第3回 K1200GT
- 掲載日/2006年05月27日【ヤナセモトラッド吉岡の最新モデルのススメ】
- 取材協力/ヤナセモトラッド芝浦 コラムニスト/吉岡 徹恭
エンジンまで新しいものに
K1200GTが生まれ変わりました
2006年春のBMWモトラッドニューモデル攻勢のトリを務めるのは、『K1200S』、『R』と同系列の「横置き4気筒エンジン」を搭載してパワーアップしたニュー『K1200GT』です。2003年から登場した先代とモデル名称は同じですが、モデルチェンジというより「生まれ変わった」という言葉が相応しいほどの変化を遂げています。モデル名称に冠せられた『GT』とはグランツーリスモの略称で「長期旅行を快適に、高速で走行できる車両」という意味です。
ニュー「K1200GT」は『GT』の名に相応しい、レベルアップした装備を持ち、その快適性はさらに高まっていると言えるでしょう。デュオレバー・ESAを新たに装備し、しかも細かな仕様の変更だけでなくエンジンまでも変更されました。従来の「縦置き直列4気筒」からF1技術が応用された軽量コンパクトな「横置き直列4気筒」エンジンへと心臓部が一新されたことで、優れたスポーツ性能とハイレベルなツーリング快適性が両立されています。「良い季節だからこそ、あえてクルマではなく二輪で、オープンエアな二人旅を楽しむ…このモーターサイクルではそれが実現できます」とメーカーが自信を持って送り出すのも納得のK1200GT。では、以下で生まれ変わったK1200GTがどれほどのポテンシャルを秘めているのか、じっくりとご紹介いたしましょう。
グランツーリスモの名に相応しい
GT初採用の新機能の数々
まずは一新されたメーター周りから見てみましょう。先代は中央に回転計と速度計を配置し、左側に燃料計、右側に水温計を装備していました。しかし、新型は中央にオンボードコンピューターを配置、その左右に回転計と速度計を装備しています。先代の面影はまったくなく、同じK1200シリーズでも「S」や「R」とも違う独自のメーター周りとなっています。また、新型「K1200GT」ではステアリングの高さが調整出来るようになっています。もっとも低い位置にセットすると、かなりスポーティーなポジションが楽しめます。
高速道路はツアラーテイストのアップポジションで、峠道はスポーツテイストの溢れるローポジションで、とシチュエーションに応じて楽しめそうですね。ちなみにK1200S,Rで皆さんを悩ませているクラッチレバーの「重さ」ですが、K1200GTでは旧タイプの一体式クラッチマスターシリンダーを装備したおかげか、重さが少し軽減されています。 ニューGTのグリップヒーターにも嬉しい機能が追加されています。このGTはなんと外気温を感知してオンボードコンピューターが自動でon・offしてくれるのです。ただし、onになるのはポジション1まで。もっと暖かくしたいときはご自身でのスイッチ操作が必要です。
見た目には判り辛いですが、嬉しい新機能のひとつに「ブレーキパッドセンサー」も挙げられます。4輪の世界では常識の機能ですが、BMWモトラッドでは初めてK1200GTに導入されました。前後ブレーキに装備され、ブレーキパッドが磨耗限度になり、パッドに取り付けられたセンサーがブレーキディスクに接触すると、メーター内に警告灯が表示されるという優れものです。ただ、この機能が装備されたとはいえ、ブレーキは重要な部品ですから、日常点検でパッドの残量をチェックしてくださいね。
では、次にスタイリングを見ていきましょう。全体のスタイリングは、外見から丸みが無くなり、最近のBMWモトラッドの流れである角張ったスタイルになっています。サイドカウリングはややのっぺりし過ぎているように思えますが、単色のカラーリングのため、そう感じるのでしょうか。K1200SやR1200Sのようなツートンカラーがラインアップにあれば、また違ったイメージで面白そうですね。フロント周りはK1200Sに近い顔つきをしています。ヘッドライトはロービームのみ「キセノンヘッドライト」を工場オプションで装備出来ます。キセノンの白っぽい光は目に優しい太陽光に近い色です。しかもハロゲンに比べ、投光性能がほぼ2倍もありますので、ライダーにストレスのかかる夜間の走行でも目が疲れず、安全に楽しく走ることができます。
右サイドカウリング上部には小物入れがありますが、なぜか外開き。どう見ても使い辛そうです。高速道路では料金所のおじさんにチケットとお釣りを入れてもらいましょう(笑)。また、リアシート後方のキャリアが大型のものになりました。ここにはオプションでトップケースが装着出来ます。先代ではソフトケースか、F650系の小さなトップケースしか選べませんでしたが、新型はR1200RTと同様のケース(大・小あります)が選べるようになっています。パニアケースはロングツーリング用に、街中やショートツーリングにはトップケースをお勧めします。
152PSのハイパワーがもたらす
オールマイティな走行性能
最後に少しだけ試乗車に乗る機会がありましたのでショートインプレなどを。エンジンを始動すると、キセノンヘッドライトがぼんやりと点灯し、存在感を感じます。アイドリング時のエンジン音は、大きなカウルのおかげでしょうか? K1200S,Rと比べると少し静かになっているようです。サイドスタンドを払い車体を起こすと、さすがにK1200S,Rよりは重さを感じますが、先代よりはずっしりとした重さが減っているように感じます。車重がほとんど変わらないのに不思議ですね。シート高はローポジションで800mmですから先代よりも少し高くなっていますが、シート幅がスリムになっていますので足付きはそれほど悪くありません。少し軽くなったクラッチレバーを握りローギヤにシフト。走り始めてすぐに新型K1200GTの良さに気付きました。
K1200S,Rよりも格段に滑らかなエンジンフィーリングです。これなら渋滞も苦にならないでしょうし、ツーリング先でのんびり走るのも楽しそうです。低いギヤからの加速はさすが152PS、低回転からフラットに吹けあがり高回転ではかなりパンチがあります。この加速感は同じツアラーであるR1200RTとは違うもので、まったく違った世界を感じさせてくれるでしょう。ニュー「K1200GT」はツアラーとしての資質はもちろんのこと、オールマイティに楽しめるモデルです。新しいBMWモトラッドの一員として、多くのライダーの相棒となりえるでしょう。この春に発表されたニューモデルの中では…個人的にはこのニュー「K1200GT」が一番好みですね。
K1200GT
価格/?2,436,000 (税込)、プレミアムツーリングパッケージ/?2,614,500 (税込)
35歳。東京都のBMW正規ディーラー「ヤナセモトラッド芝浦」スタッフ。BMWへのアツい情熱と好奇心で最新モデルをバッチリ分析。お店ではエクイップメントアイテムの営業担当もするマルチなスタッフ。
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