VIRGIN BMW | 【BMW Motorrad R1300GS 試乗記】もはや何者も超すことのできない壁となった 試乗インプレ

【BMW Motorrad R1300GS 試乗記】もはや何者も超すことのできない壁となった

  • 掲載日/2023年12月01日【試乗インプレ】
  • 取材協力・写真/BMW Motorrad 取材・写真・文/小松 男

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BMW Motorrad R1300GS(2024)
BMWモトラッドの屋台骨、R-GSが約10年ぶりとなるフルモデルチェンジが行われ、R1300GSとして登場。全世界中のファンが待ち焦がれた新時代のGSが日本にも上陸したので早々にその感触をお伝えする。

90%以上の構成パーツが新開発
究極のさらに上を行く存在となったか

前々から噂になっていた新型R-GS、『R1300GS』が本国ドイツのBMW AGから正式発表されたのは2023年9月のこと。初代モデルにあたるR80G/Sが登場したのは1980年のことであり、それから23年の時を経た今年6月には累計100万台目となるR-GSの生産を達成したことがアナウンスされたばかりであった。

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今でこそBMWモトラッドは多くの人々に認知されているが、その歴史を振り返ると良いことばかりでもなかった。そんなBMWモトラッドをしっかりと世に根付かせたのは、まぎれもなくR-GSの存在だったと断言できる。その最新モデルが登場するというだけでも、ワクワクさせられるのはライダーとして当たり前のことであろう。

R1300GSは2023年11月23日、この日本でも早々に発売を開始した。それに先だってメディア向け試乗会が行われたので、その様子を踏まえながらインプレションをお伝えしてゆこう。

BMW Motorrad R1300GS(2024) 特徴

唯一無二のGSワールド
それは常に一歩先を歩んできた

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70年代から80年代にかけて日本のモーターサイクルブランドが勢いを増し、世界中のレースシーンで独壇場とも言える時代となったころ。欧米のモーターサイクルブランドは窮地に立たされていた。当時のことを思い返すとBMWモトラッドもその内の一つだったと言えよう。

BMW社の出自ともなったボクサーエンジンを使用するモーターサイクルは低重心であり、側車(サイドカー)との相性も良かったことから大戦中は重宝されていたが、その後時代が進む中、環境問題などの観点から一度は生産終了となりかけたことすらあった(代わりにKシリーズの開発も進められていた)。

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そのような中、世界中のライダーが注目する出来事があった。それはモトクロスを引退したあとのガストン・ライエがBMWのR80G/Sをベースとしたモデルを駆り、パリ・ダカールラリーで大活躍。当時シングルエンジンのレーサーが主流だった中で、一際人目を惹きつけた上に強かった。ここからGS伝説が始まる。

とはいえビッグオフローダーというジャンルを一般的なライダーが手を出す時代ではない。一部のエンスージアストが注目をするようなものだった。それに当時のBMWモトラッドと言えば、RSやRTなどの高速ツアラーを指名されることがほとんどだったのだ。

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その潮流を推し換えたのが、4バルブボクサーエンジンの登場である。まだRS、RTの人気が高かったものの、オンロード志向に振ったR1100GSは人々の見る目も変わり、それを察知したBMWモトラッドは、R1150GSそしてR1150GSアドベンチャーを導入し、世のライダーの心を瞬く間につかみ取った。

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2004年には大幅に軽量化したR1200GSが登場。もはやその地位を不動のものとした。他のメーカーも追従を図ったものの、どれもGSの前に出れるモデルは無かった。2013年には水冷ボクサーエンジンが搭載され、2019年からシフトカムを採用したR1250GSとなり、同モデルを走らせた時には、すでに究極まで突き詰められており、もはやこれ以上の進化をすべきところはないのではないかとさえ思っていた。だからR1300GSは大いに興味と期待するところがあった。さて、その蓋を開けてみるとしよう。

BMW Motorrad R1300GS(2024) 試乗インプレッション

従来オーナーも初めてのライダーも魅了
10年でこれほどモノが進化するとは……

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伊豆で開催されたR1300GS試乗会には国内の多くのメディアが集った。午前中は技術説明など、午後にメインの試乗タイムとなっていたのだが、それよりも前、朝一に参加メディア合同の先導試乗が行われた。

