渡辺 達比古(モトラッド 代表取締役)
- 掲載日/2006年03月10日【インタビュー】
BMWで味わった感動と衝撃
すべてはそこから始まりました
今回、インタビューでお伺いしたのはBMW正規ディーラー「モトラッド」オーナー 渡辺達比古さんだ。箱根や三浦半島といったバイク乗りに人気の“走りのスポット”に周囲を囲まれる「モトラッド」。もちろん、渡辺さんもそんな地元を中心にツーリングを楽しむ根っからのバイク好きだ。ディーラーを起こしたのも好きが高じて…と言えば簡単だが、自分の好きなことをとことん追求したい、という人一倍強い情熱がそれを可能にしたのだろう。そのバイタリティーと楽しむことへの「熱さ」を今回はお聞きしてみよう。
暑い夏の日の思い出
白いマフラーがまぶしかった
渡辺●そうですね。子供の頃から色々な場所へ走りに行きましたよ。もっともバイクに乗る前から二輪は大好きで、よく友達と自転車で遠乗りしていました。家の近所でも自転車版のゼロヨンで競ったり、日帰りなのに信じられないくらい遠くへ出かけたりしたのを覚えています。自宅のある平塚から小田原や真鶴なんて20kmくらいあるんですが、軽く走っていましたね。町内でもよく友達と競争していて、自転車競争の大会にも出るくらい走ることが好きでした。でも、自転車は当時のものだからスポーツ車ではなくて、ソバ屋の出前に使うような重いヤツ。それでツーリングから競争までやっていましたよ。
渡辺●「バイクって凄いな」と鮮烈に感じたの中学1、2年の夏頃でしたね。その日は平塚から相模湖へ自転車で向かっていて。その“ツーリング”中に出会いがあったんです。自転車を必死で漕いでいる私の横を、白いマフラーをつけたバイクの一団が颯爽と通り過ぎていったんですよ。その姿を見て心を奪われてしまってね。「今度はアレに乗って来るぞ」と思ったんです。バイクに乗ろうと思ったきっかけは、こんな些細な出来事だったのですが…今でも忘れられない記憶ですね。
渡辺●免許を取るまでの間も、実は河原でMXをやっている仲間に混ざって走るようになっていました。『トーハツ』や『ヤマハ』のオフロード車っぽいのに乗って、泥だらけになって遊ぶのが大好きでしたね。その後、免許が取れて公道を走れるようになると、ツーリングに目覚めてしまいましてね。遠くても近くても、まだ行ったことの無い場所へ行くときのワクワクする感じってありますよね? そこが(ツーリングの)醍醐味でしょう。発見する楽しさっというか…べつに世界で最初に見つけるわけじゃないけど、自分的には発見なわけですよ。それがすごく楽しい。
渡辺●ワインディングを走るのも楽しかったのですけれど、すぐにツーリングの魅力の方が大きくなってしまったんですよ。近所に走る場所はたくさんあったので目的地には困りませんでしたしね。当時は『西湘バイパス』がまだ無くて、国道1号線をしょっちゅう往復していました。それだけのことでも楽しかったですねぇ。その頃は発売したばかりの『ホンダCB450』に乗っていて。2気筒のヤツ。当時、映画館にフィルムを運ぶアルバイトをやっていて、CB450で映画館までを走り回りましたよ。それだけでは走り足らず、休みの日には三浦半島や伊豆半島まで足を伸ばしていましたね。周りに見飽きない、景色が素晴らしいところがたくさんありすぎて。今思うと慌しく走っていたんですね。若さってやつですか(笑)。
1日で1000km走ってきた親友
彼がいなければBMWに乗っていません
渡辺●そうなんです。でもね、1980年にヤマハから『RZ250』がデビューして、しばらくおとなしくしていた血が騒いでしまって(笑)。打刻番号1号車を予約して買いました。乗ってみると、やっぱり面白くて楽しくて…完全にバイク熱が再燃しました。その流れと仲間のサポートもあって子供の頃から夢だったバイクショップをスタートしたんです。
渡辺●いえ、最初は国産4メーカーを扱う店だったんです。でもある日、私の個人的な親友の高橋という方が『BMW R100RS』を買いたいと言いましてね。車両を引っ張ってきたことがあったんですよ。BMWを納車すると、すぐに日帰りで小牧や浜名湖周辺を回って1000kmも走ってきちゃったんです。1日で1000kmですよ。真っ黒な顔をして夜に帰ってきた彼が「コレはロングツーリングできるバイクだよ」って興奮して言うんです。このときの彼の口調から、彼を1000kmも走らせたBMWに興味を持ちまして。その後、その点検整備はウチに任せてくれましたから、自分でも仕上がりの確認で試乗をする機会がありました。
