VIRGIN BMW | BMW Motorrad R nineT (2021) 試乗インプレ/ 乗ればわかる大きな進化 試乗インプレ

BMW Motorrad R nineT (2021) 試乗インプレ/ 乗ればわかる大きな進化

  • 掲載日/2021年06月01日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad 取材・写真・文/小松 男

BMW Motorrad R nineT (2021) 試乗インプレ/ 乗ればわかる大きな進化 メイン画像

BMW Motorrad R nineT(2021)
ユーロ5レギュレーションに対応しつつ、2021年モデルでブラッシュアップが施されたヘリテイジシリーズ。今回はその中でも看板モデルにあたるRナインティに照準を当て、詳細を探ってゆく。

すでに熟成の域に入っていたRナインティを
さらなる極みへと引き上げる電子制御システム

アメリカの著名カスタムビルダーであるローランドサンズが生み出したコンセプトナインティにはじまり、世界中のビルダーが手掛けた車両で競い合うカスタムコンテストの開催など、鳴り物入りで登場してから早7年の年月が経ったRナインティ。その後続々と派生モデルが投入されていき、ニューモデルでありながらも、ビンテージ色の強いスタイリングを持つヘリテイジシリーズを新たに確立した。

BMW

環境基準適応問題や、すでに新たなる水冷ボクサーツインエンジンの完成が決まっていたこともあり、そろそろ役目は終えるかと思っていたところでの空冷ボクサーツインの起用だったことや、足まわりなどにはS1000RR系のタイプが流用されていたことなどから、一部からは既存パーツを寄せ集めて造り上げられたとも話はあったが、Rナインティは時代に受け入れられ大ヒットとなった。Rナインティをはじめとしたヘリテイジシリーズは2021年モデルでついにモデルチェンジが施された。登場したばかりの新型Rナインティに実際に乗り、テストを行ってゆく。

Rナインティ(2021) 特徴

好みの仕様に仕立てることができる
カスタムを楽しむためのベースなのか

BMW

スタンダードモデルにあたるRナインティの登場を皮切りに、アップマフラーや正立フォークが用いられたRナインティ・スクランブラー、外装パネルをはじめ装備を簡素化させたRナインティ・ピュア、ビキニカウルやクリップオンハンドルでまとめカフェレーサースタイルとしたRナインティ・レーサー、さらに現在のGSシリーズに続く始祖モデル、R80G/SをオマージュしたRナインティ・アーバンG/Sなど、幅広くモデル展開を行ってきたヘリテイジシリーズ。そもそもBMWはこの手法をもちいて、すでに4輪のミニブランドで成功を収めており、そのままRナインティに落とし込んだと私は考えているのだが、実際に世界中のライダーに受け入れられ、ここまで上手くいくものだとは正直なところ思ってもいなかった。もちろん”見た目”だけのものではなく、走らせることがとても楽しい車両に仕上がっていることが大きなポイントとなっているには違いない。

BMW

様々な派生モデルを輩出してきたRナインティだが、登場から7年間、大きなモデルチェンジが行われることが無かった。そもそも頻繁に手が加えられながら成長させることで、買い替え需要を生み出すようなものではなく、じっくりと一台と付き合ってもらうことを想定したモデルなのかもしれない。今年度、ユーロ5基準に合わせ新型となったが、スタイリング的には大きな変更がなされていないことに、既存ユーザーも潜在的購買層も、従来のRナインティには普遍的魅力が持たされているのだと納得させられたことだろう。

BMW

ユーロ5についても簡単に説明をしておこう。COやNOx排出量などをはじめとした環境適正を定めた欧州規制である。はじめのユーロ1が実施されたのは1998年のこと。その後ユーロ2(05年)、3(07年)、4(16年)と徐々に規定値が引き上げられ2020年からユーロ5がスタートした。BMWだけでなく、多くのバイクメーカーから2021年モデルが矢継ぎ早に発表されたのは、この基準に対応させるためであったということも挙げられる。現在では国内マーケットもユーロ基準に沿っていることもあり、最高出力に規制などが掛けられた”国内仕様”というものは皆無に等しい。 ユーロ規制を詳しく説明するとスペース的にいくらあっても足りなくなってしまうが、これまでの経験から考えると排出ガス規制値の強化が施行されると、おおよそエンジン特性などにネガティブな面が現れることが多い。果たして新型Rナインティはどうなのだろうか。

BMW

Rナインティ(2021) 試乗インプレッション

ライディングモード機能によって
解放された潜在的パフォーマンス

BMW

つい数か月前に従来モデルのRナインティを同サイトにて試乗テストを行っていることもあり、感触的にはまだ体に残っている状況で、今回新型Rナインティのテストを行う機会に恵まれた。

目の前に置かれた新型Rナインティのスタイリングは、変更箇所を指摘されないと分からないほど、従来モデルから手が加えられていない。一番わかりやすいのは、シリンダーヘッド及びそのカバー部の形状変更だろう。インジェクターの設置場所も変更されているので、従来モデルにヘッド周りを移植というのも難しそうだ。ヘッドライトはケース形状こそ同じだが、従来モデルではハロゲンバルブを採用していたのに対しLEDライトに変更されている。CANバスシステムのエラー対策は必要となるかもしれないが、もしかするとヘッドライトは換装することが可能かもしれない。

BMW

車両に跨り空冷ボクサーツインエンジンに火を入れる。排気音は変化なく、これまで通り心地よいサウンドを奏でる。メーターパネルで使用されているフォントが変更されているが、オーナーでも気づかないようなもの。それよりも、液晶パネル部分にライディングモードが表示されるようになった。これが新型の大きなポイントだ。右側のスイッチボックスに備わるモード切替スイッチを押すことで、ダイナミック、ロード、レインの3種からセレクトすることができる。まずはベーシックモードにあたるロードにセットして走り出した。