40~50分程度のコースで、いわゆる舗装林道なのだが、クルマがすれ違えない程道幅は狭く、起伏に富んでいる上に倒木、落ち葉、小枝が散乱するルート。いわゆるデカいバイクは苦手な道の部類である。そこをR1300GSが連なって走っていくのだが、ちょっと走らせただけでもフロントの安心感、スロットルのつき具合、ブレーキやサスペンションのサポート介入など、あらゆる面での進化、良さが伝わってくるものだった。

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ベースに戻った後の技術説明では、90%以上の構成パーツが新開発となっていること(傍から見える部品ではTFT液晶ディスプレイとリアウインカー以外はすべて新規)、新型ボクサーエンジンの内部構造や新型フレームのこと、従来モデルと比べ欧州仕様で-12Kgという大幅な軽量化を実現していること、新型のテレレバー及びパラレバーのポイント、色々な部分を突き詰めてよりマスの集中を図れたこと、さらに前後に搭載したセンサーによる、アダプティブクルーズコントロールや衝突防止などのセーフティ機能など一通りの説明を受けた。なお本国で行われた新しいR1300GSの技術説明は5日間に渡る座学だったというので、R1300GSの開発がどれほどまでに入念に行われたのかが伝わることだろう。

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一通り技術説明を受けた後に、再度試乗をするためにR1300GSの元へと移る。タンクから繋がるボディラインは視覚的にもコンパクトになったと感じさせてくれる上に、R1300GSのフューチャーポイントの一つでもあるアダプティブ車高制御機能のおかげで、停車時はシート高が820mmまで下がっているために足つき性もよい。なお走り出して時速50km達成までに通常シート高の850mmに上がり、時速15km以下になると30mm下がり820mmとなる。今回のこの機能の採用により、ローダウン仕様が撤廃されている。さらに加えるならば、センタースタンドを使用する際には前後サスペンションが伸び、スタンドを掛けやすくなるというホスピタリティも備えている。それではR1300GSにじっくりと触れてみるとしよう。

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軽量化は正義である。特にこの手のビッグアドベンチャーモデルであれば、その影響は如実に表れる。特にハンドリングでコーナーリングでの切り返しが軽くなったことは顕著だ。午前中アテンドしてもらったルートを再び回ってみる。全体的な剛性が上がっていることは、通常での速度域でも意外なほど感じることができる。例えば、フロント周りでは長く続く急な下り坂、しかも路面状況は悪く、道幅は狭い。そうなるとフロントタイヤへの依存度が高まる。剛性が弱ければ、他の部分でバランスを取らなければならないのだが、しっかりと踏ん張ってくれる。その上に、ライン上に生えているコケや、枝を踏んで滑っても、何事もなかったかのような挙動で前へと車体を推し進めてくれる。R1300GSの進化具合を伝わらせるのに、適したルート設定をしてくれたものだとBMWモトラッドジャパンにも感心しつつ、続いてダイナミックなコーナーが続く西伊豆スカイラインへと向かう。

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進化を続けてきたボクサーツインエンジンの中で最もパワフルな145馬力を発生する新型エンジンは、とても扱いやすい設定とされている。特に通常多くのライダーがセットするであろうスタンダードなロードモードではスロットルワークに対するレスポンスがあまりにも的確で気持ちよい。ダイナミックモードにすればいとも簡単にフロントタイヤは浮き上がるほどアグレッシブな走りを楽しめ、スリッピーな路面ではレインモードの特性や車体制御システムにより安心できるライディングをもたらしてくれる。

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ダートのような場所は走る機会が無かったものの、河原におろして石や砂利の続く道を走らせたところ、基本となるスタビリティーが高い次元で良く、言い過ぎかもしれないが一回りコンパクトなモデルを扱っているかのように思えた。

今回の試乗で高速移動を行うシーンは無かったが、R1300GSでの開発ではこれまで以上に徹底して追求したと言う空力性能のおかげで、嫌な走行風はもちろん、風の巻き込みによる後ろからの押し出しも抑えられていることが分かった。

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試乗会に参加していた他のジャーナリストと話したことと言えば、重箱の隅をつつく程度のことであり、皆感服させられていたというのが実情である。悔しいとすら思えるが、R1300GSの完成度は高いのだ。ただ一方で私は考えてしまう。それは様々な電子デバイスが備わったことは、故障した際の対応も難しいのではないだろうかということだ。まあ350万円からなる価格のバイクなので、手を出すライダーもそれなりであり、時間にもお金にも余裕があるのかもしれないが。