短い時間乗っただけで「これは凄ぇバイクだな」と感動しましたよ。それまでいろいろなバイクに乗ってきたけど、そのどれとも似ていない独特の魅力をもった乗り物と感じたんです。簡単に言えば「どこまでも走っていけそうな安定感」とか「コントロールしやすいエンジン特性や足まわり」のようなことなのですが、もっと感覚にうったえてくる“深さ”を感じたんです。若いときツーリングの喜びは、距離の長さだとかスピードといった単純な尺度で計れるものでした。でも、BMWは、左右の“釜”で爆発した力が乗り手の意志に忠実に後輪へ伝わってくれる。そんな情景をうかべてしまうほど“質”の伴った乗り味と楽しさなんです。バイクの楽しさっていろいろあると思いますが、このバイクに乗れば新しいステージへ行ける…そんな風にさえ思えました。
渡辺●富士スピードウエイでKシリーズの発表会が開催された頃、BMWは日本で販売とサービスを展開しようと計画していました。そこでBMWにアプローチしたんですよ。無事に審査(それまでのショップでの販売やサービスの実績)に通って、国内では初期の段階から正規ディーラーとして開店することができました。でもね、BMWディーラーっていうブランドが欲しかったわけではなくてR100RSの持つ“深み”にやられたっていうのが正直なところ。だから親友の高橋君がBMWを買ってなかったら、「モトラッド」も無かったかもしれない。だから、ウチの店は私が感じたような全く新しい体験、感動をお伝えしたい…そう思っています。少しでも興味のある方には、とにかく体感してほしいですね。
渡辺●乗れば乗るほど味が出てくる乗り物だから、まずは体感してもらえるようにいろいろと考えています。4月~10月までは毎月第2日曜日に箱根ターンパイクで試乗会をやるし、お客さんといろいろなところへツーリングにも行く予定です。でも、ソロでもよく走りに行くんですよ。昨日も北茨城へアンコウ鍋を食べに行ってきたところです。
渡辺●自分の身体にフィットする感覚、心揺さぶるエンジンのバイブレーション。BMWモーターサイクルにはこれがあるから、乗っていて楽しいんだと思いますよ。ヨーロッパ車独特のデザインも魅力だしね。なんかホラ、独特な顔してるでしょ。
渡辺●ええ、じきに完成です。BMWユーザーって平均年齢40歳と言われているけれど、これからの時代を考えて若いユーザーにもこの素晴らしさを知ってもらいたいですね。それには若い人たちが気軽に寄れて、頼ることのできるサロン的な空間を作ることが必要だと考えています。それを実現するための新社屋でもあるわけですよ。サロンと言っても内装がきれいなだけとか、変わったお茶が出る…みたいな“絵に描いた餅”ではなくて、バイクショップに求められていることをキチンとやる、そういう場所にすることが大切だと思います。そのためにメンテナンス環境を強化しました。新しい工場は整備リフトが6台あり、それを使いこなすマイスターも2名います。ツーリング直前の整備などを素早く手がけられ、多くの要望に応えたりするには必要だな、と思って導入しました。
渡辺●人生を楽しくするもの。バイクってどうしてもスピードや距離のような“物差し”で価値を決める場面が多いと思うんです。でも数字で計れない価値と喜びをBMWは気付かせてくれる。どなたでも一度BMWに乗ってもらえれば、きっとわかってもらえるでしょう。
株式会社福田モーターサイクル商会 渋谷ショールーム
Interviewer Column
3つのディーラー経営で多忙なはずなのに愛車で走ることにも精力的な渡辺さん。ショップ主催のツーリングにも積極的に参加して自らバイクライフを堪能している。インタビュー中も「ツーリングの魅力は“発見”」と言っているが、新しい(自分の知らない)ものや場所を見てみたいという意欲が人一倍旺盛なのだろう。そんなスタイルで楽しんでいる渡辺さんが、外出先で見る携帯電話のカメラ(を使う人々)に関して言っていた言葉が印象的だった。「景色や情景は手軽なカメラに残すんじゃなくて、自分の目や心に残せばいいのに」本当にそうだと思う(山田)。
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