BMW

スペックシート的には最高出力が1馬力引き下げられているが、体感的にはわからないもの、いやむしろパワーアップしているかのようにすら思えるほどパワフル。高速道路に入り、ホットなダイナミックモードへと切り替えると、狂ったかのように元気な一面を現した。各モードを切り替えると4000~6000回転の常用域でのキャラクターが明確にされているので、ステージに合わせて選びやすい。

BMW

そして最も印象に残ったのが足まわりの動きが格段に良くなっていることだ。特にリアサスペンションのセッティングが改善されており、従来モデルではコーナー脱出時のスロットル開けはじめで、初期の沈み込みがもう少し欲しかったところが、新型ではスッとサスペンションが動き、トラクションを得られやすいので、安心してスロットルを開けられる。従来モデルでも十分だったスポーツライディング時のスタビリティが、輪をかけて向上しているのだ。

BMW

スロットルがケーブルを使わずに操作を電気信号を用いてコンピュータで読み取るバイワイヤ方式に変わったこともあり、多岐にわたる電子制御システムを使用することができるようになった新型Rナインティ。クルーズコントロールさえも標準で装備されており、高速移動時など便利に活用させてもらった。テスト期間中は雨の日も多く、パワフルな走りが楽しめる一方で、レインモードの恩恵も十分に感じることができた。見た目以上に内容には大きく手が加えられている。これが新型Rナインティに乗って分かったことである。

BMW

ただ、その程度のことであれば、どのメディアを見ても同じようなことが書いてあるだろう。そのような中、気になった点があったので、追記させていただく。それはスロットルを全閉に戻した際、一瞬回転の落ち込みにタイムラグがあるように感じることがあることだ。もしかすると、イグニッションをオンにした際のキャリブレーションがちゃんと行われていなかったのかもしれないと思い、エンジンを再始動してみるが感触は変わらない。スポーツライディング時だけでなく通常走行時でも感じるもので、たまにリニアな回転の落ち方をしてくれる時もあるのだが、一度気になってしまってからはどうにも違和感があった。推測するならば急な回転の落ち方をすることをいなすために、あえてこのようなセッティングが施されているのかもしれないのだが、私がアナログ体質なのか、どうにも心に引っかかる点が残ってしまった。これもデジタルテクノロジーが根深くマシンコントロールをするようになったことの副産物なのだろうか。また少し時間をおいてから改めてRナインティに触れてみたいと思うテストとなった。

Rナインティ(2021) 詳細写真

BMW

シリンダーヘッド周りに手が加えられ、形状も変更された1169ccDOHC空冷ボクサーツインエンジン。2017年モデルでユーロ4に、今回ユーロ5への基準クリアが施されている。パワフルでありながらも扱いやすいキャラクターだ。

BMW

クラシカルな様相のワイヤースポークホイールはRナイティのデザインポイント。ブレンボ製4ピストンモノブロックキャリパーはタッチ、制動力ともに高水準。倒立フォークは、フルアジャスタブルタイプとされている。

BMW

テールリフトを防ぐパラレバー機構を備えたシャフトドライブ。自然な動きで、チェーンドライブモデルからの乗り換えでも、違和感は少ないだろう。メンテナンスフリーというのは大きなメリットだ。

BMW

アクラポビッチ製の左二本出しマフラーは、ユーロ4に対応させていた従来モデルと同様。ヘアライン仕上げとされた見た目だけでなく、音質もこだわって作り上げられており、心地よいエキゾーストノートがライダーを包み込む。

BMW

新型Rナイティのテストで舌を巻いたことは、リアサスペンションの動きが格段に良くなっているところだ。従来モデルオーナーに是非とも体感してもらいたい。なおリアサスペンションの前方にはエアクリーナーの化粧カバーが新たに採用された。

BMW

クルージングではリラックスでき、スポーツライディングではしっかりと加重をかけられる絶妙な位置にセットされたステップ。ただ電子制御を多く用いた今回のモデルチェンジで、シフトアシストシステムを標準装備しても良かったのではないかと思う。

BMW

目盛のレイアウトやフォントなどが変更されているが、従来モデルと見比べてみなければ気づかないかもしれない。液晶パネル内にライディングモードが表示されるようになった。

BMW

ヘッドライトはケースごと新しいものに変更されている。従来モデルではH4バルブが使われていたのに対し、新型ではLEDライトとなった。新型Rナイティだと見極めるポイントの一つとなっている。

BMW

ハンドルバーやグリップ、レバーなど、基本的な構成に変更はないが、スイッチボックスは左にクルーズコントロールスイッチ、右側にはモード切替スイッチが追加されている。

BMW

アルミパネルを用いたコンビデザインの燃料タンクも従来モデルから踏襲。他のヘリテイジシリーズに使われるプレス成型のワンピースタンクよりも高級感がある。ドレスアップを楽しむカスタムパーツも多数用意されている。

BMW

テールセクションも基本的には変更なしではあるが、フロント、リア共に新形状のLEDウインカーが採用された。これにより、全体的によりシャープな印象を受けるようになった。

BMW

ライダー側とパッセンジャーがセパレートされた2ピースシート。パッセンジャーシートはシングルシートカウルなどにも変更することができる。薄手だがクッション性は高く、長時間乗車でも疲れにくい。

BMW

シートを外すと、若干のユーティリティスペースが用意されている。ETC2.0は標準装備とされ、車載器はシート下に収められている。

ピックアップ情報