究極のさらに上を行く素晴らしいモーターサイクル、R1300GS。あなたのバイク人生の上がりの一台となるかもしれない。

BMW Motorrad R1300GS(2024) 詳細写真

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新型ボクサーエンジンは、従来エンジンと比べ6.5kg軽量化し、低中速域でのトルクが大幅に引き上げられている。ギアボックスをエンジンの下部にマウントすることにより前後長を縮め、その結果スイングアームを長くすることができた。細かい話だが、カムチェーンの搭載位置の変更により、左右のヘッドがシンメトリックになった。

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テレレバーも大きく進化している。Aアーム先端の部分にボールジョイントと深溝玉軸受けをセットしたうえ、太いフォークを採用しアッパーにリジットセット。そのおかげで剛性を飛躍的に向上させ、ダイレクト感が増している。さらにショックはサスペンションを伝達してフレームでいなすという構造になった。剛性が上がったことで鍛造ホイールのオプションも設定されている。

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シートは標準仕様が850mm、ローシート820mm、ハイシート870mmが用意されている。アダプティブ車高制御機能が備わっているモデルでは停車時に30mm下がる。日本仕様はライダー、パッセンジャーどちらにもシートヒーターが内蔵される。なおパッセンジャーシートは前後2か所に位置の調節ができる。

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大幅に印象が変わったフロントマスク。ヘッドライトはコンパクトになり、その上には追従機能などに精通するセンサーが備わっている。空力を追求して考えたスクリーンやサブスクリーン、フィンのおかげで、快適なライディングを楽しむことができる。なおスクリーンは上下に高さ調整ができる上、工具を使って搭載位置の変更も行えるようになっている。

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TFT液晶ディスプレイは従来モデルを踏襲しており、使い勝手及びインフォメーションは伝わりやすい。ブレーキのかけ具合やバンク角などを表示するスポーツディスプレイモードも標準装備されているほか、FRONT COLLISION WARNING(FCW)、いわゆる衝突抑制機能作動時には、警告が表示される。

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BMWモトラッドのアイデンティティにもなったジョグダイヤルで、各種セッティングを行うのだが、さらに今回は、機能リスト/クイック選択ボタンと、選択用ロッカースイッチによるショートカットがしやすくなった。バックミラーの下部には死角コーションランプも備わっている。

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R1300GSでは新型テレレバーを採用したことで、フォークトップがリジッドセットされている。この上に一般的なハンドルクランプをセットすると、段差などのショックがダイレクトにハンドルに伝わってきてしまうのだが、それをいなすために、新開発のプレートなどを使用し、ハンドルをフローティングセットしている。よって不快な振動などは大きく軽減されている。

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ギアシフト・アシスタント・プロを標準装備。クラッチレバー操作不要でシフトアップ、ダウン双方向の入力が可能だ。リターンスプリングも撤廃され、ダイレクト感も向上している。

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ライディング時に踵に接触することがあるというオーナーからの意見を元に、センタースタンドの踏み込みバーが折り畳み式となった。センタースタンドを掛ける際に力が掛かる部分なので、機構を増やしたことが後々どうなるかは気になるところ。バンク角にも多少寄与することと思う。

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BMWモトラッドのお家芸でもあるシャフトドライブ。パラレバーは進化し、より前後長が延長された。このことでリアのトラクションをさらに得られるようになっているほか、テールリフトもより軽減されている。

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サイレンサーはかなりコンパクトなサイズとなっている。キャタライザーは車体下方に備わっており、結果としてマスの集中化を実現している。アイドリング時は静かで、加速時には心地よいボクサーサウンドを奏でる。タイヤサイズは前120/70R19、後ろ170/60R17。試乗車にはメッツラーとミシュランがあった。

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90%以上の構成パーツが一新された中で、従来モデルから踏襲されたリアウインカー。ターンインジケーター、ブレーキランプを内蔵している。その中央部分には、後方からの接近などを察知するセンサーが備わっている。

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パニアケースステーには電極コネクターも備わっている。集中ロック機構の作動に寄与するだけでなく、ケース内のUSB電源ポートにも精通している。通常はキャップでカバーされている。

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ハンドルに備わるハンドガードにフロントウインカーが内蔵された。よりオフロード志向の強いGSトロフィーグレードは通常のウインカーが採用される。ハンドガード内蔵ウインカーや死角接近インフォメーションミラーなどは、転倒時の破損を考えると注意が必要。

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R-GSシリーズのデザインアイデンティティを上手く受け継ぎながらも、まったく新しいデザインとなったスタイリング。視覚的にコンパクトになった燃料タンクも大きなポイントとなっている。タンク容量は約19Lとされており、従来モデルと比べて1L減っている。

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