世界各国から集まった31名、 GSトロフィー2020出場をかけた女性による熱き戦い
- 掲載日/2019年12月10日【トピックス】
- 取材協力・写真/BMW Motorrad Japan 取材・写真・文/鈴木 大五郎
最強のGS乗り決定戦の女性版
それはとても逞しくも華やかな戦いであった
GSトロフィーは2年に1度開催されるGS乗りの頂上決定戦である。オフロードを中心としたライディングスキルとともに、メカニカル的スキル、フィジカル面を競い、タフなマシンに相応しいライダー(チーム)を選出する。
世界各国の予選会を勝ち抜いたライダーが一同に集結する世界大会は年々規模を増してきており、2020年にはニュージーランドにて本戦を行なうことが決まっている。基本的にタフな男共に向けたイベントだったものが、2016年より女性チームを1チーム混合。2018年にはそれが2チームとなり、これまた成功をおさめてきた。
そして来年の本戦に向けた選考会が去る10月、スペイン・マラガにて開催された。世界各国から選考会を突破した、24歳から62歳の31名のファイナリストが集結。2チーム、6名の座を争う熱い戦いが繰り広げられた。日本からは国内の予選会を突破した水谷あいさんと吉田美恵子さんが参戦。じつは2人は2018年大会でも日本代表として参加しており、ここでリベンジがかかる。
会場はBMW専用のオフロードトレーニング施設。エンデューロパーク・アンダルシアを中心に、周辺のオフロードが舞台となった。3日間に渡る戦いはキャンプ生活によるタフなもので、毎日行なわれるスペシャルステージも女性に向けた生易しいものとはなっていない。しかし、それはしっかりと本戦を見据えたものであるから。ここで女性向けにアレンジした競技を行なったとしても、本戦で苦労するはずという主催者の優しさ(?)である。
厳しいシチュエーションが多いことに対し、そこにギスギスとした選手間の争いや心理戦がまったく感じられないのが面白い。それは競技が単純にライディングスキルが高いものが勝ち残るものではないというGSトロフィーの流儀にあることが大きな要素としてある。しかしそれ以上に、参加する女性の明るさとパワフルさがイベントをより華やかで素晴しいものにしていた。
日本代表の2選手は惜しくも決勝進出を逃したが、スペインの青空の下、大いにイベントを満喫したようで、それは全参加者が感じたものでもあったようだ。昨今の女性の活躍を象徴するかのような、エネルギーに満ちたイベントとなっていた。
マシンは本戦と同様、F850GSを使用。イコールコンディションとするため、くじ引きにて使用するマシンが割り与えられた。
エンデューロパーク・ジャパンにて行なわれた選考会にてトップ通過を果たした水谷あいさん(左)と吉田美恵子さんが日本代表として参加。じつは2人とも2年前にも南アフリカで行なわれた同選考会に参加している。
前列5人はリベンジ組。今回、オーストラリア代表のアンドレア選手(左から2人目)が本戦行きを果たした。水谷選手の隣はBMWモトラッドのオフィシャルインストラクターで今回はマーシャルライダーを担当。
大会を通して転倒シーンも少なくなかったが、ライダーもバイクもタフであった。再スタートして競技を続行することも可能であるが、一人で起こすのと手伝ってもらうのではポイントが異なるので、ギリギリまで一人で頑張る姿が多く見られた。
5ℓの水を背負って急坂を駆け上がり、そして降りるという競技にはフィジカルの強さも必要。冷めた気持ちでは「なんだそれ?」であるが、そんな状況も楽しめるライダーじゃないとやっていけない。もちろん参加者はそんなこと承知でメチャクチャ楽しんでいましたよ。
特設コースは地形を生かしてのレイアウト。難しいセクションばかりではないものの、プレッシャーもあって普段の力を出し切ることが出来ず苦労したと多くの選手が語っていた。
タイムだけでなく、足を付いたかどうか?など、トライアル的要素もあるのがGSトロフィー。
2人一組でフロントホイールを外して組み直すというスキルチャレンジ。メカニカル的要素だけでなく、腕力等も必要なため、女性にはよりハードな競技となった。
単純なる一本橋ではない。微妙に曲がっているうえに傾斜もあってしかもやけに長い。それをクリアするなんて……。当然ではあるがしっかりトレーニングしてきた上でこの大会に臨んでいると感じさせるライダーが多かった。
この競技は数百メートル走って自分のバイクの下に駆け寄り、ヘルメットを被って来た道をバイクで戻るというもの。GSにとってはさほどハードな道ではないものの、体力を消耗した後ではふらついて転倒するライダーも少なくなかった。
水谷選手のライディング。とくにマシンコントロールにおいては全参加者中、ただ一人オールクリアのセクションもあっただけに、本戦に進むことが出来なかったのは残念だったろう。
到着日と帰国日以外、参加者は全員テントでのキャンプ生活。ヘロヘロに疲れ切った後にテントを組み立てるのは本戦同様。大変ではあるが、貴重な体験でもある。今回は3日間同じ場所だったのが救いだった。
スペイン名物ロデオマシーン。ただの遊びではなく、これも競技というのがGSトロフィーらしくて面白い。コントローラーのおじさんのさじ加減によるところがじつは大きい。
朝食と夕食はキャンプ地の特設食堂にて。とにかく朝も夜もにぎやかなのが特徴で、これは男性チームにはなかった雰囲気である。
最終日の夜はアンダルシア地方が発祥の地でもあるフラメンコを鑑賞。2014年にメディアとして参加したカナダでも、その土地の文化に触れたり地元との交流があったりしたが、それもGSトロフィーらしさである。
そしてその後は生バンドの演奏をバックにダンス・ダンス・ダンス!まさにダンシングオールナイトの勢いだった。
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