第2回 グリップヒータの秘密
- 掲載日/2006年04月10日【市川の的外れ!?雑学コラム】
- コラムニスト/市川 修
春の訪れに心弾む日々
ボクサートロフィーを満喫しました
日増しに暖かくなってきて「いよいよ春だなぁぁぁぁぁ~」と桜の木の下で一杯やりながら思いたいものですね。…が、私の場合は「そんな暇があったら仕事せんかい!」と言われ、涙でかすむ桜の木の下をシクシク泣きながら通り過ぎる毎日を過ごしておりますが、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?
オートバイ関係のイベントも目白押しで、春を告げる第1弾として先日、茨城県にあります筑波サーキットでBMWフラットツインバイクのワンメイクレース「ボクサートロフィーレース」が開催されました。詳しいリザルトなどはもうすぐ発売されるオートバイ雑誌等で特集をされると思います。関東でのボクサートロフィーレースの裏方をさせて頂いている私は、終了するまで「ハラハラ」、「ドキドキ」の連続。そんな中レースは無事に終了し、出場された皆様が「あ~、楽しかった!」とか「次は負けねーぞ!」と言い合いながら、とても素敵な「気持ちの良い顔」をされているのを見て『やっぱりレースは楽しいな!』と思ったものです。「また次回も皆さんに楽しんで頂けるように」とのありがたい気持ちを参加者の方々に持たせて頂きました。こんな素敵な顔になれるイベントに皆様もぜひ参加して下さい! 本当に「真剣に」楽しくなれますよ。
グリップヒーターはおっさん用?
実は、レースと密接な関係があるんです
さて、それほどまでに自分を熱中させてくれる「サーキット」、そして「レース」。皆さんはそのキーワードで、何を連想されるでしょうか? 私はサーキットと言えば「グリップヒーター」をまっさきに連想しますね。
「はて? 何言ってんの! 何でサーキットでグリップヒーターなの? この人は何を言うの?」なんて思わないでくださいね。突拍子も無いことを言っているようですが、現在BMWモーターサイクルラインナップでは基本的に標準装備となっているこのパーツ、実はレースと密接な関連があったんです。意外でしょ(フフフ)。
もちろん「なぜグリップヒーターなの?」というお話をさせて頂きますが、そもそもグリップヒーターとは何ぞや? というお話をしなければいけませんね。グリップヒーターという部品は、BMWのモーターサイクルにのみ全モデルラインナップされている、文字どおりグリップが暖かくなるメーカー純正部品です。はじめてBMWモーターサイクルを購入されるお客様にとっては、第一印象でついつい「おっさんバイクのおっさん用暖房部品」と思われがち。私自身、BMWの標準装備で無かった頃に、お客様と車両購入のお話している時もヒーターを提案すると「どうせ冬用の季節部品でしょ!」、「今まで使ったことも無く、必要と思わないパーツをなんで付けなきゃいけないの?」と、必ずお客様から言われたものです。
でも「効果が無く、結局使えないパーツとお客様が思ったら、お代金をお返ししても結構です!」と多くのお客様に半分無理やり取り付けさせて頂きましたが、お代金をご返金致したお客様は結果皆無でした。実際、最初は半信半疑でご購入されたお客様が何年かしてBMWモーターサイクルの乗換えをされる時、グリップヒーターを使っていらしたお客様は、私たちが何も言わないのに「必ず」グリップヒーターを追加でご注文されるようになります。
過酷な状況でも
確実に安全に走行できるように
「そんなにグリップヒーターって効果があって必要な物なの?」、「それが何でレースと関係があるの?」、「なんで?」と、思われる方には「どういう効果があるんだろう?」と考えて頂くと答えが見えて来ると思います。体が露出されるオートバイでは季節の温度変化に非常に敏感にならざるをえません。冬なんか寒くてブレーキが握りづらかった経験が皆さんにも普通にあったことと思います。よく信号待ちでエンジンに手をくっつけて温めているライダーを必ず見ますよね。グリップヒーターを作動させることでグリップは温まります、当然、手が温まりますので、その手(特に指から指先)の操作は、正確にそしてしっかりと作動させることが出来ます。つまり正確な操作がしづらい環境にあっても、間違いの無い確実な操作をすることが出来る、リスクを少なく出来る非常に有効な部品であるわけです。
寒い時、冬はもちろんですが、たとえば夏でも涼しい高原等にツーリングに行った時、ちょっと寒かったり、昼間は暑かったけど、夕立に降られ、走っている風で手が冷えてしまった経験、皆さんありませんか? そんな過酷な状況もありえる環境で行われたレースがありました。そう、皆さんも良くご存知の「マン島TTレース」です。そのマン島TTレースでBMWモーターサイクルが優勝したことがあります。その時のライダーは有名な「ヘルムート・ダーネ氏」。
実はこのその時のマシンBMW R90Sには「グリップヒーター」が装着されていたんです! 島の天候は変わりやすく、ある場所では雨が降ったり、気温の変化があったり、その中をレーシングスピードで走行するには集中力と正確な操作が必要とされます。そんな状況下でグリップヒーターは絶大なる効果をもたらし、賞賛される結果をダーネ氏にもたらしました。市販モデルへのグリップヒーター採用へのきっかけの一つとなっているんですね。過酷な状況でも確実に安全に走行できることは、結果を残すにはまずは完走しなければならないとする、実績を求めるレースには非常に大きな要素です。実際、先日のボクサートロフィーレースでもグリップヒーターをONにして走っているライダーは結構いました。同じように、それは私たちが走る通常のツーリングでも同じです。決して早く走る必要はありませんが、目的地に安全に到着することは何より優先されるべきこと。そのためにグリップヒーターは非常にリスクを軽減させてくれる、役に立つパーツなのです。だからこそ、BMWモーターサイクルでは全モデルにグリップヒーターを取り付けできるようにしているんですね。そんなことを知ってグリップヒーターのスイッチを入れると、その瞬間にすごい歴史がフラッシュバックする…なんて感じながら乗ってみるとまた違った感覚が湧き出して、ますますBMWバイクから離れられなくなる私です。
さて、次回は『BMWモーターサイクル最近のモデルの装備』について、お話させて頂こうかと思っています。私も聞いたとき「へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~」っと思った話です。それではまた次回、お楽しみに!
46歳。東京都のBMW正規ディーラー「バイクハウスフラット」でセールスマネージャーを務める。『バトルオブツイン』に始まり、BMWでのレース経験が豊富なため、多くのBMWオーナーから頼りにされている。
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