一路Bishkekへ、ここには数日滞在しましたが素晴らしい街でした。何が一番気に入ったかというと、この街で滞在した「Sakura Guesthouse」。ここは日本人男性とキルギスタン人の奥さんが2人で経営する宿で、旅行者には結構名を知られている宿のようです。
宿に宿泊していた日本人と久しぶりにカタコトの日本語で会話をし、少し懐かしい思いにかられました。ここには日本人だけではなく、イギリス、オランダ、ドイツなど各国の旅行者も集まってきています。宿で知り合った各国の旅行者たちと各国の言葉を交えながら話したり、一緒に近くにあるレバノン料理屋を訪れたり、旅行者らしいコミュニケーションを久しぶりにした気がします。ホテルに泊まるのもいいですが、機会があればこういったゲストハウスにもぜひ泊まってみてください。きっと面白い旅人に出会えるでしょう。ビシケクではこんな素晴らしい出会いを堪能できましたが、少し嫌な経験もしました。宿の近くで2人の警官に職務質問をされたのですが、路地裏に私を連れていき体のあちこちを身体検査されました。最初は「麻薬チェックか?」と思っていましたが、体に見につけていたマネーベルトを見つけると「開けて見せろ」と。私が「警察署に行こう。そうしたら見せる」と言うと、彼らはなぜか「ここで見せろ」としつこくいい続けます。かたくなに拒否していたら諦めてどこかへ行きましたが、素直に従っていたらおそらく何らかの方法で賄賂を要求されたでしょう。出会う人の大部分はいい人が多いのですが、後で話を聞くとキルギスタンの警察は「そんなもの。気をつけろ」だとか。どこの国でも嫌な思いを受けるのはだいたい役人ですね。
35歳。スウェーデン国籍。15歳のときに渡米し、アメリカで医学を学ぶ。大学卒業後に1年間海外を放浪し、その後来日。8年間を日本で過ごした後にR1200GSでのユーラシア大陸横断を企画し、現在は旅の途中。
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