第4回 F800 Series
- 掲載日/2006年10月28日【ヤナセモトラッド吉岡の最新モデルのススメ】
- 取材協力/ヤナセモトラッド芝浦 コラムニスト/吉岡 徹恭
新設計のパラレルツイン
F800シリーズの誕生です
BMW初のパラレルツインエンジンを搭載したライトウェイトマシン「F800」シリーズが、ついに発売になります! F800シーズは「ボンバルディア・ロータックス社」の協力のもと、BMWが開発設計を手がけた、R、K、F650に続く第4の新シリーズ。今までになかったこの新しいモデルは発表後の問い合わせも多く、今回の発売を待ち望んでいた方も多いのではないでしょうか。
F800シリーズには「F800S」と「F800ST」の2つのラインナップがあります。「F800S」の「S」はスポーツ、「F800ST」の「ST」はスポーツツーリングの略称です。これまでBMWによく描かれた「大きい、重い、おじさんの乗り物」というイメージを払拭してくれる期待のブランニューモデルが登場してくれました。R1200Sなど近年発表されるモデルにはスタイリッシュなものが多いですが、「F800」シリーズは現在のBMWのラインナップの中でも、デザイン面での評価が高いモデルですね。
さて、同じ「F」の名を持つ今までの「F650」シリーズと、今回新発売されました「F800」シリーズはどこが違うのでしょうか? 見た目はもちろん全然違いますが、一番の違いはエンジンです。排気量が650ccから800ccにアップしましたし、単気筒エンジンではなく新設計の並列二気筒エンジンが採用されています。最高出力は50馬力から85馬力へと引き上げられています。
乾燥重量が180キロ台の車体には、必要にして十分なパワーを備えていると言えるでしょう。駆動方式は「F650」シリーズのチェーンドライブからベルトドライブに変更。このベルト、見た目にはチェーンよりもひ弱そう? ですが、音も静かで耐久性もチェーンと比べても劣りません。それにメンテナンスする手間が省けるので、いいことずくめなのです。チェーンの掃除って意外に面倒じゃありませんか?
次に「S」と「ST」の違いについてです。名前の通り「S」はスポーティーなモデルですので、カウリングはハーフカウル、ステアリングもセパレートタイプです。兄貴分の「R1200S」に少し似ていますね。ウインドスクリーンは「ST」より少し短いタイプが装着されています。一方、「ST」は「S」よりもちょっとツーリングタイプのイメージでしょうか。カウリングは足元まで伸び、ステアリングはパイプハンドルを装備。スクリーンは「S」よりもちょっと長めです。また、アルミ製のリアキャリアが装備されていますので、オプションでトップケースやパニアケースも装着出来るようになっています。でも、この「ST」のアルミ製キャリアは「S」にも装着できます。ですからスポーツに、ツーリングにとちょっと欲張りな方は「S」の方がオススメかもしれません。
低速トルクの太さが魅力
渋滞でもストレスを感じません
では、実際に跨ってみましょう。まずは「S」から。跨ってみるとセパレートハンドルのおかげで、少し上半身が前傾します。とはいえ、両腕が辛くなるほど、前傾ではありませんのでご安心を。その点「ST」はセミアップのパイプハンドルのおかげで上半身はリラックス出来ます。シートは「S」も「ST」も共通で日本仕様のローシートが装着されています。ただ、それでもシートはちょっと高めに感じますね。ただ、シート幅がスリムですから足つきはそれほど悪くない。跨ったまま車体を左右に振ってみると、車重が軽いのでふらつく感じはありません。「F650」と同じく、シート下に燃料タンクを装備しているため、重心が低くなっているからでしょうか。メーター周りは両車とも共通。スピードメーターの下にタコメーターを配置するのはやや見づらいような気がします。スイッチ類はBMWおなじみの左右別々のウインカースイッチなど、他シリーズと共通のものが採用されています。クラッチはワイヤー作動ですが、あまり軽くないのがちょっと残念ですね。
それでは試乗をしてみましょう。右側スイッチボックスのスターターボタンを押すと、すぐに並列ツインエンジンが目を覚まします。ちょっとエンジン自体の音が賑やかでしょうか。「ST」はカウリングが大きいので少しエンジン音が小さく聞こえます。アイドリング状態でアクセルをあおると並列ツインエンジンの独特の排気音が…と言いたいところですがボクサーツインに似た程よいサウンドが聞こえてきます。アイドリングのサウンドを楽しむのはほどほどに、ローギアにシフトすると少しシフトショックがあります。この感じは「F650」シリーズにちょっと似ていますね。
さて。走り始めると、低回転からトルクが出ているのがすぐに判ります。私の勤務する「ヤナセモトラッド芝浦」周辺は信号が多いのですが、これだけ低速トルクがあればSTOP&GOもストレスにはなりません。渋滞時にトロトロ運転をしても苦にならないでしょう。スムーズに流れる道に移動し、ギアを上げずに高回転まで回してみましょう。トルクの山がなく、スムーズに吹け上がります。これは「F650」シリーズには無かったフィーリングです。スピードのノリは「F650」と比べるまでもなく速いです。いくらかスピードを上げてみると「ST」の方は、見た目以上にウインドプロテクション効果があります。「S」に比べて大きなウインドスクリーン、と深いカウリングの差が感じられます。ただ「ST」はパイプハンドルだからでしょうか、「S」よりも手に伝わる振動が若干多いような気がしました。と細かな仕様による違いはありますが、「S」、「ST」は、兄弟車なだけに基本的な乗り味はあまり変わりません。
最もスタイリッシュなBMW
それがF800シリーズです
この新しい「F800」シリーズの2台。今までのBMWには無かったものをたくさん身に纏い、しかもベーシックラインで100万円代という大方の予想を裏切る価格で発売されました。その価格帯からエントリーモデルと位置づけする方がいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。「F800」がフィットするシチュエーションはさまざま、従来のモデルにないイメージが付与されています。洒落たオープンカフェに乗り付ける、夜の街角にそっと溶け込む…ファッション誌の広告に使われても違和感のないモデルです。
もちろん週末に気の合う仲間とツーリング、たまにはストイックにサーキットを攻める、これまでのBMWと同様そんな使い方も苦もなくこなしてくれます。これまでのBMWと何ら変わらない使い方ができつつ、スタイル面で大きな進化を遂げたモデル。それが「F800」シリーズではないでしょうか?
この「F800」シリーズは今までBMWがオートバイを作っているのさえ知らなかった、興味が持てなかった方から、熟練のベテランライダーまで、きっと満足していただけるモデルとなるでしょう。この「F800」シリーズが皆さんにとって最初のBMWになるか、はたまた何台目かのBMWになるかは判りませんが、後悔することはない1台ですよ。
F800
価格/S(ベーシックライン)/¥1,045,000 (税込)、S(セットオプション)/¥1,192,000 (税込)
価格/ST(ベーシックライン)/¥1,098,000 (税込)、ST(セットオプション)/¥1,276,500 (税込)
35歳。東京都のBMW正規ディーラー「ヤナセモトラッド芝浦」スタッフ。BMWへのアツい情熱と好奇心で最新モデルをバッチリ分析。お店ではエクイップメントアイテムの営業担当もするマルチなスタッフ。
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